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深圳市で「デジタル人民元」のテスト開始

深圳市人民政府及び人民銀行が「デジタル人民元」のテスト実施のため、抽選によって市民5万人に総額1,000万元(約1.5億円)のデジタル人民元を無償配布しました。10月12日18時から当選者には、専用アプリを通じて200元(約3,000円)のデジタル人民元が配布され、10月18日24時まで深圳市羅湖区内の3,389軒の小売店(スーパー、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、飲食店など)で利用できました。

デジタル人民元を使用するには、抽選結果のメッセージで案内されたデジタル人民元アプリをダウンロードし、個人情報登録すると「デジタル人民元」の画面が表示されます。人民元の紙幣と同じく毛沢東主席が描かれています。左上は国章で、その下に金額の200元が表示されています。右上には「中国人民銀行」と書かれています。右下には選択した銀行のロゴと銀行名が表示されています。

(図示:人民元現金とデジタル人民元の比較)

 

10月18日24時までに47,573人が使用し、62,788件、総額876.4万元(約1.3億円)の決済が行われたとのことで、更に追加の自己資金で90.1万元(約14百万円)のチャージもあったようです。

さて、中国では既にAlipayやWechatPayというスマホ決済サービスが普及していますが、使用者の感想によるとデジタル人民元での決済も大きな違いはないとのことです。ただし、デジタル人民元はオフラインでも利用が可能となっており、たとえば、スマートフォンにデジタル人民元アプリがあれば、電波やWiFiがなくても、二つの端末同士が「ワンタッチ」で振替、支払いが可能です。ちなみにデジタル人民元の手数料は、当然のことながら無料です。

 

デジタル人民元の正式導入時期は未定ですが、導入に向けた準備は加速していくと思われます。ちなみに、中国政府がデジタル人民元導入を急ぐ背景には以下のことが考えられます。

(1)中央銀行の通貨主権と合法的な通貨流通の保護

(2)紙幣と硬貨の発行、印刷、回収、保管といったコスト削減

(3)匿名性の制御、安全性とプライバシーの保護

(4)資金の流れの制御、腐敗防止とマネーロンダリングの防止

(5)AlipayやWechatPayが独占した電子決済の市場を取り戻す

 

なお、中国は人民元の国際化を目指しているともいわれており、デジタル人民元はその一翼を担うことになる可能性が高いと目されています。