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中国ビジネスQ&A社員を中国に派遣する場合の給与所得について

日中経協ジャーナル 2005年5月号掲載

Q. 中国では近年、個人所得税のうち給与に関する取り扱いが厳しくなってきていると聞きます。最近の状況は?

A. 近年、中国国家税務総局は課税強化を打ち出しており、その中心の一つに個人所得税が挙げられています。 2004年3月の「中国籍個人に対する個人所得税徴収管理業務の強化に関する通達」(国税発[2004]第27号)では2004年末までの滞納税額の整理業務実施が通達され、 内容としては次の項目を挙げています。

  • 2004年6月までの過年度の未納税金の納付奨励(延滞金のみ、処罰なし)
  • 上記期間内に自主的に滞納税金を申告納付しない場合の罰則の強化(延滞金+加算金)

実際にある地域では2004年7月に賃金・個人所得税見積評価システムを立ち上げ、納税者の申告所得が推定される所得より明らかに低い場合には個別に関連資料の提示を求め、 過去の未納所得税を追徴したという例もあります。

また、別の地域では税務局との話の中で具体的な社名を挙げて「この会社はまだ修正に来ていない」などということもあったようです。

個人所得税については、課税強化の傾向が続くと思われますので、課税対象となる項目に漏れがないように十分注意して申告を行うことをお勧めします。

Q.社員を中国に派遣する場合、その給与所得課税に対する基本的な考え方は?

A.中国の個人所得税第1条において納税義務者および課税所得の範囲は次のように定義付けられています。

第1表 納税義務者および課税所得の範囲
納税義務者 課税所得の範囲 区分
中国国内に住所を有する個人 国内源泉所得 居住者
中国国内に住所を有さないが中国滞在期間が1年以上となる個人 国外源泉所得
住所を有さず、かつ滞在していない個人で中国滞在期間が1年に満たない者 国内源泉所得 非居住者

また、給与に係る個人所得税課税について考える場合には次のように区分します。なお、董事や高級管理職に関しては後ほど説明します。

第2表 中国滞在期間と個人所得税課税
中国滞在期間 個人所得税課税
183日以内 一定の要件(出張の場合参照)を満たすと短期滞在者免税適用あり
183日超1年未満 中国滞在日数分個人所得税課税対象
1年超5年未満 中国国内源泉所得および国外源泉所得のうち、中国国内企業等から支払われたものに課税(税務局の承認有する)
5年超 全世界課税

Q.出張者の場合はどのような中位が必要ですか?

A.出張の場合は、短期滞在と183日を超えて滞在する場合で異なります。 《短期滞在者の免税規定》

出張者は、次の3要件を全て満たす場合には短期滞在者の免税規定の適用を受けることができ、中国においては課税されません。

1. 183日基準
その年の1月1日から12月31日までの間に中国滞在期間の合計が183日を超えないこと
2. 報酬(給与)の支払者
その出張者の給与が中国以外の雇用主から支払われるものであること
3. 恒久的施設の有無
給与が中国における恒久的施設により負担されていないこと

上記の要件の中で、1. 183日基準について2004年7月に新しい通達が公布されました (「中国国内に住所を有さない個人の租税条約及び個人所得税法の適用のいくつかの問題に関する通達」(国税発[2004]第97号))。

  • (改正前)中国入国日を1日とカウントし、出国日はカウントせず
  • (改正後)中国入国日、出国日をそれぞれ1日ずつカウント(計2日)
    給与(勤務期間)の計算は入出国日をそれぞれ半日として行う(計1日)

今回の改正により、従前と比較すると出張の回数分だけ中国滞在日数が増えるということになりました。

《183日を超えて滞在する場合》

当初は暦年で183日を超えない予定で中国に出張で来ていた出張者が、累計で183日を超えてしまった場合には、その時点で中国において納税義務が発生します。 期間を過ぎた日の属する月の翌月7日までに入国初日から期間を過ぎた日の属する月までの納税額を一括して申告納付することになります。

この場合、日本で既に納付した所得税については理論上は外国税額控除が可能ですが実務的には中国で控除を受けることは難しいです。

Q.駐在員事務所の駐在員についてはどうなりますか?

A.駐在員事務所の駐在員の登記を行った社員およびそこで雇用されている社員についてはたとえ年間の中国滞在日数が183日に達していなくても短期出張者の免税規定の適用はありません。

この場合には、駐在員事務所は恒久的施設に該当すると判定され、そこで勤務する社員の給与は駐在員事務所の負担であるとみなされるからです。 前述の短期出張者免税要件の3.を満たしていないということになります。

課税対象となるのは中国滞在日数分の給与になります。

Q.董事・高級管理職の取扱いが最近変わったそうですが?

A. 中国の現地法人では日本の役員に相当する地位としては董事と高級管理職があります。 董事は通常年1回開催される董事会に出席するだけの非常勤役員ということが多いです。一方、高級管理職は総経理、副総経理その他の管理者ということで会社の業務を執行していきます。

中国現地法人の董事の地位にある者が中国現地法人から受取るその地位に基づく報酬・給与については中国滞在期間に関わらず、 また中国国外で職務を行ったかどうかに関わらず、職務担当時から職務解除までの期間は個人所得税を納付しなければなりません。

なお、高級管理職についてはこれまでは董事と同様の取扱いでしたが、2004年7月に新しい通達が公布されたことにより董事と扱いが異なることとなりました (董事、高級管理職兼務の場合は変わらず)。 (「中国国内に住所のない個人に租税条約と個人所得税を執行する若干の問題に関する通知」(国税発[2004]97号))

  • (改正前)中国国外勤務の有無に関わらず、中国現地法人から支払われる給与は全額課税
  • (改正後)租税条約の中で役員条項に高級管理職を含むことが明記されていない場合(日本は明記されていません)には一般の従業員と同様に扱う高級管理職が董事を兼務する場合 (実質で判断)には、中国現地法人から受取った報酬については全額課税

Q.建設工事等のプロジェクトに携わる場合は?

