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8tipsリスクに備える経営

2020.12.14
リスクに備える経営

<事例ファイル> 製造現場の技術承継問題【食品製造業】

<事例ファイル> 製造現場の技術承継問題【食品製造業】…

早朝、和菓子メーカーであるB社社長の携帯電話に一報が飛び込びました。
「社長、工場長が緊急入院しました。最低でも半年間は、出社は見込めない様子です。」
創業50年。長年守られ、多くの取引先に支持されてきたB社の「伝統の味」は、たったひとりの工場長の不在で危機に陥りました。

一部の人間が技術を抱え込む「リスク」

B社は大手流通チェーンや土産店へ、和菓子を中心に製造卸をおこなっていますが、「工場長不在」以前から、製造ノウハウの承継に課題を抱えていました。

背景には、10年前にB社が陥った経営危機がありました。新規採用を数年間見送ったため、社員の年齢構成がアンバランスとなり、中間層が手薄の状態になっていたのです。また、昨今の人手不足の影響で、工場人員の「引き抜き」による入れ替わりも頻出、製造工程全体を俯瞰できる人材が不足していました。

そのようななかでおこった、製造の「要」である工場長の急病で、工場全体は混乱に陥ったのです。その当時、工場の全工程を把握していたのは工場長のみで、工場の一人一人が「どの作業がどの程度できて、何ができないのか」全社で把握できていない状況でしたからそれも当然です。

その影響は、製造現場の混乱にとどまらず、納期の遅れ、残業の頻出、取引先から味が変わったというクレームにまで発生してしまいました。

 

解決の打ち手

STEP1:「技術力量一覧表」の作成

最初の打ち手として、製造工程の洗い出しを実施し、和菓子が完成するまでの詳細工程を横軸に、各工程について個人ごとの「技術成熟度」を5段階で縦軸に記載していきました。

サンプル【技術力量一覧表】習熟度を5段階評価(A・B・C・D・E)

これにより、工程全体の把握、どの工程の人員強化が必要かが一目瞭然となります。

STEP2:技術補強策の検討と人事評価制度への展開

次に、上記の技術力量一覧表を活用し、どの工程の強化が急務か検討していきます。個人面談を実施し、各工程の技術習熟度の把握と一人一人にいつまでに、どの程度の技術習熟度を会社として期待するか、というすり合わせをおこないました。

また、その習熟度の達成度合いを人事評価制度に組み入れ、半期ごとの給与査定に組み込みました。

 

 総括

他の業界と同様、食品製造業界においても、バブル経済崩壊やリーマンショックといったさまざまな外部環境要因による採用抑制で、現場の年齢構成のアンバランスが多く見受けられると思います。

伝統の味を守る、伝統の技術を守る、この観点から会社にあるノウハウや人員を棚卸しし、戦略的に技術承継を実施していくことが肝要ではないでしょうか。

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