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プロジェクトストーリー

松本 太一

公認会計士の松本は、ある地方都市のA社の再生業務に
プロジェクトマネージャーとして、現場の陣頭指揮を執った。

問題の「本質」は?

A社の会議室に、社長を筆頭に全経営陣が招集された。プロジェクトの進め方を確認したのち、1対1での「インタビュー」が始まる。対象は、経営陣と部長以上の「経営幹部」約30名。
最初は警戒心から重い雰囲気が続くが、話しても大丈夫だと分かると、堰を切ったように会社の問題点が噴出する。経営陣内部の分裂、重いノルマ、架空売上を計上することになった経緯・・・皆、悩み続けていたことを、誰かに打ち明けたいと思っていた。

私たちに相談が来る場合、入口は会計や財務上の問題である場合が多い。しかし、表面上は会計の問題でも、経営が悪化した原因はもっと深いところに存在している。財務諸表からは読み取れない、問題の真髄を短期間で見極めなくてはいけない。
スタート時、経営幹部へのインタビューは非常に有効である。インタビュー対象は時に何十人にも及び、時間もかかるが、幹部の想いの中に会社の真の問題点が隠されている。
A社は、東北圏を中心に展開する機械部品メーカー。近年の売上・利益不振に加え、粉飾決算が発覚し、同時に資金繰りに行き詰まる。つまり、通常の経営を続けるのが難しくなった状態からのスタート。幹部へのインタビューで、会社の体質上の問題点は2つに絞れた。

(1) 社内の「共通言語」の不足

  • 業績把握の指標となる「共通言語」が不足している。そのため、経営陣と部門長の話が全くかみ合っていない。
  • 一方で、部門長には「売上増」のみが強く求められている。過度なプレッシャーから、売上の水増しを企てた部門があり、経営難の発見が遅れた。

(2) 社長の「発信力」

  • 社長は非常に強い問題意識をもっている。
  • しかし、現場に対する「発信」が少ないため、会社が向かうべき方向性が社員に共有されていない

改善のプロセス

会社は、この道50年以上の歴史を持つ企業。その中で、昨日今日から関与をはじめたコンサルタントに何ができるかは、どんなクライアントでも担当した時には必ず悩む。
私たちは、会計・財務面でのスキルを強みとしている。A社の場合、業績管理の共通したツールがなかったため、まずは月次での業績をしっかりと把握・検討できる仕組みの構築を図った。

今の自社の立ち位置、何が問題か、その解決策は・・・。非常に基本的な事項をあたりまえに議論・共有できるようになっただけで、歯車はいい方向に回り始めた。社長だけが危機感を持っていても、会社は良くならない。それを幹部が共有し、同じ方向を向いて進むことによって、会社ははじめて改善に向けて動き出す。
経営陣と幹部のコミュニケーションがとれるようになった段階で、次のステップにうつる。そこでは、会社を強く牽引する「推進力」が必要になる。

最終的には「人」

会社は、最終的には「人」で決まる。何よりも重要なのは「社長」。そして、それを実現する「幹部」がいるかどうか。ここがキーポイントとなる。

A社の社長は創業者の息子で、2代目。最初のうちは、古株の幹部に対する遠慮が邪魔し、なかなか強い方針を打ちさせずにいた。しかし、社長との対話の中で、心の中にある「想い」を「伝えていい」こと、もっと言えば「伝えなければならない」ことを繰り返し説明。半年経ち、社長の発信の力が明らかに変わってきた。社長が変わったとたん、会社の雰囲気は明らかに変化した。
社長は、年齢でも事業においても私の大先輩。しかし、伝えるべきことは伝えないといけない。私のような若造がいうのは生意気だ・・・心の内では思うが、言うべきことは言い切ることが自分の役割と、いつも自分に言い聞かせている。

悩みを「共有」する

コンサルタントとして一番重要なことは、社長と一緒に「悩む」ことだと思っている。具体的な解決策を出すことは重要だが、その前にクライアントが置かれた立場に立ってみて、同じ視点から物事を考えなければならない。「距離」を縮めずに話す言葉は、相手の心には届かない。
社長と繰り返し話し、社長の目線から、社長の悩みを直に感じ取ること。社長と一緒に債権者に説明にいって、一緒に頭を下げること・・・非常に泥臭いことではあるが、そういう過程から得られる「社長とのきずな」が、我々の原動力となる。

A社はまだまだ改善の道半ば。今後、劇的に変化する環境の中で、生き残っていくためのブランドやマーケットを開拓していかなければならず、まだ基礎固めの段階でしかない。しかし、社長と会社の雰囲気は、以前と比べ明らかに前向きに変わってきている。その根元には、社長が会社に対して持っている「想い」がある。
華々しい企業再生もよく目にするが、私たちが目指す「中小・中堅企業のNo.1サポーター」であるためには、このような地道なプロセスが不可欠と考えている。

松本 太一
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