「転勤」に対する考え方の変化と企業が取るべき対策

最近、企業の方々から従業員の転勤に関する相談が増えています。人手不足、働き方改革、そしてデジタル化が進むなかで、働く人の価値観も変化しており、企業もこれまでとは違う人事のやり方を考えないといけなくなっていると感じています。とはいえ、「転勤」は人材を有効活用したり、人を育てる上でとても大切な方法だと考えている経営者も多いのではないでしょうか。そのようなお悩みをお伺いする機会が最近増えていますので、ここでは、経営者の皆さんがこれから考えるべき転勤のあり方と、それに伴う人事施策の具体的な方法について説明します。
従業員の転勤に対する考え方の変化と企業の認識
従業員の転勤に対する考え方は変化しており、企業も対応を迫られています。かつて転勤は人員配置や人材育成に有効でしたが、労働人口の減少や転職のしやすさから、従業員の転勤に対する価値観は変化しています。調査では、望まない勤務地変更があった場合、3割以上が退職を考えるという結果も出ています。企業側も一方的な転勤命令ではたちゆかない、と認識し始めており、従業員の意向や環境に配慮した「転勤戦略」が求められています。
企業が取り組むべき転勤戦略と具体的な対策
地方の中小企業にとって、優秀な人材を確保し、長く働いてもらい、育てることは、事業を続けていく上でとても大切です。このような変化を受け止め、人事のやり方を変えていく必要があります。
もっとも大切なことは、転勤の目的と意味を従業員にきちんと説明し、納得してもらうことです。ただ「会社命令です」と伝えるだけでは、納得しない人が増えてきているということです。
たとえば、下記のようなことをできるだけ具体的に本人に伝えてみてはいかがでしょうか。
事業戦略とのつながり
「なぜ、この部署・地域にあなたの力が必要なのか」「この転勤が会社の事業にどう貢献するのか」といった、会社全体の戦略を踏まえた目的を伝える。
例:新しい地域で拠点を立ち上げる主要メンバーとして期待している、とか、新しい事業を引っ張っていくキーパーソンとして抜擢した、といったような話です。
個人のキャリアパスへのつながり
転勤が自分のスキルアップ、新しい経験、体験につながり、将来のキャリア形成にどうつながるかを伝える。
例:新しい地域での経験は、あなたを次のステージに引き上げ、自社だけではなくいろいろなところで役に立つ、とか、この部署の経験(成功も失敗も)が、将来的にマネジメント職に就く際に不可欠になるとかです。
期待される役割と成果
配属先で具体的にどのような役割を担い、どのような成果を期待されているかを伝える。
例:一時的に人手不足に陥っている拠点で人手を確保して後任者を育てることを求めている(達成されれば帰任する)といった感じです。
また、転勤辞令では期間を明示することも重要です。
- 期間(目安)の明示: 「〇年程度の赴任を想定」と目安を伝えることで、ライフプランを立てやすくなります。
- 期間延長・短縮の可能性と条件: 条件を明確にしておくと、透明性が高まります。
- 定期的な状況把握と振り返り: 面談などで状況を確認し、キャリアステップについて対話する機会を設けることで、企業側からのサポートを実感できます。
なお、以前からもあった課題ですが、異動・転勤には精神的、経済的な負担が伴うため、経済的支援や生活支援、家庭環境への配慮はますます重要になっています。
- 家庭環境への配慮: 配偶者の仕事、子供の教育、親の介護など、配慮すべき事情がある場合は時期を再検討する。
- 本人の健康状態や個人事情への配慮: 持病や個人的な事情によりそう。
このような価値観の変化を踏まえ、人材戦略を考えるためには、従業員一人ひとりのキャリア志向やライフプラン、個人的な環境をタイムリーに把握し、それらを適切に人事に活用することが重要といえます。ただ、人事戦略を多様化させるとともに、人材育成やキャリア形成の方法も多様化させ、経営者と従業員の双方が納得する方法を探すことも大切です。
いかがでしたでしょうか。ここでは「転勤」という方法に焦点を当ててお伝えしましたが、最近の社会の変化により、企業の人事課題はますます多様化、複雑化しており、従来の方法論だけでは対応が不足することもあるのではないでしょうか。
みらいコンサルティンググループでは、企業がめざす姿を実現するための人事施策全般を見直し、その運用を支援していますので、興味がある方はぜひお問い合わせください。
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