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8tipsリスクに備える経営

2020.10.28
リスクに備える経営

速報!最高裁判例からみる「同一労働同一賃金」のポイント – Q&A –

速報!最高裁判例からみる「同一労働同一賃金」のポイント - Q&A -…

【ご利用にあたっての留意事項】

このQ&Aは、2020年10月21日に開催したウェビナーで寄せられたご質問に対する回答を公開するものです。 ただしこのQ&Aは一般的解釈であり、個別状況に応じたものではありません。当該Q&Aの利用によって生じた、いかなるトラブル・損害等について、当社は一切の責任を負わないものとします。

また、当該解釈は掲載日時点(2020年10月28日)における法令、指針(ガイドライン)、判例等をもとに作成しています。今後、法改正や新たな指針の公表、別の事件の判決によって内容を変更する場合があります。

<Q&A>

同一労働同一賃金という観点からは、定年再雇用者と有期雇用労働者とは、必ずしも同等に扱う必要はないとの理解で良いか?

はい、定年再雇用者と有期雇用労働者とは、必ずしも同等の労働条件である必要はありません。以下のように考えることもできるため、すべての労働条件の違いについて合理性が認められない可能性はありますが、定年再雇用という「その他の事情」も加味されるものと考えます。

1.正社員と定年再雇用者の間で均等・均衡待遇が求められる
2.正社員と有期雇用労働者(定年再雇用者以外)の間で均等・均衡待遇が求められる
3.結果(間接的に)定年再雇用者と有期雇用労働者の間で均等・均衡待遇となる
※ 定年再雇用者は有期雇用であるという前提です

当社では、正社員の夏期休暇・年末年始休暇は、特別休暇ではなく年間休日に含まれている。このような場合、有期雇用労働者については、当該日を休日として取り扱うべきか?
(有期雇用労働者は日給者のため、営業休日日となる当該日は必然的に業務がなく休み=無給となっている)

正社員ならびに有期雇用労働者いずれも営業休日日を「休日」として取り扱うことは(当該休日に対する呼称の違いがあったとしても)特段問題はないと考えます。

当社は退職金を中退共(中小企業退職金共済)で定額で運用しているが、その場合は永年勤続的な要素が強くなる気がするので、不合理とされる確率は高いか?

中退共で「加入させなくてもよい従業員」の範囲が以下のように決まっており、現行法下における同制度利用において、下記に該当する労働者を適用除外とすることは「その他の事情」として認められる可能性が高いと考えます。

1.期間を定めて雇用される者
2.短時間労働者
3.その他(試用期間中の者、休職期間中の者など)

日本郵便(大阪)の扶養手当に関する判決文「相応に継続的な勤務が見込まれる」という部分について、相応な期間とは無期転換権発生要件である「5年」を一つの基準として考えて良いか?

絶対的な基準ではないですが、一つの基準とすることは可能と考えます。
ただし、「5年を経過したこと」ではなく「5年の契約(更新)の見込みがあること」を前提とするならば、契約更新の上限に関する合意がない限り、初回の契約当初から当該前提条件(基準)に該当する可能性が高いと考えます。

契約労働者でも、有期雇用労働者と無期雇用労働者の間で、均衡待遇論が発生する可能性はあるか(有期・無期は無視して同一処遇で問題ないか)?

本問でいう無期雇用労働者とは正社員以外の無期雇用労働者(無期転換労働者など)を指していると推察します。当該無期雇用労働者と有期雇用労働者について、必ずしも同等の労働条件である必要はありませんが、以下のように考えることもできるため、すべての労働条件の違いについて合理性が認められない可能性はあります。

1.正社員と無期雇用労働者の間で均等・均衡待遇が求められる
2.正社員と有期雇用労働者の間で均等・均衡待遇が求められる
3.結果(間接的に)無期雇用労働者と有期雇用労働者の間で均等・均衡待遇となる

なお、同一労働である、無期雇用労働者と有期雇用労働者について、雇用期間以外の労働条件を同一とすること自体は問題ないですが、いずれも正社員と比較した場合に、均等・均衡待遇がなされているか、その合理性が問われます。

当社では有期雇用労働者から正社員への登用制度はあるが、有期雇用労働者が自由に応募できるものではなく、高評価の労働者を役職者が選抜して推薦する方式。このような方式でも、メトロコマース最高裁判決のその他要素のように、会社有利な要素となりえるか?

