Regional Transformation地域創生
2024.03.05
【深川市長インタビュー】農業でつなぐ地域の未来
みらいコンサルティンググループは、2023年12月、北海道で2拠点目となる旭川サテライトオフィスを開設いたしました。そこで今回は、地域創生の「リアル」と「今」を知るべく、旭川市の隣町である深川市(ふかがわし)の田中昌幸市長にお話を伺いました。
▲深川市役所にて(中央 田中昌幸市長)
深川市は石狩川の恩恵を受けた肥沃な大地と恵まれた気象条件のもと、北海道でも有数の農産地です。近年では、震災や台風などの自然災害の少なさが着目され、『田舎暮らしの本』(宝島社)が発表する「住みたい田舎ベストランキング」では、上位の常連となっており、憧れの移住地といえるのではないでしょうか。
次世代の担い手が築く未来
多くの地方自治体と同様に、深川市においても少子高齢化は進んでいます。しかし、深川市は、基幹産業である「農業」を切り口に、現役世代の移住を促進する、「雇用就農を含めた新規就農支援」という官民一体での取り組みを実施していらっしゃいますのでご紹介します。
2017年、深川市、JAきたそらち、株式会社深川振興公社による共同出資会社、「株式会社深川未来ファーム(以下、未来ファーム)」が設立されました。未来ファームは、就農希望者のワンストップ窓口になるとともに、保有する農場で就農希望者の研修をおこなっています。
就農希望者の意向に合わせ、新規の独立就農や第三者継承、雇用就農といったさまざまな支援プランを用意しています。
特に雇用就農においては、JAきたそらちと連携し、就農希望者と雇用したい法人とのマッチングや、雇用就農の前段階で就農希望者に基礎的なトレーニングを積むための仕組みを整備しています。
このほかにも、深川市の取り組みとして新規就農への経済的支援体制もあります。
就農希望者の研修中の生活費を援助するため、地域おこし協力隊制度を活用し、農業支援員として研修する体制が整備されており、住宅の助成や活動車両の貸与が受けられるなど、就農希望者へのサポート体制としては充実した内容ではないでしょうか。
さらに、受入農家の研修指導に対する助成も措置されており、受入農家の負担を軽減しています。
▲深川市における就農支援のフロー(深川市経済・地域振興部事業内容より筆者作成)
このような就農希望者のニーズ(=お困りごと解決)を捉えたサポート体制を構築をしていくことが地域の農業の担い手減少という課題を解決する糸口となるのでしょうが、この取り組みのポイントは、次の3点と感じます。
①就農希望者が相談しやすい「ワンストップの窓口」がある
②就農希望者の「ニーズにあった研修」を実施し、「受け入れ農家の負担を軽減」している
③研修中の就農希望者に対する「経済的支援」が充実している
この取り組みは、今後の農業の未来を創造するモデルケースになるのではないでしょうか。
▲深川市の暮らしや魅力がイメージできる情報誌の数々
インタビューを終えて
田中市長は深川市役所職員から市議会議員を経て、市長に就任されたご経歴とのこと。過去から「広域との連携」を強く意識されており、深川市だけが発展することは望んでおらず、「近隣の地区へ歩み寄り、協力しながら他の市町村と一緒に深川市を活気付けたい」という言葉が非常に印象的でした。
また、「日本一といえる素晴らしい土地」とインタビューの終盤でもお話をされていたように、深川市はお米のほかにも、蕎麦(生産量全国2位)、りんごをはじめとする果樹や切り花の日本有数の産地でもあります。田中市長の自信あふれるお言葉には、力強さと農業を通じたまちおこしをするという使命感を感じ、いつの間にか深川市の豊かさに魅了されました。
最後に、インタビューにご協力いただいた田中市長、深川市役所の皆さま、貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
▲「道の駅 ライスランドふかがわ」にて。田中市長によると、産地が限定されている特A米「ゆめぴりか」「ふっくりんこ」「ななつぼし」の3つのブランド米が同時に生産できる栽培環境は大変珍しいそうです。
参考
深川未来ファーム
<執筆者>
北海道地域創生プラットフォーム株式会社(HPR2)
小川 博也