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2023.09.01
世界を駆ける経営

【深圳レポート】中央経済工作会議とは?2023年度中国経済の先行きは?

【深圳レポート】中央経済工作会議とは?2023年度中国経済の先行きは?…

※本記事は、深圳イノベーションセンター(MICS)会員に限定配信している「MICS NEWS(vol.81)」に掲載されたものです。なお、掲載内容は2022年12月時点の情報です

 

2022年師走に入り、中国における防疫政策は、急展開を迎えた。「新10か条」(PCR検査をしない、健康コードのチェックをしない、陽性になった場合は自宅で休養等)の発表とともに、全国各地で予防対策の調整と最適化が急速に進み、各分野で徐々にコロナ前の生産・生活秩序を戻しつつある。

そんな中、2022年12月16日に閉幕した中央経済工作会議では、2023年の中国経済工作の方向性と段取りが決められ、重要な政策シグナルが数多く発表された。

中央経済工作会議とは、中国政府が翌年の経済運営方針を決める重要会議であり、非公開セッションで、中央首脳部により1年間の経済実績の総括、国内外における経済状況の変化への対応などを話し合うことになる。特に成長目標やインフラ事業などへの財政支出拡大、追加金融緩和の可能性についての政策など発表され、特に国内外から注目を受けている。

15、16日に開催された中央経済工作会議では、2023年の経済政策運営方針を「穏中求進(安定的な発展の追求)」と定め、経済の安定を優先させる方針を特記している。防疫措置と経済・社会の発展の両立を目指して、「積極」的な財政政策と「穏健」的な金融政策を継続することが再度確認された。財政・金融政策による景気下支えを優先し、ゼロコロナ政策で低迷する経済活動の正常化を政策的に推進することが示唆されている。

 

一、「三重苦」を見極める新たな挑戦を明確

会議では、現在の経済情勢として、国内経済の回復基盤はまだ強固な状態ではなく、「需要縮小」、「供給ショック」、「期待薄」の三重苦に直面しているとしている。また、不安定な外部環境と相まって、経済・社会のリスクポイントがまだ多く存在することが指摘された。

中国経済が直面している「三重苦」は、どのようなものであるか。

まず、各国の中央銀行が景気刺激策としての「金融緩和」から、金融引締政策に移行していて、世界経済の成長モメンタムは後退局面に入っているともいえる。今後も海外から外需は減速される見込みであり、中国の輸出貿易も一定の影響を受けると思われる。

次に、中国実体経済の困窮は、現在の国内消費の低迷と投資の伸び悩みにも表れている。 新型コロナ感染症の影響と相まって、近年、一部の地域や都市の企業が操業停止や生産中止などの影響を受け、一部の住民の所得増加は鈍化した。企業の収益も落ち込み、消費回復への圧力が大きくなっている。

三つ目は、生産能力の過剰や不動産バブルの悪影響も無視できない。 高いレバレッジをかけての住宅購入に伴う不動産の過剰需要は経済発展に深刻な後遺症をもたらした。近年、中央高層部による不動産領域への厳しい規制により、関連分野の成長は大幅に縮小し、投資意欲も抑制されている。

総合的に見ると、現在の世界全般における貿易情勢は楽観できず、中国経済が直面している「三重苦」も短期間ですぐには解決できず、経済全体の回復はまだかなりの難題を伴うことになるであろう。

 

二、総合的なブレークスルーを実現するための複合的な取り組み

現状を踏まえて、どのように「難題を突破」し、景気回復を実現していくか。

会議で出された「答え」は、「5大政策」+「6つの協調」、さらに供給側の構造改革と内需拡大である。

「5大政策」は「財政政策」、「金融政策」、「産業政策」、「科学技術政策」、「社会政策」である。 会議では、2023年には財政政策を緩やかに緩和し、広義のマネーサプライと社会金融規模の成長率を名目経済成長率に合わせて維持すると同時に中小企業、科学技術イノベーション、グリーン開発などの分野を支援するとしている。

