Series事例紹介〜SDGs経営・Co-Creation等〜
2020.05.15
事業をつなぐ - 親族外・社外への承継成功の秘訣 SDGs
事業をつなぐ - 親族外・社外への承継成功の秘訣
- 株式会社ゴダック
アウェイ環境での社長就任
「私は、親会社から派遣されてきて3年経った今年、
社長になりました。」
株式会社ゴダックの代表取締役、西谷賢亮氏は穏やかに話し出しました。
株式会社神明がゴダックの株式を取得したのは2017年。西谷氏はそのときに神明から派遣されたそうです。ゴダックは荒谷会長(前オーナー)が創業して築き上げてきた会社。いわゆる親族外承継という形になりますが、よくあることとして、オーナーの元で育ってきた社員さんとの軋轢などなかったのでしょうか。
「うちの社員はいい意味で自立しているんです。自分でやる、という意識が高い。荒谷会長がそういう文化を作ってきたのでしょうね。自分の意見はしっかりと言ってくれます。」
ゴダックのビジネスモデルは、どちらかというと大量消費には向かない高級海鮮食材を海外から調達して、国内のプロのシェフに販売する、というもの。ホンモノのプロを相手にする商売ですから、当然相応の目利き力が求められることになります。神明は多角化を推進してはいますが本業は米卸の会社。当然西谷氏に海鮮分野の目利き力などあるわけはありません。社長として受け入れてもらうのはハードルが高かったのではないでしょうか。
「実は、どこにいっても『前からいたみたい』と言われることが多いんですよね。コミュニケーション力に助けられています。」
原体験は、荒野の開拓
西谷氏が神明に入社したのは、1995年。ちょうど米の流通規制が大幅に緩和された食糧法が施行される直前で、神明はいち早く全国都道府県への登録を申請、それまで関西に限定されていた営業範囲の拡大に乗り出しました。営業マンとして採用された西谷氏も数年間の下積みのあと、大消費地の関東圏開拓に数人の仲間とともに送り込まれたそうです。
「正直、大変でした。お米は商品に差があるわけではありません。そんな中で飛び込み営業をするわけですから。他社と差異化できるのは、ヒト、つまり自分自身しかないんです。でも成果を出そうと必死に努力したことで、だいたい相手の気持ちや考えがわかるようになりました。このコミュニケーション能力はそのときに身についたんだと思います。」
コミュニケーションというのは「情報の伝達」と「感情の共有」双方が有機的に機能してはじめて有効に働くものですが、そんなに簡単に身につくものではありません。西谷氏も基本1人の時間が好きで、プライベートでは全く違う顔を持っているそうですから、絶対的に追い込まれた環境で本気で、口先だけのお客さま本位というレベルではなく、ある意味お客さまになりきるくらいに考え抜くことで体得したスキルなのかもしれません。
人事異動を活かすのは当人
東京での成功を背景に、営業責任者として辣腕を振るうことになったそうですが、そのときのことを西谷氏はこう話されています。
「当時の神明の部下は、私のことを恐い、と思っていたと思います。自分でやってきたこと、自分ができることを部下にもするよう、強要していたんですね。でも、組織をうまく作れない中に、ありがたいことに九州支店の支店長にしてもらったことで少し変わりました。支店経済という言葉もあるように、地域では支店長って実質的なトップとしての言動が求められるんですよね。厳しさだけではなくて、社員のモチベーションをどうあげるか、そして、周囲からの期待にどう応えるか、とても勉強になりましたし、とても楽しかったですね。」
企業における組織戦略において、異動で人財育成を、というのは理想的ですが、あくまでも企業が提供できるのは、「機会」だけであり、それをどう受け止め、どう活かすかは個々人になります。そういう意味で、西谷氏はうまく人事異動を活用してきた、とも言えるのではないでしょうか。
「でも、九州のあとが本当のターニングポイントでした。当時資本参加した会社に派遣されたのですが、配属は営業ではなく総務部。海外のFC開拓といった仕事も任されました。まさにゼロスタートです。コーポレートガバナンスコード、なんてはじめて耳にしましたし、ただ、ここでは、企業の意思決定プロセスやそのプロセスにおける人間の感情の動き、といったことを学ぶことができましたが、それだけではなくて、仕事を教えてもらう立場、ということ、その気持ちがわかりました。そのとき教えてくれた方に大感謝で、今でもよく相談に乗ってもらっています。」
ムダな経験はない
そんな背景を伺うと、なぜ西谷氏がゴダックに派遣され、プロ集団の中でも社長として受け入れられているかがわかるような気がします。
「基本的に社長になりたいとか、そういうのはなかったんですよね。育った家庭環境もあってか、安定した生活、そして、豊かな人生を、とは思っていましたが。ただ、くさらずこだわりすぎず、と思ってやってきました。言い換えるとチャレンジ精神と柔軟さ、でしょうか。それをいただいた環境で、あきらめずにできるまでやるのが大事だと思っています。」
一方で、ゴダックの社長として10年後にどうあるべきか、という質問には冷静な考察を話されています。
「親会社の神明の『量を追うビジネスモデル』とゴダックの『質で勝負するビジネスモデル』は明らかに違います。なのでいい意味で「神明化しない」というのが大事だと思っています。一方で、これまでは輸入商材を国内展開する、というビジネスが主流でしたが、日本の食文化を輸出する、という可能性も見えてきました。ただ、ゴダックの本当の強さは個人の資質に紐づいていることも事実。次世代にしっかりと繋いでいくためには、いわば『ゴダックイズム』を明らかにし、伝えていく仕組みが必要だと考えています。」
聞くと、神明が資本参加した企業には、西谷氏と同じ時期に東京で事業立ち上げに邁進したメンバーが多く派遣されているそうです。
「これまで経験させてもらったことで、ムダなことはひとつもありませんでした。」
話の最後に、西谷氏は迷いなく断言されました。立場に関係なく、仕事で充実されている方は不思議とみなこうおっしゃいます。今後、ますます「事業をつなぐ」ことが大事になってきますが、それを支える人財の共通項なのかもしれません。
株式会社ゴダック
【商材紹介】
■天使の海老
海老の常識を覆した圧倒的な存在感。究極の安全性と品質を兼ね備える天使の海老は、「天国に一番近い島」 と言われるニュ ーカレドニアで生まれた。 世界最高レベルのフランスの海洋研究所イフレメールがHACCP規格で 24 時間一元管理し、孵化、育成、加工、出荷に至るまで徹底した安全管理が貫かれている。刺身のみならず、ゆでる、焼く、揚げる等どんな料理にも合い、 食通が最終的に辿り着くまさに “至高の海老” 。
■翡翠の瞳
翡翠の瞳は、数年をかけて開発したオーストラリア産の生冷あわび。もともとオーストラリアで天然に存在するあわびを選び抜かれた養殖場で育て、ゴダック独自の冷凍技術によって凍結した肝まで生食用・
株式会社ゴダックは、SDGs17のゴールのうち以下に該当
〈執筆者〉
SDGs未来研究所 下阪安勝