Regional Transformation地域創生
2022.10.21
農家の明るい未来をつくる~仁木町の挑戦
札幌から車でおよそ1時間のところにある仁木(にき)町を訪問しました。
仁木町は一次産業が盛んな北海道の中でも特に、りんご、さくらんぼ、ぶどうといった果物の産地として知られ、今ではワインの生産でも有名な人口約3,000人の町です。
今回は仁木町の佐藤町長、浜野産業課長、新見企画課長に面談の機会をいただきました。
今回面談を申し込んだのは、某経済紙にて仁木町がこの10年間で法人住民税収がおよそ2倍に増えている、という記事を見たことがきっかけです。面談を申し込んだところ、快く応じていただきました。
お話によると、この期間で法人数は約1.4倍に増えており、その増加の主要因は農家の法人化によるものだそうです。全国的に農業の担い手不足が課題となっていますが、仁木町ではハウス補助や新規就農者に対する研修など、農家の収益力を高めるためのさまざまな支援を通じて、農業の承継や新規就農を促しています。「『農業は稼げない』と思われてしまうとますます担い手不足が進んでしまう。事業として収益を出せるものだと認識してもらうことは承継や新規就農につながる」という町長のお言葉は非常に印象的でした。
また、地元の生産組合の取り組みもあり、従来は果実の生産が中心だったところをミニトマトの生産に比重を移し、現在では仁木町の農業収入のうちおよそ7割をミニトマトが占めているそうです。冒頭で述べたとおり、「仁木といえば果物」というイメージが強かった私にとってはとても驚くお話でした。
ミニトマトは果樹に比べて天候の影響を受けにくく、反収(農地面積10a当たりの収穫高)が米の20~30倍ほどにもなるそうです。また、仁木町のミニトマトは糖度が高く、その品質の高さでブランド化に成功しており、今では東京や福岡にまで行き届いています。
ミニトマトで安定した収益を確保しつつ、最近では再び果樹生産にも注力し、特にワイン産業に力を入れています。隣の余市町と連携して「余市・仁木ワインツーリズムプロジェクト」を進めており、町内の観光地では仁木と余市のワインがずらりと並ぶ光景がありました。
「仁木と余市で後志(しりべし)地方のナパバレーになりたい」という秘めた想いをお持ちで、今後ますますワインのPRに力を入れていくそうです。
町がワイン作りをバックアップしていることもあり、近年はヴィンヤードやワイナリーとしてワイン製造にかかわることを望んで町外から仁木町に移住される方も多く、2013年に6軒だったワイン関連事業者も現在は20軒に増加しています。
佐藤町長に今後10~20年後の仁木町の産業維持・発展のための課題をお聞きしたところ、「町外とのかかわりの場をつくること」を挙げられていました。「すべて町内だけで完結するのではなく、町外の人や企業と積極的にかかわり、それらをマッチングして新しいものを生む環境を整備していくことに力を入れていきたい」とお話しいただきました。
将来を見据えて新しいものから目をそらさずに積極的に受け入れ、変化することは、変わり続ける世の中で価値を創造し続けるために必要なのだと、改めてその大切さを学ばせていただきました。
果実とやすらぎの里-仁木町、皆さまもぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、今回ご対応いただいた佐藤町長、浜野課長、新見課長、仁木町役場の皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。
<執筆者>
北海道地域創生プラットフォーム株式会社(HPR2)
島 幹人