要するに、2023年のメイントーンは「安定を維持しつつ、進歩を求める」ことである。

「6つの協調」は「疫病の予防と制御」、「経済と社会の発展」、「質と量」、「需要と供給」、「地域と世界」、「国内と国際」、「現在と長期」の6つである。 特に、「疫病の予防と制御、経済・社会の発展」を優先することは、2023年以降、経済・社会秩序の回復を加速させ、経済全体の回復に大きな意味を持つ。

政府側からすると、供給側の構造改革を深化させることは、質の高い経済発展を実現するための唯一の方法であり、経済活動の全プロセスを貫く本筋である。国内外における需要の不足は、現在直面している顕著な問題であるため、次の大きな内需拡大戦略が最優先課題となり、内需拡大するには、消費の潜在力を解放し活性化させる必要がある。

中央経済工作会議は「内需拡大に努める」を優先事項のトップに掲げ、消費が2023年の政策支援の焦点であり、景気回復の主役であることを示している。 消費拡大の方法については、「消費能力の向上」、「消費環境の改善」、「消費シナリオの革新」という3つの重点項目が提示された。

 

総じて、2023年度は景気回復を目的とする、一連の政策の利点が到来するに間違いない。マクロコントロール政策が開始されるに加えて、各業界における親民政策も強化されて、宿泊施設やケータリング、文化観光、交通、実店舗消費などのカテゴリは特に効果的に回復すると見られる。

 

三、不動産市場の安定的な発展を確保

中国の不動産経済は、基盤が大きく、川上から川下までの産業チェーンが長く、カバーする範囲が広いことから、国民経済において重要な位置を占めており、国民経済の重要な柱となる産業の一つである。しかし、2021年以降、不動産投資の成長率は低下し続け、2022年1月から11月までの累積成長率は-19.9%にまで落ち込み、経済成長や金融市場にも大きな影響を与えている。

今回の中央経済工作会議では、「不動産市場の安定的な発展を確保する」「経済・金融の重大なリスクを効果的に防止・解決する」ことを特に強調している。 このことは、不動産市場のリスク解消が2023年の重要な課題であることも示している。

短期的には、「業界再編とM&Aの推進」、「優良なヘッド不動産企業のリスク解消と資産・負債ポジションの改善」、「住宅需要の改善への支援」が焦点となる。中長期的には、不動産に関わる土地・税・金融の基本的な制度を改革・改善し、不動産業界を高負債・高レバレッジ・高回転のモードから脱却させることが究極的な目標であろう。

 

四、2023年の景気動向は、全般的に回復する見込み

2020年から2022年までは「失われた3年」と言われ、疫病の影響に加え、国際環境の激変が経済発展に困難をもたらした。 但し、中国経済は弾力的で有望かつダイナミックであり、長期的なファンダメンタルズは変化していないので、2023年の経済トレンドは自信がもてると専門家達は言っている。

その主な理由は、次の3点があげられる。

第一に、「新10か条」を含む政府側の新型コロナ感染症の防疫対策が経済回復に大きなプラス効果をもたらし、生産と生活の秩序がより早く回復し、経済活力がより早く解放されることである。2023年には、一般市民の生産と生活が着実に回復し、経済と社会の発展状態全体が好循環を実現することであろう。

第二に、2022年に既に導入・実施された税金還付、税制上の優遇措置、金融商品の創設等の需要の拡大や構造最適化を促進するための政策が、2023年も引き続き効果を発揮するであろう。また、来年は実需に応じた新たな政策・施策が次々と導入されることが予想され、いずれも景気回復にプラスに働くと思われる。

第三に、2022年の経済成長率が予想を下回ったことで、客観的には2022年度の経済価値ベースが相対的に低くなっている。来年に経済が正常な成長を再開する限り、来年の経済データ形成に一定のサポート効果を与えることができる。

新しい年に向けて、中央経済工作会議は「旗幟鮮明にして勢いをつける」という基調を打ち出した。

2023年には経済成長の内生的なモメンタムが著しく高まると信じるに足る理由があり、国の経済成長だけでなく、一般の人々にとっても、チャンスと課題の両方を抱えながらの新たなスタートになるに違いない。

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