みらいコンサルティンググループ

「地の力」×「知の力」 ふるさと 弟子屈町から得た学び

「弟子屈」。この町名をどう読むか、ご存じでしょうか。

正解は「てしかが」。(霧の)摩周湖が有名な人口約7,000人の道東の町です。

 

 

冬はマイナス10℃以下、空気中の水蒸気が凍ってキラキラと輝く「ダイヤモンドダスト」も見られるこの町で、今、マンゴーの栽培や、アフリカ地方原産の魚ティラピアの養殖がおこなわれています。また、1年を通じて安定的に栽培される苺は、関東のあの夢の国でも提供されています。

なぜ、極寒の北国でこのような事業が可能なのか?
実は、弟子屈町は少し地面を掘るだけでも温泉が湧き出る地域、という一面があり、豊富な「温泉熱」を活用することができるのです。

 

徳永哲雄町長にお話を伺いました。町長は、こういった地の利を活かした産業に、観光業を「かけあわせる」ことで、新たな感動、関係人口を増やしていく、というビジョンを語っていらっしゃいました。また、道東の森、川、そして海を豊かにする「水源地」というコンセプトで町をPR、その取り組みが奏功してか、多様な特産品がふるさと納税額を年々押し上げているそうです。

自然エネルギーの活用はコスト削減だけではなく、SDGsへの貢献、ブランディングにもつながります。また、市町村という人為的な境界線を超えて、広い視野で「つながり」や「物語性」を見出すことで、地域の新たな魅力、ファンを獲得する。これは、人の「知恵」によって、「地の利」を存分に活用した好事例のひとつだと思います。

そんな弟子屈町も人口減少は進む一方なのですが、徳永町長によれば、近年、若年層の移住者が増加傾向にあるとのこと。オンラインで東京、あるいは全国の仕事をこなしつつ、オフタイムは大自然を満喫。医療や教育の面での不便さはまだあるかもしれませんが、規制緩和やデジタル技術の革新により地域格差が解消されていく未来はもうすぐそこにきているのではないでしょうか。もちろん、そうなると、地域の企業としては、優秀な社員を獲得するチャンスと、大企業に社員を奪われるリスクを同時に抱えることになるのですが、移住者等も含めた「知」を活かす仕組み、環境を作ることができたならば、今までにないスピードで事業をドライブさせていくことができるのかもしれません。

 

企業は、その「地」の魅力も自身の魅力として取り入れつつ、しかし決してそこに甘えず、多様な「知」によって絶えず差別化を図っていかなければならない。その基本原則に、私は、私の生まれた町から学ばせていただきました。

ご面談に応じていただいた徳永町長はじめ、私の故郷を元気にしていただいている町の皆さまに、この場を借りて感謝と敬意をお伝えしたいと思います。

 

<執筆者>
北海道地域創生プラットフォーム株式会社(HPR2)
吉田 慶太