地場企業の「アトツギ」たちと、地域の未来を切り拓く ―持続可能な地域づくりの鍵は、次世代経営者への伴走と共創にあり
少子高齢、人口減少、マーケットの縮小…。
日本の多くの地域は今、これまでの延長線上では語れない局面に立たされています。
「人がいない」「後継者がいない」「産業が続かない」——。
こうした言葉が並ぶと、つい“地域の未来は暗い”と感じてしまうかもしれません。
しかし、地域には、未来を照らす存在がいます。
それが、地域で根付いてきた地場企業の「アトツギ」たちです。
国の事業などで地域の「アトツギ」たちと出会い、感じたことをお伝えいたします。
単なる後継者ではない、変革者としての「アトツギ」
「アトツギ」とは、単に親や先代から会社を引き継ぐだけの存在ではありません。
彼らは、地域の歴史や文化、顧客や社員との関係性、事業の強みや弱みと向き合いながら、「次の時代にどう進化させるか」を託された存在です。
私は各地で、アトツギを対象とした講演や対話を重ねていますが、そこで常にお伝えしているのは、「アトツギの最大の武器は、“ゼロから何かを生み出す力”ではなく、“すでにある価値に気づき進化させる力”である」ということです。
先代たちが切り拓いてきた市場、積み重ねてきた信頼、磨き続けてきた技術や顧客との関係性。
それらは日常の中では“当たり前”となり、見えにくくなりがちです。
しかし、その価値に改めて光を当て、自身のアイデアや挑戦を掛け合わせたとき、そこから生まれるのは、単なる新規事業ではなく「必然性を持ったイノベーション」になり得るのです。
アトツギはすでに「地域に根を張った事業基盤」を持っています。
ゼロから起業するのではなく、既存の“価値ある資産”をどう活かし、磨き直すか。この視点こそ、アトツギの最大の武器になり得ます。現在、経済産業省のアトツギ支援施策の一環として、北海道・札幌で展開されている「アトツギカレッジ」の企画運営に関わりながら、意欲あるアトツギたちの伴走支援を行っていますが、そこで大切にしているのもこの視点です。
自社の「価値」とは何か。それをどう再編集すれば、時代に合ったイノベーションになるのか。
そしてそれを、どう伝えれば「共感」が生まれ、広がっていくのか。
この三つを「一貫して考える力」こそ、アトツギたちの成長を促す軸になると考えています。
M&A時代にこそ問われるアトツギ支援の価値
近年、事業承継の文脈では「親族外承継」や「M&A」がクローズアップされる機会が増えています。
後継者不在という現実に向き合ううえで、これらは重要な選択肢であり、私自身もその必要性と意義を強く感じています。
一方で、その議論が前に出るほど、「親族内で事業を引き継ぐアトツギ」の存在が、どこか当たり前のものとして扱われ、十分な支援や注目を受けていないのではないかと感じることも少なくありません。
親族承継は、決して「時代遅れ」でも「消極的な選択」でもありません。
むしろ、長年にわたって培われた価値や文化を最も深く理解し、そこに新しい発想や挑戦を重ねることができる、イノベーションと非常に親和性の高い承継形態だと思います。
「どの形で引き継ぐか」を支援することももちろん重要ですが、「引き継いだあと、どう進化させるか」にもっと支援の目が向けられるべきではと感じています。
アトツギの「問い」に向き合い、生まれる共創
では、アトツギをどう支援すればよいのでしょうか。
多くの人がまず思い浮かべるのは「補助金」や「融資」かもしれません。
もちろん、それらも重要です。
しかし私が現場で感じているのは、それ以上に必要なのは「伴走」だということです。
事業の価値を一緒に掘り起こすこと。
経営者としての迷いや葛藤を言語化すること。
数字だけでなく「物語」として事業を再構築すること。
孤独になりがちな意思決定のプロセスに寄り添うこと。
アトツギたちが求めているのは、「答え」ではなく「共に考えてくれる存在」です。
近年、アトツギ支援の現場で特に重要視されているのが「メンター」の存在です。
国の施策においても、地域でイノベーションを起こし続けてきた先輩経営者たち、特に自身もアトツギであった経営者たちが、後進のアトツギを支えるメンターとして関わる仕組みが整えられつつあります。メンターは、自身の経験と愛情をもって、アトツギの「問い」に向き合い続ける応援者です。
私自身もメンターとしてアトツギたちと関わるなかで、彼らの真摯な姿勢と囚われない発想に、こちらが刺激を受ける場面が少なくありません。時にそこから、事業連携が生まれたり、新たなパートナーシップが芽吹いたりすることもあります。
アトツギ支援は今、一方通行の「支援」ではなく、世代や立場を超えた「共創の場」へと進化し始めているように感じます。
「地域課題」解決の糸口となるアトツギの成長
アトツギの支援と成長が重要なのは、彼らが地域課題の解決を導くキーパーソンだからでもあります。
人材不足、空き家問題、地域の魅力づくり、物流の効率化など、地域課題の多くは、実は事業の課題と地続きです。
アトツギが事業を進化させることは、そのまま地域の課題解決と価値創出につながっていきます。
つまり、アトツギ支援とは「企業支援」であると同時に「地域政策」でもあるのです。
まずは、身近にきっといる地域の「アトツギ」たちと向き合い、対話してみませんか?
地域と自身の未来への糸口が、見えてくるかもしれません。
※「アトツギ」は一般社団法人ベンチャー型事業承継(https://take-over.jp/)の登録商標です。
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