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2007年8月号 『キャッシュ・フロー経営について』
1.中小企業の資金調達環境
キャッシュ・フローとは「資金の流れ」のことです。そして、キャッシュ・フロー経営とは、資金の流入や流出を重視した経営手法であり、企業の営業活動によって生み出された資金から投資活動の資金を差し引いた資金、すなわちフリーキャッシュ・フローを重視する経営のことをいいます。
企業は、“フリーキャッシュ・フローを高める”ことにより、株主に配当をおこなったり、また借入金の圧縮を図ることで財務体質を強化していくことが可能となります。
2.融資判断
これまでの売上重視の経営姿勢から、適正利益を確保し、それを“資金として残す経営”の重要性が高まってきています。
「黒字倒産」といわれるように、損益計算書では利益が出ており黒字であるのに、資金不足が原因で倒産に追い込まれることがあります。
利益とは、あくまでも期間損益における成果であり、キャッシュ・フロー経営の成果は資金が極大化されたかどうかで評価されます。
このキャッシュ・フロー経営を実践することにより、資金繰りの改善が可能となります。これまでのように、資金不足を銀行借入に頼ることが難しくなった現在、十分な利益を上げ、これを資金として残すことが重要なのです。
3.キャッシュ・フロー計算書の重要性
自社の経営実績は、損益計算書からわかりますが、損益計算書の数字は、経営者の考え方や採用した会計処理方法によって変わってきます。
これに対して、キャッシュ・フロー計算書は、実際の資金の動きを把握するものであり、経営の現状や課題を正確に分析するには、キャッシュ・フロー計算書の方が適している場合があります。
また、キャッシュ・フロー計算書により、金融機関や取引先からの信頼を得ることが可能となります。上場企業以外の企業では、キャッシュ・フロー計算書を作成する必要はありません。ただし、金融機関が与信先の信用格付けをする際には、キャッシュ・フローは重要な検討項目の1つになっています。キャッシュ・フロー計算書を積極的に開示することは、金融機関から好印象を得ることにつながるでしょう。
キャッシュ・フロー計算書は、上場企業等の大企業だけのものではありません。「中小企業の会計に関する指針」(平成17年8月公表)においても、中小企業に対しキャッシュ・フロー計算書を作成することが要請されています。
4.キャッシュ・フロー経営の考え方
これまで、「キャッシュ・フロー経営が重視される理由」と「キャッシュ・フロー計算書の重要性」について述べてきましたが、キャッシュ・フロー経営とはどのような考え方にもとづくものなのでしょうか。
(1)適正な利益の確保
資金の源泉は利益であるため、適正な利益を確保することが大前提となります。適正利益とは、自社が調達している資本のコストに見合う利益です。
この適正利益を確保するためには、まずは限界利益(売上高―変動費)の改善が必要となります。限界利益の改善のためには、変動費である製造コストの削減はもとより、付加価値を高めることにより売上を上げる工夫が必要になります。次に、固定費については費用対効果という視点(限界利益を確保するために必要な経費であるかどうか)から削減の可能性を見直すことが重要になります。
(2)利益を資金として残す
利益を資金として残すためには、運転資金を増加させない経営が必要となります。運転資金とは、営業するに当たって必要となる商品等の仕入資金や手形決済資金等のことをいいます。この運転資金は取引条件が変わらなければ売上の上昇に伴い、増加することになります。
しかしながら、「売上高の増加」=「借入金(運転資金)の増加」という経営体質は、キャッシュ・フロー経営にはふさわしくありません。運転資金を増やさないためには、売上債権を早期に回収すること、在庫を出来る限り減少させること、支払債務を長期化させることが必要です。言い換えれば、契約条件の再確認を行ない、回収条件のよい取引先の売上構成を高めること、在庫管理を徹底させることにより、毎月の仕入を減らし少ない在庫で効率的な運営を行うこと、仕入先には支払条件の改善交渉を行うことが重要です。
(3)営業キャッシュ・フローの範囲内で投資活動を行う
設備投資や有価証券への投資は、企業が現状を維持するため、また将来の成長のために必要不可欠なものです。ただし、新たな設備投資をするには新たな資金が必要となります。適正な利益が確保され、その利益が資金として残れば、経常的な設備投資の財源は営業活動で得られる資金の範囲内で賄えることができます。また、設備投資の需要が少なければ、余った資金は配当金の財源や借入金の返済に充当することができます。
5.おわりに
バブル崩壊後、借入による拡大志向は終わりを告げ、金融機関も借入金に依存した不安定な会社に資金を貸さなくなりました。このことは、キャッシュ・フローを重視し、借入金に依存せず、経営の質を高めながら着実に売上や利益の増加をはかる経営が強く求められていることを意味しています。キャッシュ・フロー経営は、企業規模を問わず、むしろ、経営基盤の脆弱な中小企業にこそ重要性があると考えられます。
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