8tipsリスクに備える経営
- 2020.04.24
- リスクに備える経営
コロナ対策:国税の納税猶予について
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、さまざまな対策が講じられています。
今回は、新型コロナウイルス感染症の影響により、会社が納める「法人税」や、個人事業主が納める「所得税」などの税金(国税)を支払うことが困難な方に対する、税金の支払を猶予する制度(納税猶予制度)についてご説明いたします。
1 どのような場合に納税猶予を受けられるのか?
納税猶予の適用を受けることができる場合として、以下の3つのパターンがあります。
(1)「特例制度」の条件を満たす場合
(2)新型コロナウイルス感染症にり患された場合など「個別の事情」がある場合
(3)「法令の条件」を満たす場合
以下、それぞれの条件について確認をしていきます。
(1)「特例制度」の条件を満たす場合とは
「特例制度」の条件を満たす場合とは、以下の2つの条件を満たす場合を言います。
※なお、この特例は関係法案が国会で成立することが前提となります。
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① 新型コロナウイルスの影響により、 令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること。
② 一時に納税を行うことが困難であること。
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この場合
・1年間の納税猶予が認められます。
・延滞税の全部が免除されます。
ので、この条件に該当して納税猶予の適用を受ける場合が最も優遇されます。
(2)新型コロナウイルス感染症にり患された場合など「個別の事情」がある場合とは
以下のいずれかの事情に該当する場合を言います。
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① 災害により財産に相当な損失が生じた場合
例:新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合
② 本人又は家族が病気にかかった場合(個人事業主を想定)
③ 事業を廃止し、又は休止した場合
④ 事業に著しい損失を受けた場合
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これらの条件に該当した場合
・1年間の納税猶予が認められます。
・延滞税の全部又は一部が免除されます。
従いまして、この場合でも延滞税の全額免除の可能性があり、(3)の場合よりも優遇を受けられます。
(3)「法令の条件」を満たす場合とは
以下のすべての条件に該当する場合を言います。
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① 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
② 納税について誠実な意思を有すると認められること
③ 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
④ 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること
⑤ 原則として、担保の提供があること。(担保が不要な場合があります)
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上記のすべてに該当する場合、納税猶予の適用を受けることができる可能性があります。
(コロナウイルス感染症の影響が出る前からもともとあった制度です。)
この場合
・1年間の納税猶予が認められます。
・延滞税の一部が免除されます。
2.納税猶予を検討する順序
納税猶予を検討される場合の検討順序は、次の流れで考えていただくとよいでしょう。
①「令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少しているかどうか」
→ 該当したら上記1.(1)の「特例制度」の申請を行います。
②「コロナウイルス感染症の影響によるものかどうか」
→ 該当したら上記1.(2)の「個別の事情」の申請を行います。
※①②に該当しない場合でも、上記1.(3)の「法令の条件」の申請を検討しましょう。
<納税猶予の3パターンまとめ>
3.納付のタイミングと延滞税
「特例制度」の条件を満たす場合には1年間の納税猶予が認められる見込みですが、「個別の事情」がある場合と「法令の条件」を満たす場合の特例については、基本的に分割で納付する必要があります。
分割納付額は、以下のように申請書を提出し、財産の状況等を踏まえて税務署と決めていきます。
納付の期限を過ぎると延滞税が課されますが、納付の猶予制度の適用を受けている期間については、延滞税が軽減又は免除されます。
(注)令和2年の延滞税の軽減:年8.9%の割合が年1.6%の割合となります。
4.まずは申請を
上記の条件に当てはまらなかったとしても、国税庁は下記のように公表しています。
「新型コロナウイルス感染症の影響により一時に納付できない事情のある方に対しては、その置かれた状況に配慮して、迅速かつ柔軟に対応することとし、猶予の申請や審査についても極力簡素化しておりますので、お早めに所轄の税務署の徴収担当にお電話にてご相談ください。」
(出典:国税庁が発表しているQ&A)
上記の要件に該当しなかったとしても、納税猶予を受けられる可能性がありますので、資金繰りが厳しい場合はまずは所轄の税務署にお問い合わせいただくといいでしょう。
※「所轄の税務署」は国税庁WEBサイトで検索できます。
https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm
※この内容は令和2年4月17日の情報によります