「社長、本当に指示しましたか?」その一言が言えない組織の危うさ
急増するビジネス詐欺から、会社と社員の「絆」を守るために
メールやチャットツールは、今や私たちの仕事に欠かせないインフラです。スピーディーな意思決定、場所を選ばないコミュニケーション。しかし、その便利さの裏側で、企業を狙う悪質な罠が急増していることをご存じでしょうか。
実在する経営者の名前や顔写真を巧みに使い、従業員を信じ込ませて資金を振り込ませる。「ビジネスメール詐欺」や「なりすまし詐欺」と呼ばれる手口です。
決して対岸の火事ではありません。実は、みらいコンサルティンググループのお客さまの中にも、こうした被害に遭われた企業がございます。 今回は、この卑劣な犯罪から会社を守るために、経営者や管理職の皆さまにどうしてもお伝えしたい「3つの防衛策」について考えます。
奪われるのは「お金」だけではない
この詐欺の恐ろしいところは、被害が金銭的な損失だけにとどまらない点です。
ある日突然、社長のアイコンが表示されたチャットから、「極秘案件だ。至急、この口座に振り込んでほしい」と指示が来る。担当者は社長からの特命だと思い、使命感に駆られて急いで送金手続きをする。 しかし、それは詐欺だった――。
後になって事実が発覚したとき、社内には重苦しい空気が流れます。 経営者は「なぜ確認しなかったんだ」と担当者を責めるかもしれません。一方で担当者は「社長の指示だから最優先で動いたのに」とやり場のない思いを抱きます。 結果として、経営者と社員の信頼関係に亀裂が入ってしまう。この「組織の断絶」こそが、金銭被害以上に深刻な二次被害なのです。
特に、トップダウンの指揮命令系統が強い中小企業ほど、狙い撃ちにされやすい傾向にあります。「社長の言うことは絶対」「口答えは許されない」という空気を、犯罪者たちは鋭く嗅ぎ取っているのです。
では、どうすればこの見えない攻撃を防げるのでしょうか。本質的な対策は3つあります。
1. 手口を知る(リテラシーの向上)
ひとつめは、基本中の基本ですが「敵を知ること」です。 「文面が少し不自然ではないか」「送金先がいつもと違わないか」「緊急性を過度にあおっていないか」。 こうした典型的な手口を、研修や社内アナウンスを通じて全社員で共有することは欠かせません。
しかし、生成AIなどの技術進化により、詐欺の手口はますます巧妙になっています。もはや「怪しいメールを見抜く」という個人の注意力だけに頼る防衛策には、限界がきているのも事実です。
2. 「仕組み」で守る(ガバナンスの再構築)
そこで重要になるふたつめの対策が、物理的に不正ができない「仕組み」を作ることです。いわゆる内部管理体制(ガバナンス)の強化です。
たとえば、「一定額以上の送金をおこなう際は、必ず担当者と承認者の2名以上で確認をおこなう」「振込先の登録変更は、書面での決裁を必須とする」といったルールを徹底することです。 たとえ社長からの「至急」という指示であっても、このルールは例外としないことが重要です。
「面倒くさい」と感じるかもしれません。しかし、この強固なプロセスがあることによって、万が一担当者が騙されそうになっても、別の誰かが「これ、おかしくない?」とブレーキをかけることができます。 厳格なルールは、社員を縛るためのものではなく、社員を犯罪の片棒を担がされるリスクから守るための「防波堤」なのです。
3. 「確認できる」空気を作る(心理的安全性の確保)
そして、みっつめの対策。これこそが最も本質的であり、かつ最も難しい課題かもしれません。 それは、組織の「心理的安全性」を高めることです。
被害に遭ってしまった社員の方には、決して悪意があったわけではありません。「社長の役に立ちたい」「会社のために迅速に動きたい」という善意があったはずです。 それなのに、なぜ騙されてしまったのか。 それは、「念のため、社長に電話で確認してみよう」というアクションが取れなかったからです。あるいは、「そんなことを聞いたら怒られるかもしれない」「無能だと思われるかもしれない」という心理的なブレーキがかかってしまったからではないでしょうか。
もし、日頃から「何か変だと思ったら、いつでも社長に直接聞いていい」「疑問を口にすることは歓迎される」という関係性が築かれていたらどうでしょうか。 「社長、チャットで送金指示をされましたか?」 そのたった一本の電話、たった一言の確認があれば、数百万、数千万という被害は未然に防げたはずなのです。
絆の強さが、最強のセキュリティ
システムやルールを整えることはもちろん大切です。しかし、最後の最後で会社を守るのは、人と人とのコミュニケーションであり、信頼関係です。
「うちは大丈夫だろうか?」 そう不安を感じられた経営者さまは、ぜひ一度、社内の風景を見渡してみてください。 社員の皆さんは、あなたが違和感のある指示を出したとき、遠慮なく「社長、ちょっといいですか?」と声をかけてくれるでしょうか。
みらいコンサルティンググループでは、規程の見直しやチェック体制の構築といった「ハード面」の支援はもちろん、風通しのよい組織風土づくりや、社員が安心して働ける心理的安全性の醸成といった「ソフト面」のご支援も行っています。
詐欺被害を防ぐための体制づくりは、結果として、会社全体の経営の質を高め、社員との絆を深めることにもつながります。 少しでも不安を感じるようであれば、手遅れになる前に、ぜひ私たちにご相談ください。
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