合理性を肯定する要素になりえると考えます。評価要素(推薦基準)が公表されており、有期雇用労働者に対して公平機会が与えられていると客観的にも認められる状況であれば、なお良いと考えます。

当社では「積立保存休暇」という制度があり、2年間で使い切らなかった年次有給休暇を最大5年間45日保存できるようになっている(私傷病で30日以上の療養が必要になった場合に利用できる。有給、勤続期間不算入)。
今回の判決で病気休暇とあるが、これも同様に考慮すべきか?
(現在は正社員および定年再雇用者が利用できる制度であり、アルバイトには制度がない)

アルバイトについても長期雇用が見込まれる場合、考慮はすべきと考えます。ただし、所定労働日数(時間数)などに応じて差を設けることは可能と考えます(均衡待遇)。

当社のアルバイトは時給1,300円で交通費を含んだ支給であるとして交通費の支払いをしていない。この場合、個々人により交通手段や距離が違うため明確化する必要があると考えている。時給1,300円の内○○円が交通費というように実費相当分を明記すれば事足りるか?

ご質問のような「内訳」の変更を行った場合、同一の業務に従事するアルバイト間での時給単価の差異の発生(あるいは最低賃金への抵触の可能性)、割増賃金計算や所得税計算の対応が必要となるなど、組織および制度全体への影響も考慮して決定する必要があると考えます。

当社では、正社員には「皆勤手当」を支給しているが、アルバイトには対象外としている。責任の範囲が違うので労働者15,000円/月をアルバイト5,000円/月くらいにしたいと考えている。この格差は許される範囲か?

「責任の範囲が異なる」ということですので、正社員とアルバイトの間に処遇差を設けること自体は検討の余地があります。ただし、皆勤手当は一般的に、該当業務に従事する者を一定数確保するため皆勤を奨励するために支給するものであり、「遅刻、早退、欠勤の有無(程度)」によって支給の有無を決定することが多く、「責任の範囲」よりも「所定労働日(時間)」の差によって、処遇差を設けるほうが合理性が高まると考えます。
「10,000円の差」の合理性については、根拠を確証できないため、回答を差し控えます。

当社では、永年勤続褒賞として、正社員には5年勤続50,000円、25年勤続100,000円を支給している。アルバイトにも目的が同じであれば支給しなくてはならないか?

「長期勤続への功労、報償」という目的であれば、正社員と同期間勤続したアルバイトにも支給すべき、と考えるのは自然です。一方で、正社員へは、常に業務や責任範囲の拡大等を求めているであろうことから(アルバイトは単純業務の繰り返しを想定)、必ずしも同等の処遇である必要はないと考えます。

当社では、従業員に夏期休暇を付与しているが、有給・無給と処遇に違いがある。半期に一度契約更新をしている有期雇用労働者に対しては無給としているが、正社員同様に有給の休暇として与えるべきか?

同一労働同一賃金ガイドラインにおいて「法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)であって、勤続期間に応じて取得を認めているものについて、正社員と同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)を付与しなければならない」とされています。例えば、所定労働日数が同等の場合、契約期間にかかわらず付与する季節的休暇について、正社員は有給、非正規社員は無給とすることは、合理性の立証が難しいと考えます。

当社では、夏期・冬期休暇以外の慶弔に関する特別休暇について、正社員のみの付与としている。このような種類の特別休暇についても雇用形態に関わらず同じように付与することを検討すべきか?

慶弔休暇のような、業務との関係性の薄い処遇については、格差合理性を立証することが難しい事が多く、検討は必要と考えます。ただし、所定労働日(時間)等の差によって、付与日数に差を設けることは合理性があると考えます。

賞与の支給について、学生アルバイトのように就業期限が見えている(1年契約で数年の契約更新あり、卒業まで就業)場合にそれを理由として賞与の支給を行わないことに合理性はあると考えられるか?

同一労働同一賃金ガイドラインにおいて「賞与が会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、貢献に応じた部分につき、正社員と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない」とされています。

賞与は多くの場合、過去の一定期間の業績に対する功労として支給され、将来に向けての勤続期間が加味されない場合が多いと考えます。この前提のみを考慮すれば、「就業期限が見えている」からといって、アルバイトは賞与不支給とすることは不合理です。

一方、今回の最高裁判例(大阪医科大学事件)において、そもそもの業務の差異が賞与有無の合理性を認めており、業務の内容や責任の程度により不支給とすることも可能と考えます。なお、それらを立証するため、就業規則や雇用契約書、人事制度(賞与決定ルール)などの整備が肝要です。

非正規に支給するとしても、責任の重さなどはどう評価すべきか?

