みらい経営者 ONLINE

経営課題の発見・解決に役立つ情報サイト

みらい経営者 ONLINE

  1. <糸島>世界第3位の「輝く小さな街」 糸島市から学ぶ「バランス感覚」

Workcationワーケーション実施事例

<糸島>世界第3位の「輝く小さな街」 糸島市から学ぶ「バランス感覚」…

2023.03.07

<糸島>世界第3位の「輝く小さな街」 糸島市から学ぶ「バランス感覚」

今回、ワーケーションプログラムの一環で福岡県糸島市を訪問してきました。糸島市の人口は約10万3,000人、福岡市の西側に隣接しており、博多から電車で40分程度の距離にあります。イギリスの情報誌「MONOCLE(モノクル)」が実施した『輝く小さな街(Brightlights, small city)』の2021年ランキングで、世界3位に選ばれたことで有名です。同誌には「糸島市は豊かな自然が残り、サーフィンやハイキングスポットがあり、また海の幸や農産物が豊富でありながら、都市への交通アクセスが良く質の高い生活を満喫できる」、さらに「コミュニティ意識が強く、市外から入って来た人に寛容で馴染みやすい」、「クリエイティブな人々が集まり面白いビジネスが生まれている」と記されています。また、糸島市には九州大学伊都キャンパスがあり、産学金官が連携したまちづくりをおこなう「糸島サイエンス・ヴィレッジ構想」が進行中です。みらいコンサルティングが目指す地域創生のヒントを得るべく、糸島市役所に取材を申し入れたところ、快諾をいただき、お話を伺うことができました。当日は、経済振興部学研都市づくり課サイエンスヴィレッジ推進係の姫野 康隆係長、中村 勇喜主任、経営戦略部企画秘書課企画調整係の立石 雅弥主任のお三方に応じていただきました。

 

九州大学移転計画とともに進む街づくり

九州大学の伊都キャンパスは元々福岡市内に位置していた複数の学部が移転してできたエリアです。2005年~2018年にかけて段階的に移転が進められ、現在では広大なキャンパスに学生・教授・関係者を含め約18,000名の人々が通っています。実際に訪れてみましたが、自然環境や地形との調和を意識しながらデザインされており、見学するだけでも非常に価値のあるスポットだと感じました。

▲九州大学伊都キャンパス 272haの敷地は単一キャンパスとしては全国最大級

 

移転により糸島市に若者が増えることは一見よい事象に思えますが、当時、市の担当職員が、環境変化に戸惑う地元住民との対話を粘り強く続けたという話は考えさせられるものがありました。前述の「糸島サイエンス・ヴィレッジ構想」はその過程で、学術研究の社会実装を図りたい大学側と、卒業後の働き口を提供したい糸島市側の思惑が一致し、民間企業や金融機関を巻き込み、立ち上がったものです。糸島市としても、2010年の1市2町合併後、これまで観光PR(実際に非日常感を味わえるスポットがたくさんあります)に力点を置いていた方針に加え、定住促進に拡大。暮らすことのブランド化を推し進めていきました。その結果、2016年を境に人口は増加へ転じ、今では毎年過去最高人口記録を更新し続けているという話は驚きです。

 

非常に良いことづくめな話なのですが、課題がゼロというわけではありません。少子高齢化は糸島市も例外ではなく、中心部に人口は流入する一方で、中山間地や沿岸部の生活圏をどのように持続させていくのかという課題には頭を悩ませているとのことでした。また、一次産業が主体(多様な蔬菜や花卉が印象的)であり、高齢化が進む農家の承継問題についても、県やJA糸島と協力しながら対策を続けているとおっしゃっていました。

▲JA産直市場の伊都菜彩 同産直市場の中で全国トップクラスの売上高とか

 

膨張ではない成長を目指す

インタビューで特に印象的だったのは「人口が増えればすべてよし、というわけではありません。今は10万4千人くらいの人口規模が市にとって丁度よい規模感だと考えています。」というお話でした。元々生活をしていた住民、新しく移住をしてきた住民、大学、産業、自然環境など、様々なステークホルダーの調和をとることが市の役割であり、その結果「住み続けたくなる街づくり」が出来るのがよいと考えているとおっしゃっていました。

インタビュー中の様子(わかりやすいスライド資料をご準備いただきました)

 

持続可能性を高めるバランス感覚

今回のインタビューを通じて、改めて「バランス感覚」の大切さを実感しました。街の持続可能性を高めるために、ステークホルダーを尊重し、必要なピースを揃え、指標を定め、強みや機会を意識しながら一歩ずつ進んでいくその姿は企業経営に重なるところが多分にあるように感じます。もちろん、「尖り」を持つことは重要ですし、調整に終始せず、時には思い切った「判断」を下すことも必要です。ここでお伝えしたい「バランス感覚」はそれと相反するものではなく、その前提となる世界観であり、言い方を変えると、ビジョン、パーパスという表現になるのかもしれません。そういった「バランス感覚=世界観」があるからこそ、それぞれのアクションがどちらに寄っているのかの判断ができ、寄っていることがわかっているからこそ、いざという時に元に戻ってくることができるのだと思います。起き上がり小法師のような軸を持つことが、企業経営においても、都市経営においても持続可能性を高めることにつながる、このような気付きを得ることができました。

 

最後になりますが、お忙しい中ご丁寧にインタビューに応じていただきました姫野係長、中村主任、立石主任、糸島市役所の皆さま、本当にありがとうございました。

▲左から中村主任、姫野係長、立石主任

PREV
<広島>ものづくりの町
NEXT
<松江>「ごえんの国しまね」訪問記

ページトップへ