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2007年5月号 管理会計の落し穴
会社が、成長に合わせて「経営管理」をする必要がある、というのは当然のことです。建設業界においても、事業別や支店別、顧客別、セグメント別等、いわゆる「管理会計」を実施されていることと思います。
1.中小企業の資金調達環境
例えば、A~Cの各事業を持つ会社があったとしましょう。それぞれの事業別損益は【表1】のとおりとします。それによるとC事業は赤字ですから、教科書どおり事業から撤退しました。すると、C事業から撤退した後の事業別損益は【表2】のとおりとなりました。
赤字事業から撤退したら、黒字だと思っていたAとBの各事業も揃って赤字になってしまったのです。
【表1】と【表2】を見比べていただくと、その原因が間接費の違いであることがわかります。すなわち、C事業に計上されていた間接費は、事業をやめても消えてなくなることはなかった、ということです。
この事例では3事業という設定でしたので、そんな間違いをするはずがない、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの事業や部門、支店などを持つ会社では、意外と盲点になっていて結果的に間違った経営判断をしてしまったことが実際に発生しています。
表1
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表2
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2.直接費と間接費
少し経営管理をされていれば、呼称はどうであれ、「直接費」と「間接費」という概念はご理解いただけるかと思います。
それぞれの部門や支店で直接発生した経費を直接費、それ以外はすべて間接費とするなど、一般的には、どの部門にも直接計上しにくい経費、例えば、総務や経理などにかかる経費を間接費として定義しているはずです。そして、事業別や支店別などで収益性を検証するために、共通経費である間接費を「ある一定の考え方や基準」で部門や支店に配分(“配賦”という)する、という処理をされているのが一般的だと思います。現在の会計システムの中には、配賦が自動的に処理されるものもあるようですから、「見たことがなくてもそうなっている」、という場合もあるかもしれません。
3.これからの建設業
管理会計においては欠かせないこの「間接費の配賦」という考え方ですが、実はここに大きな落し穴が隠されているのです。
先ほどの事例で見てみましょう。実は、【表1】では間接費を「事業ごとの粗利益構成比率」で配賦しています。しかしながら、もし「事業ごとの売上構成比率」を基準として配賦をすると、【表3】のとおりとなります。【表1】の事業別損益と比べてみて、全く景色が変わってしまうことがおわかりいただけるかと思います。
表3
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4.間接費の配賦方法
売上高や粗利益の額、従業員数、作業工程数等、定量的に測定可能なデータを基準に間接費は配賦されることが一般的です。また、間接費の種類によって複数の配賦基準や複数の配賦工程が必要なこともあるかと思います。
しかしながら、間接費の配賦方法に絶対的な正解はありません。業種や経理処理の方法によってそれぞれの会社に適切な配賦方法を考えるべきものなのです。
ただ、誤解していただきたくないのは、間接費の配賦を間違いなく正確におこなうことが管理会計の真の目的ではありません。数値化が困難な定性的な要因も加味しながら現実的に許容可能な程度に配賦をおこない、それを経営判断に活用することが管理会計の本質的な目的ですので、複雑な配賦方法を取り入れて結果が出てくるのが1ヶ月後、というようなことでは本末転倒といっても過言ではありません。
5.管理会計の上手な活用
では、管理会計を上手に活用するためには、どうすればよいのでしょうか。
結論から申し上げると、「ある程度」適正と思われる範囲で間接費の配賦をおこない、それを常に意識しながら経営判断をおこなうことです。そして、そのためには、常に間接費を「見える化」しておくことが重要なポイントです。
再度事例を見てみましょう。【表4】は間接費が全く見えない表、【表5】は間接費を「見える化」した表です。同じ事業別損益でも印象が異なるのではないでしょうか。少なくとも【表5】で見る限り、間接費を意識せざるを得ないと思います。
このように、表記方法を少し工夫するだけでも認識は大きく異なり、適切な経営判断が可能になるものなのです。管理会計をされている会社の方は、是非一度普段使っている「表」を見つめなおしてください。きちんと「見える化」できていますでしょうか。
表4
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表5
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