A.中国においてプロジェクトを行っている場合、そのプロジェクト自体が恒久的施設と認定され、 事業所として税務当局に認定された場合には、プロジェクトの現場において役務提供を行っている派遣者の給与はその現場が負担しているものとみなされます。 従って183日ルールは適用されず中国における滞在日数に応じて個人所得税が課税されます。

なお、日中租税条約第5条より、6ヶ月超の期間存続する建設現場等については恒久的施設とみなされます。

Q.通常の長期駐在の場合、具体的な税務の手続は?

A.日本出国から帰国までの流れに従って説明します。

1.日本出国時

中国駐在予定期間が1年を超える場合には出国日の翌日から非居住者に該当することになるので、出国時までに年末調整を行うことになります。

日本では非居住者になるため今後日本で支給されたもの(留守宅手当等)については日本においては非課税になります(源泉徴収は不要です。)。

逆に考えると、日本で支給されたものについても中国では個人所得税の課税対象にな るのでそれも含めたところで毎月の申告を行うことになります。

2.出国後最初に受取る給与、賞与

出国後最初に受取る給与や賞与については居住者であった期間に対応する部分は日 本での課税ということになります。ただし、給与については所得税法基本通達212-3 より「給与の計算期間が1ヶ月以下であり、かつ給与支払日に日本の非居住者である 場合は、その給与については全額を国外源泉所得とみなす」ことが認められています。

たとえば、15日締25日払の給与で4月1日に中国に赴任した場合、4月25日支払いの給与は3月16日から3月31日までが上記通達の適用を受けられ日本では非課税扱いとされます。 一方で中国においては4月1日から4月15日までの日割り給与に対して個人所得税が課税されます。 したがって3月16日から3月31日までの給与については日本と中国どちらの国においても課税されないことになります。

賞与については日本と中国で賞与支給対象期間の期間按分を行います。日本においては日割りで行い、その按分額に対して20%の源泉徴収を行って課税関係は終了します。

一方で中国においては月割りで行います(1ヶ月未満切り上げ)。したがって二重課税になる部分が出てくる可能性があります。 その場合は中国において外国税額控除の適用を受けることになります。

3.中国滞在中の課税

(イ)給与についての注意点

駐在員の給与について中国で支払われる部分と、留守宅手当等の名目で日本で支払われる部分が出てくるケースがありますが、 日本支払分についても元々は中国における役務提供に関して支払われる給与なので、日本支払分も含めたところで申告納税を行うこととなります。

なお、日本支払分については、日本から見た場合外国勤務に係る国外源泉所得に該当するので、他に国内勤務に係る国内源泉所得が生じない限り、 日本での課税関係は生じません(所得税法第161条8号イ、日中租税条約第15条第1項)。

(ロ)賞与の計算

賞与については、賞与が支給された月に単独で1か月分の給与所得として計算します。 毎月の給与に係る個人所得税の計算で給与所得控除額4,000元を使っているため全額を課税所得として個人所得税の計算を行います。

なお、年間の賞与を何回かに分けて支給すると税額が軽減されることがあります。

また、賞与については2005年1月21日に「個人が年間1回払賞与等を取得する際に個人所得税を計算徴収する方法を調整する問題に関する通知」(国税発[2005]9号)が公布されました。 内容としては、

  • 納税者が年に1回支払われる形式の賞与を取得した場合における税額計算は、その賞与の額を12ヶ月で割り、その結果に対応する税率と速算控除額を適用する
  • 年に1回支払われる形式の賞与を取得した月の給与が税法に規定する月次控除額よりも低い場合、次の計算式に基づいて賞与の税額を計算する
    納税額=(当月取得する賞与-当月の給与と費用控除の差額)× 適用税率 - 速算控除額

(ハ)退職金の取扱い

退職金を支給した場合には給与所得として課税が行われます。ただし、その支給額が給与の6か月分を超えるときは、6ヶ月で均等配分し税額計算を行います。

日本での在籍期間があれば、日本での在籍期間に対応する退職金の源泉税が発生します。

4.中国帰任時の課税

中国から帰任する際には最終月の納税に関して、帰国予定日までの期間に対応する給与・賞与に係る税額を見積り、帰国時までに納税を完了させます。

日本においては、帰国日の翌日から日本の居住者になります。

5.帰任後最初に受取る給与・賞与

帰国後最初に受取る給与については、全額について日本での課税対象になります。 居住者は国内源泉所得、国外源泉所得の両方(全世界所得)が課税対象になるためです。 したがって、日本と中国で二重課税が発生することになりますが、この二重課税については日本で確定申告を行い外国税額控除の適用を受けることができます。

帰国後最初に受取る賞与についても給与と同様に二重課税が発生しますが、確定申告で給与ともども外国税額控除の適用を受けるという流れになります。

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