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2008年7月号 企業価値を高めるCSR

1.中小企業の資金調達環境

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業がその価値を高め、持続可能な発展を遂げるためには、「経済的価値」、「社会的価値」及び「環境的価値」(いわゆるトリプル・ボトムライン)をバランスした経営を行うべきであるという考え方です。

すなわち、企業は「経済的価値」だけを目指すのではなく、企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)との良好な関係に配慮し、社会的責任を果たすのです。

CSRという用語は、日本においては2003年以降頻繁に使用されるようになりましたが、近年、相次ぐ企業不祥事の発生や地球温暖化などの環境問題への関心の高まりによって企業のCSRへの取り組みがよりいっそう強く要請されるようになってきています。

CSRは一部の上場企業等を対象とするものであるという誤解もありますが、そうではありません。規模に関係なく、企業が持続的に発展していくためには、企業を取り巻く社会や環境に目を向けることが不可欠です。
企業活動の中にCSRを導入することのメリットとしては、以下のようなものがあります。

(1) 顧客や社会からの信頼の獲得・維持
(2) 経営リスクの回避
(3) 投資家からの支持・評価
(4) 業員満足度の向上
(5) 企業文化・風土の変革
(6) 企業価値の増加

2.CSRとステークホルダー

企業が、自社に求められるCSRを考える際には、自社にとって重要なステークホルダーとは何かを考えることが重要です。
ステークホルダーの中でも優先的に考えていくべき対象は、取引先なのか、従業員なのか、株主なのか、地域社会・住民なのか。それをCSR活動がもたらすメリットとCSR活動にかかるコストを考慮に入れながら、位置づけていくことが重要になります。

3.「攻め」のCSRと「守り」のCSR

よく言われることですが、CSR活動には「攻め」と「守り」の二つがあります。積極的な姿勢で取り組み、企業価値の向上につなげていこうとするのが「攻め」のCSR活動であり、経営リスクの回避のためにリスク・マネジメントやコンプライアンスに取り組むのが「守り」のCSR活動です。

「攻め」と「守り」、両方とも必要ではありますが、「守り」のみということになると、往々にして受身な取り組みになり、自社の独自性を打ち出すことができずに、コストをかけた割には十分な効果の得られない活動になってしまうおそれがあります。最低限やらなくてはいけない事項について一通り対応し、それで終わってしまったのでは十分な効果は得られません。

CSR活動にかかるコストを社会的要請に応じるためのコストではなく、将来の企業価値向上のための投資と捉えて、「攻め」のCSR活動に取り組むことが、競争力を高めることにつながります。

4.CSR活動推進のポイント

それでは、効果的なCSR活動を行うには、具体的にはどうしたらよいのでしょうか。CSR活動を推進していく上でのポイントは以下のとおりです。

(1)自社のCSRの明確化

自社のCSRや社会的使命への基本的な考え方やビジョンを明確にすることは、CSRに取り組んでいく上でもっとも大切なポイントです。
明確な目的・ビジョンがないままに活動を進めていったとしても、かけたコストの割にたいした効果が得られない結果に終わってしまうおそれがあります。

(2)自社のCSRの明確化

目的・ビジョンが異なれば、当然アプローチや方向性も変わってきます。他社の取り組みを単純にまねたものではなく、自社の考え方・ビジョンに基づいた、独自の取り組み方を模索していく必要があります。

(3)「攻め」のCSRと「守り」のCSR

前述のとおり、「守り」の取り組みによってもたらされる効果は、経営リスクの回避など、企業が持続的に活動していく上での前提にはなりますが、競争力の源泉にはなりません。
CSRの取り組みを企業価値の向上に結びつけようとするのであれば、積極的な「攻め」の姿勢で臨むことが必要になります。

(4)PDCAの仕組みの構築

CSR活動についても、他のプロジェクト同様Plan、Do、Check、ActionのPDCAサイクルを構築・運用していくことがプロジェクトを成功に導く上で重要です。
すなわち、CSR活動に関する戦略的かつ実行可能な計画を立て、計画に基づいて実行し、実行結果について検証し、検証結果に基づいて目標・計画の修正・改善をする、といったプロセスです。
PDCAサイクルを構築するにあたっては、自社のCSRに対する取り組みの現状を把握・分析し、自社の強み・弱みを理解することが必要となります。

取引先を通じて競争力を高めていくためには、取引先との長期にわたる安定的な信頼関係が重要になります。

(5)CSR活動推進のポイント

(1)取引先に対する取り組み

ケース(1)
取引方針や取引先選定の基準、具体的な取引フローをホームページなどで公表する。

ねらい

  • 取引を行う上での姿勢や方法を明らかにすることで、取引先は安心して自社と付き合うことができます。
  • 取引先がこちらの取引の基準・方法を理解して取引を行うので、取引先との間でコンフリクト(衝突)が生じにくくなります。

(2)顧客に対する取り組み

顧客を通じて競争力を高めていくためには、自社のブランドイメージを作り、ブランド力を高めていくことが重要になります。

ケース(2)
材料調達や製造工程において、地球環境に負荷をかけない工夫をしていることをアピールすることで製品にプレミアムを加える。

ねらい

  • CSRに対する取り組みが消費者の支持を獲得すれば、他社製品とは差別化され、単純な品質や価格の違いとは別のプレミアムが付加されます。
  • 一つの商品・サービスによって確立されたブランドイメージは、自社の他の商品・サービスにもプレミアムを与えることがあります。

(3)従業員に対する取り組み

従業員を通じて競争力を高めていくためには、従業員の価値観の統一や優秀な人材の確保などが重要となります。

ケース(3)
女性の能力活用を目的として、在宅勤務やフレックスタイム制などのワーク・ライフバランスを考慮した勤務制度を取り入れる。

ねらい

  • 働きやすい職場を作ることで、従業員の活性化や能力発揮を促進することができます。
  • 多様な人材を活用することができ、市場や社会の変化に対して柔軟に対応できる組織になります。

このように、CSR活動を、競争力を高め、企業価値の向上につながるようなものにしていくためには、対象(ステークホルダー)を明確にした具体的な取り組みと、それを社会に積極的に発信していく活動が重要になります。

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