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2023.03.01
世界を駆ける経営

【深圳レポート】HUAWEI(ファーウェイ)、自動車関連事業を積極的に拡張

【深圳レポート】HUAWEI(ファーウェイ)、自動車関連事業を積極的に拡張…

※本記事は、深圳イノベーションセンター(MICS)会員に限定配信している「MICS NEWS(vol.71)」に掲載されたものです。なお、掲載内容は2022年7月時点の情報です

 

「車を作らない」と主張してきたHUAWEIが、自動車関連事業の拡大に拍車をかけていることで注目されている。

HUAWEIが今年の7月11日に発表した最新データによると、同社と重慶小康社が提携してリリースした新車のM7が発表から3日間で、6万台を超える注文を受けている。同時に、長安汽車・北汽藍谷等のいくつかの上場自動車メーカーもHUAWEIとの提携を加速させており、最新の進展状況を頻繁に発表している。

 

「車を作らないとの主張」と、自動車産業への継続投資

 

HUAWEI常務取締役の余承東氏は、「HUAWEIの自動車事業における投資が相当大きく、1年間で十数億ドルを投入している。自動車はHUAWEI唯一の赤字事業で、直接的には7000人を投入し、間接的に1万人以上を投入していて、言うまでもなく「お金をつぎこむ」事業で、非常に「やりにくい」事業でもある」と認めながらも、自動車ビジネスには強気であることを表している。

インテリジェント新エネルギー産業の高成長に伴い、HUAWEIの自動車事業に対する姿勢もますます積極的になってきている。2019年、HUAWEIの徐直軍副会長は、HUAWEIは車を作らないことを明らかにしたが、2020年、HUAWEIの創業者任正非氏は、「HUAWEIは自動車を生産しないが、ICT(情報通信技術)に焦点を置き、自動車メーカーがよい車をつくれるように支援する」との決議を発表し、有効期間は3年であるとした。

今、3年間の期限の半分が過ぎており、決議が発表されてから、HUAWEIのインテリジェント新エネルギー自動車分野での動きは非常に積極的である。HUAWEIの2021年度の年度報告書によると、インテリジェント自動車ソリューションの分野において、HUAWEIの年間投資額は約10億ドル(64億人民元)に達し、この投資規模はすでに上場をしている自動車メーカーである蔚来・小鵬・理想よりも大きい。

通常、国内のインテリジェント新エネルギー自動車分野の会社は、テスラの新車を目標に、研究を進める。しかし、最も積極性を見せているのは、自動車メーカーではなく、HUAWEIであった。自動車の細分化された複数の分野において、HUAWEIはすでに上位に立っている。2021年の国内自動運転特許ランキングを見ると、BaiDu、HuaweiとDJIがトップ3にランクインしている。

 

HUAWEI系「自動車チーム」は既に形成済

 

HUAWEIの自動車事業は、自動車メーカーのグループに正式 に仲間入りを果たしている。

● HUAWEIと長安汽車等が提携したアバターブランドー「アバター11」

アバター・テクノロジー(阿維塔科技)は長安汽車・HUAWEIと 寧徳時代の3社が連携してつくり上げたインテリジェント自動車ブ ランドである。アバター・テクノロジーとHUAWEIが2022年6月25 日に締結した全面的な戦略協力協議によると、双方は次世代 のインテリジェント電気自動車技術プラットフォームであるCHN に基づいて、インテリジェント自動車製品のシリーズを構築し、2025年までに4車種の新車を発売するとしている。また、双方は最適なリソースの投入、HUAWEIHI商標授権などの全分野で 合意している。

● HUAWEIと小康グループが提携したブランドセレス(賽力斯)AITO-「問界M7」

セレスの前身は小康が設立した新エネルギー会社である。2021年4月、小康はHUAWEIとの提携に成功し、双方は幅広く協力することに合意し、セレスは HUAWEIと連携したインテリ ジェント化新エネルギー車の生産を開始した。

