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2006年11月号 ストック・オプションを付与した場合の会計処理及び税務上の取扱い
1.概要
平成17年12月、企業会計基準委員会より「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「基準」という)が公表されました。
ストック・オプションの制度自体は平成9年の商法改正により一般的に導入され、平成13年の商法改正による新株予約権制度の導入により付与株式数の制限の撤廃、株主総会における付与対象者の確定が不要となるなどの規制緩和により利用が活発化してきています。
しかし、これまでストック・オプションの会計処理についての基準は存在していませんでしたが、「基準」が公表されたことにより原則として会社法施行日(平成18年5月1日)以後に付与されるストック・オプションについて適用されることになりました。
2.会計処理の方法
ストック・オプション取引の通常の流れは図表のとおりです。設例を掲げ権利確定前後の時点別会計処理を説明します。
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設例
- 従業員1名当たり100個、50名に付与(合計5,000個)
- 付与日における公正な評価単価は1個当たり200円
- 対象勤務期間(労働サービスの提供期間)は付与日から2年間
- 権利確定日は付与日から2年後
- 権利行使期間は権利確定日の翌日から2年間
- 権利行使により取得できる株式数は1個当たり1株、権利行使に伴う払込金額は1株当たり500円
1.権利確定前
ストック・オプションの付与は、従業員等に対する労働サービスの対価と考えられます。
従って、企業が従業員等から取得する労働サービスの対価を一定の期間(設例の場合対象勤務期間)にわたり費用として計上し、対応する金額をストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上します。
各会計期間における費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額です。
設例により費用及び新株予約権として計上する金額は、ストック・オプションの公正な評価単価(200円)に付与数(5000個)を乗じた100万円を、対象勤務期間を基礎とする方法で各会計期間に配分します。
ストック・オプションの公正な評価単価については原則として付与日現在で算定し、その後は条件変更があった場合を除き見直さないこととされています。
公正な評価単価の算定について「基準」では、特定の算定方法を指定していませんが、代表的なものとしてブラック・ショールズ式(注1)や二項モデル等(注2)があります。
2.権利確定後
ストック・オプションの権利が確定した後は権利が行使されるか、行使されないまま権利が消滅することになります。
権利が行使され、これに対して新株を発行した場合には新株予約権として計上した額のうち当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えます。
設例による払込資本への振り替え額は、新株予約権(200円×5,000個)の100万円と、払込金額(500円×5,000個)の250万円との合計350万円となります。
なお、新株の発行に代えて自己株式の処分により対応した場合には自己株式の取得原価と、新株予約権の帳簿価額及び権利行使に伴う払込金額の合計額との差額が自己株式処分差額であり、その他資本剰余金等として計上します。
また、設例では示していませんが権利行使期間中に権利行使をせず失効が生じた場合には、純資産の部に新株予約権として計上した額のうち、その失効に対応する部分を利益として計上します。
この会計処理は失効が確定した期に行います。
3.未公開企業の取扱い
未公開企業においては株式に市場価格がないため公正な評価額の算定には困難を伴う場合があるため、ストック・オプションの公正な評価単価に代え「単位当たりの本源的価値」の見積もりに基づいて会計処理を行うことができます。
「単位当たりの本源的価値」とは、算定時点においてストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値であり、当該時点におけるストック・オプションの原資産である自社の株式の評価額と行使価格との差額をいいます。
4.税務上の取扱い
1.所得税法上の取扱い(付与対象者側)
一定の要件を満たす税制適格ストック・オプション(注3)の場合には、権利行使時に生じる経済的利益(権利行使に伴う払込金額と権利行使日における株式の時価との差額) については給与等としては課税されず、株式売却時に譲渡所得として課税されるまで繰り延べられます。
一方、税制非適格ストック・オプション(注4)については権利行使時に生じる経済的利益に対して給与等として課税されます。
2.法人税法上の取扱い(発行者側)
税制非適格ストック・オプションの場合には、法人が従業員等から受ける労働サービスの対価として新株予約権を発行したときは、 その従業員等において労働サービスの提供としての給与等の課税事由が生じた日、つまり権利行使日において労働サービスの提供を受けたものとして それに係る費用を損金の額に算入できることとなりました。
5.最後に
ストック・オプションの付与は従業員にインセンティブを与えるなどのメリットがありますが、 「基準」に基づく会計処理は以前の会計処理と大きく異なることとなり財務諸表に多大な影響を及ぼす可能性があります。
ストック・オプションの導入を検討中の企業においては、事前に専門家へ相談し導入した場合の影響を十分に把握しておくべきでしょう。
| (注1) | : | 算式に数値を代入して算出する比較的簡便な方法。 |
|---|---|---|
| (注2) | : | 一定期間の株価変動の仮定を設け算出する方法。 |
| (注3) | : | 付与の対象者が自社の取締役・従業員等,権利行使価額の年間総額が1,200万円以下等の適格要件を満たすもの。 |
| (注4) | : | 適格要件を満たさないもの。 |
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