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2009年1月号 中小企業経営者の高齢化と事業承継問題

1.中小企業経営者の高齢化と事業承継

マスコミで数年来騒がれているとおり少子高齢化社会の影響について、とくに中小企業では深刻で、中小企業社長の平均年齢は年々高まる傾向にあります。
全企業の社長平均年齢が1985年には53歳であったものが、2004年には59歳とかなり上昇しています。資本金が5億円を超えるような大企業では社長の平均年齢がほぼ横ばいで推移しているのに対して、資本金5,000万円未満の中小企業社長の平均年齢は会社員であれば定年間近の59歳前後と、急速に高齢化が進んでいます。

また社長が高齢化すると、「以前のような積極的な経営ができなくなる」→「守りの経営に入り新規の設備投資を躊躇・抑制する」→「海外や競合他社との競争に負ける」→「売上や収益力が落ち赤字に転落する」→「資金繰りが苦しくなり債務超過へ」という悪循環に陥り、結果として廃業という形で経営を停止せざるを得ないケースも多いのではないでしょうか。
これら廃業企業の中には、経済的問題のみならず、親族に後継者がいないなど「事業承継問題」のため(その中にはM&Aという手法を知らずに)廃業した企業も多数存在しています。

2.円滑に事業承継が進まない理由

中小企業においては様々な要因から事業承継が円滑に進まないと従前から指摘されていますが、主要な要因の1つとして「事業を承継したいという後継者(子息等)がいない」ことが挙げられます。
これら後継者がいない背景には、中小企業社長と会社員の収入を比較すると、1970年代の社長の平均年収は会社員の平均年収の1.5倍程度であったものが、バブル崩壊後の90年代以降、社長の平均年収が会社員の平均年収を下回るようになり、年々その差は拡大しています。

直近では会社員の年収の半分程度までに下がっており、リスクを取ってまで中小企業を経営していく経済的インセンティブが働かないような経済環境にあります。また、中小企業にとって後継者の第一候補は社長のご子息ですが、親が経営する会社に入社せず自らの好きな道に進み、事業承継時(相続発生時)には既に生活基盤を築いているケースも多く、一旦生活基盤を築いてしまうとリスクを取ってまで親元に戻り中小企業を承継するという選択肢を取りにくいのが、事業承継がスムーズに進まないもう1つの理由であります。

3.事業承継と相続税対策はイコールではない

最近の国税庁の税務統計によると、年間死亡者108万人に対して相続税が課税された人はわずか45,152人(全体の4.2%)であり、かなりの人は相続税と無縁です。
したがって、相続税を課税されないケースまで過度の相続税対策に注力するのは経営上本末転倒であると言えますが、現在でもかなりの顧問税理士が「事業承継対策=相続税対策」と捉え、中小企業社長の多くも、いかに税金を払わないかということを重点に置いて経営しているのではないでしょうか。
事業承継に際して一番重要な「後継者問題(人材育成)」の検討を忘れてしまっているように思われます。

【自社株に係る相続税対策の問題点】

  • 株式の分散(経営者以外が株式を所有)
  • 事業規模に比して過大な借入金(株価を下げる方策のひとつであるため)
  • 赤字体質(過大な役員報酬や交際費、個人所有不動産との混同など、
    株価を下げるもう1つの方策であるため)
  • 本業以外への投資(土地、生命保険、ゴルフ会員権、株式投資など)
  • 将来の税制は誰にも分からない(現在節税対策としても…)

【相続税対策の前に検討すべきこと】

  • 後継者を誰にすべきか決定しているか(社長の眼から見て経営を任せられる人物か
  • 後継者として指名した人物の了解を得られているか(話し合いを行ったか)
  • 後継者が親族の場合かつ相続税が払えないくらい株価が高額になる可能性がある場合に
    初めて相続税対策の検討が必要
  • 後継者が親族以外の役員・従業員等の場合、会社の借入金の個人保証を受けられる程に
    個人資産の財力があるか(銀行対策上このハードルが一番高いと思われる)
  • 上記で個人保証を受けられたとしても自社株を買い取るだけの資金力があるか、株式の買い取りができない
    場合やはり相続税対策の検討が必要
  • 後継者を決定できない場合M&A(第三者への事業承継)の検討が必要

4.事業承継対策としてのM&A活用方法

中小企業の事業承継型M&Aはほとんどが100%株式譲渡で、理由は以下のとおりです。

(1) M&Aの目的が社長のハッピーリタイアであり老後の人生設計に見合う
株式譲渡収入を現金で獲得できること
(2) 相続税対策の一環としてM&Aを実行するので自社株の100%譲渡が必要であること
(3) 金融機関からの借入金に対して個人保証をしており、さらに自宅等の個人財産の担保提供も多く、これら個人保証解除・抵当権抹消が必須条件であること

などが挙げられます。

【中小企業オーナーにとってのM&Aメリット】

  • 創業者利潤の獲得(株式譲渡代金+オーナー退職慰労金)
      →相続承継と比較して税制面で非常に有利です(株式譲渡益の税率は20%)。
  • 後継者問題と自社株に関する相続税問題が同時解決
      →第三者へ自社株を売却するので納税資金も確保できます。
  • 法人借入金に対する個人保証の解除及び自宅等の担保解除(抵当権の抹消)
      →借入金は買手が全て引き継ぎます。
  • 会社の屋号(商号)が継続・存続
      →買手企業の子会社としてグーループ傘下企業になります。
  • 財務基盤の強化・従業員の雇用確保・福利厚生面の充実など
      →買手企業は一般にキャッシュリッチな大手企業・優良企業が多いです。

5.まとめ

今までの中小企業の事業承継については、国の施策も企業の顧問税理士の指導方針・考え方も、息子に継がせることを大前提(親族内承継)とした相続税問題に主眼を置いたものがほとんどで、人(後継者問題)や物(事業自体の経営承継)に関するものは後回しの感がありました。
今後は、親族以外への承継(いわゆるM&A)も積極的に推進していくべきではないでしょうか。中小企業もM&Aを積極的かつ有効に活用することで、従業員・取引先・事業自体の経営資源の円滑な承継により、現在疲弊しているわが国の中小企業を立て直し活性化する端緒になるのではないかと考えます。

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