● HUAWEIと北汽藍谷が提携したブランド「極狐」は7月末最新情報を発表する予定である。

● HUAWEIと奇瑞汽車・江淮汽車等も新たな「智選車(自動車製品販売ガイド情報のプラットフォームをいう)」業務モデルで提携することを決意したという情報もある。

従来の自動車メーカーが自分で主役を演じるという市場状況とは異なり、HUAWEIの要素はすでに長安や小康等の自動車メーカーの新エネルギー車の最も輝かしい象徴となっている。業界の専門家は、小康・長安・北京汽車等の自動車メーカーを中心としたHUAWEI系「自動車チーム」が形成されたとみている。

 

さまざまな形で自動車産業に「デビュー」

 

余承東氏は、「HUAWEIは自ら車をつくるのではなく、パートナーがよい車を設計し、競争力のある車をつくることを全力で支 援するという原則を貫く。」と述べている。HUAWEIは自動車事業において、3つのビジネスモデルを有する。

 

1.標準化された部品モデル、つまりHUAWEIは自動車メーカーに対し、モーター、バッテリーマネジメントシステム、インテリジェ ントドライブ、インテリジェントコックピットの関連部品などを含む部品を提供する。

2.HIモデル(Huawei Insideモデル)、つまりHUAWEIは自動車メーカーに対し、情報通信構造、インテリジェントコックピット、インテリジェントドライブ等を含む全面的なインテリジェント自動車ソリューションを提供する。このモデルの代表車種としては、極狐阿爾法SHUAWEIHI版とアバター11である。HUAWEIが北京汽車・長安・広州汽車と提携する際もこのモデルを採用している。

3.智選車モデル、つまりHUAWEIは自動車メーカーの製品定義・主要部品の選択・マーケティングサービス体制等の分野に深く参加し、将来的には智選車モデルをさらに深化させ、充電とバッテリー交換等の多方面の業務を展開する可能性がある。今、HUAWEIの店舗で、HUAWEIの携帯電話と同じ販売優遇を受けることができる車種は、HUAWEIと小康グループが提携した新しいモデルの「問界M5」と「M7」だけである。

 

HUAWEIが自動車メーカーと連携して自動車事業に進出したのは、インテリジェント化した新エネルギー自動車分野で、部品サプライヤー・スーパーディーラー・ITサービス業者・自動運転サービス業者等多くの役割を同時に果たすことを望んでいることにある。将来的にHUAWEIは、自動車メーカーと連携した新車販売台数が上昇することに伴い、上記のビジネスモデルが成熟すれば、複数のルートで利益を得ることができる。

 

マルチチャネルで収益を上げるためのエコロジー構築

 

HUAWEIが加わったことで、セレス(赛力斯)の新エネルギー車の販売台数は上昇しつつある。2022年6月の新エネルギーSUV車販売台数ランキングでは、「問界M5」は7021台の販売量で国内8位にランクインし、比亜迪の「唐」に次いでいる。6月30日まで、セレスの2022年上半期の累計納品台数は20000台を超えている。

パートナー会社との新車販売台数が上昇するのに伴い、HUAWEIが自動車事業を通じて、どのように利益を得るかも注目される点となっている。まず、HUAWEIはサプライヤーとして製品やシステムを自動車メーカーに販売することができる。また、HUAWEIはディーラーとして店舗を通じて、パートナーの新車を販売し、HUAWEIのブランドとネットワークの優位性を発揮することができる。さらに、HUAWEIはコンサルタントとして、パートナーのさまざまな問題を解決するようにサポートすることもできる。

自動車事業のビジョンについて、余承東氏は、「電動化は新エネルギー車の前半部分で、インテリジェント化は後半部分である。スポーツの試合でも、実際勝利の鍵は前半だけではなく、後半も勝利できれば最後の勝利を獲得できるのだ」と述べている。HUAWEIは長年にわたって情報通信産業で蓄積してきた能力を用いて、自動車メーカーのパートナーのビジネスが成功するようにサポートし、最終的にHUAWEI自身のビジネス成功へ導くことを明らかにしている。

直近、深センを代表する新エネルギー自動車メーカーであるBYDが世界でももっとも厳しい市場である日本での自動車販売を開始したと発表した。いずれHUAWEIが関わっているモデルも日本市場でのデビューを果たすことだろう。

 

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