「職場の空気」は偶然ではないー小さな行動が文化をつくるー
「うちの会社は、なんとなく雰囲気がいいんですよ」 そんな言葉を耳にすることがあります。
ただ、この「なんとなく」は決して偶然ではないと思います。 職場の空気や文化というものは、日々の小さな行動の積み重ねによって静かに、しかし確実に形づくられていくものだからです。
- 朝の挨拶が自然に交わされること
- 困っていそうな人に声をかけられること
- 相談や雑談が気軽にできること
どれも一見すると業務の成果とは関係なさそうにみえます。しかし、実はこうした「日常のふるまい」こそが心理的な安心を生み、結果として仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えています。 人は、安心できる環境だからこそ、本来の力を発揮できるからです。
雰囲気のよい職場には、必ず「理由」があります。 今回は、その理由を紐解きながら、組織の風通しをよくするためのヒントについてお伝えします。
「相談しやすい人」への情報の偏り。そこに潜むリスク
一方で、多くの企業でみられる共通の課題があります。 それは、「相談すべき相手」と「相談しやすい相手」が一致しないということです。
たとえば、本来は一定の判断権限を持つ上司やリーダーに届けられるべき情報が、心理的に距離の近い同僚や先輩へと流れてしまうことがあります。 「忙しそうな〇〇課長より、話しやすい◇◇さんに聞いてみよう」 、これは決して珍しいことではなく、人の自然な傾向といえます。
ただ、この「相談の流れの偏り」が常態化すると、組織としての判断が遅れたり、必要なタイミングで正確な情報が決定権者に届かなかったりするリスクが出てきます。
「話しやすさ」と「判断する力」。双方向からのアプローチ
この課題を解決し、健全な情報の流れを作るためには、2つの視点からのアプローチが必要だと思います。
1. 企業(上司)側の視点:「受容」の空気づくり
まず、相談が届くためには、相談しやすい空気づくりが欠かせません。 「いつ声をかけても大丈夫そう」「話をきちんと受け止めてもらえる」 部下にそう感じさせる「ふるまい」が、日常で積み重なっているかどうかが重要です。
2. 社員側の視点:「情報の届け先」を判断する力
もう一つは、社員一人ひとりの意識です。 組織の一員として、自分が持つ情報が全体にどんな影響を与えるかを理解し、「この情報はどこに渡すことが最も適切か」を考える視点を育てていくことが大切です。 これは、忙しそうな上司に遠慮してしまう気持ちを否定するものではありません。「思い切って踏み込む」ことを強いるのではなく、組織の流れや役割を踏まえ、判断の幅を少しずつ広げていくプロセスが重要になります。
つまり、 企業側が「相談のしやすさ」を整え、社員側が「相談の向き先を判断する力」を身につけていく。この2つが揃って初めて、相談経路は健全に機能するのです。
日常の「ふるまい」こそが、最強の文化をつくる
そして、その土台になるのが、やはり日々の小さな行動です。
- 声をかけられた時に、一度手を止めて余白をもつ
- 困りごとを聞いた際、まず否定せずに耳を傾ける
- ミスを責めるのではなく、事実を一緒に整理する
- 小さな頑張りにも気づき、言葉にして伝える
こうした積み重ねが、「相談してもいい」という安心感を生み、社員の判断力も育まれ、結果的に正しい相手に情報が届きやすくなります。
文化づくりにおいて大切なのは、特別なスローガンや制度ではありません。 日常のふるまいが理念と矛盾しない「一貫性」です。 特に中小企業は、経営者や管理職の影響が職場全体に届きやすいため、リーダーが変われば、文化が変わるスピードも実はとても速いのです。
職場の空気は、偶然にできるものではありません。 挨拶、声のかけ方、聴く姿勢、感謝の言葉。 日々のふるまいを、少しだけ丁寧にすること。それが、中小企業にとってもっとも手軽で、もっとも効果の高い「組織づくりの第一歩」なのだと、私たちは考えています。
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