ご質問の支給項目が不明ですが、まずは雇用契約上の「業務内容」によります。その他、裁量権限やワークフロー(該当業務の責任の範囲。例えば決裁権限は誰にあるか、クレーム処理は誰が当たるか、など)、人事評価制度(同じ業務に従事していたとしても、正社員に求めるもの、非正規社員に求めるもの)などによって、「責任の重さ」の客観性が高まると考えます。

当社では、正社員と有期契約労働者(1年毎、ほぼ全員が更新)での業務内容には大きな違いがないものの、有期契約労働者は勤務日数や時間・曜日について、本人の希望を考慮したものになっている。そのためこれまでは夏季休暇等の特別休暇を付与していませんが、今回の判例からすると付与していないことは不合理であり、付与しなければならない、という理解で正しいか?

勤務日数や時間・曜日について、本人の希望を考慮したものになっている場合、必ずしも付与しないことが不合理とはならないと考えます。特別休暇がフルタイム(週5日を想定)労働者へのリフレッシュを目的としている場合(連続した休暇取得による)、もともと所定労働日・時間が短かったり、労働日を自由に設定できたりするフルタイム以外の労働者に対して、所定労働日数(時間数)などに応じて付与日数に差を設けることは可能と考えます(均衡待遇)。

勤務する事業場に応じて支給する「地域手当」について、非正規社員には支給していないが、不合理と解されるか?

例えば、以下のような場合は合理性があると解される可能性があると考えます。

1.正社員には拠点間異動があり、地域手当は、その際の物価格差解消を目的としている
2.非正規社員の時給単価について、地域ごとの最低賃金などによって差を設けている

当社の場合、正社員とパートタイム労働者で責任範囲が個々により異なる(パートタイム労働者でも正社員と同様の業務内容をしている者もいれば、一部の定型作業のみを担当している者もいる)。そのような場合の考え方については、個別判断となるのか。

ご質問のようなケースの場合、雇用区分のみならず個別の事情も加味されるものと考えます。

当社では、転換制度については、明文化されていないが、口頭で打診をして受け付けている。転換制度があるという認識でよろしいのか。

転換制度があることは事実ではあるものの、パートタイム・有期雇用労働法第13条に基づき、明文化されていたほうが望ましいと考えます。

法改正当初に、別のセミナーで均衡待遇において「将来、正社員登用の機会がある」という理由は、正社員と有期雇用労働者との待遇差の理由にならないとの説明を受けた。
当社は正社員登用の機会を所定の要件により設けているが、今回の判例により、処遇格差の理由として認められるという認識でよいか。

必ずしも直接的に処遇格差の合理的理由とはならないまでも、今般の最高裁判例から正社員転換制度の有無が「その他の事情」として加味される可能性は高いです。あるいは正社員と有期雇用労働者それぞれに求められる職務遂行能力の差などを弁証する根拠にもなりえるかと考えます。

しかしながら、正社員転換制度があったとしても、正社員と有期雇用労働者の職務内容や責任の程度等が同等であれば(同一労働と判断されれば)、正社員転換制度の有無のみをもってして処遇格差の合理性を求めることは難しいとも考えます。

諸手当の支給有無が不合理になる点について、当社では「長期雇用をみこした手当」という理由をあげている。1年契約の有期雇用労働者が結果的に更新を続けたことにより長期雇用となっている場合、どの時点で判断すべきか。あるいは、季節雇用でなければ次回更新の有無に関わらず、支給対象とするべきか。

その手当の支給目的や性質によるため一概には言えませんが、正社員を対象とするある手当について「長期勤続への期待」を支給目的とするのであれば、有期雇用労働者に対しても長期勤続の「見込み」が期待される時点で支給すべき、と解釈できます。

つまり「結果的に(複数回)更新された時点」ではなく、有期契約について更新回数等の雇用上限が設けられていないのであれば、最初の契約開始時点において「相応の長期勤続の見込みあり」と判断される可能性もあるということです(雇用上限を設けたとして、3年なら良いか、5年なら良いか、という具体的期間は今回の判例においても具体的には示されていません)。

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