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8tips社員が幸せな経営

2019.10.18
社員が幸せな経営

加入要件改正となった社会保険。事業主にとってのメリットは?

加入要件改正となった社会保険。事業主にとってのメリットは?…

(写真=画像素材:PIXTA)

2016年10月より、社会保険の加入対象が拡大しました。社会保険の対象の拡大と聞くと、事業主の方は「保険料の負担が大きくなる」と思われるかもしれません。しかし、本件は加入者のみならず、事業主にもメリットがあるのです。

社会保険とは

社会保険とは、「広く国民に安定した生活を保障するもの」を目的とし、公的責任で生活を支える給付を行うものです。広義には、厚生年金保険、健康保険、雇用保険、労災保険、介護保険等がありますが、本稿で解説する “加入対象が拡大された社会保険”は、厚生年金保険と健康保険を指します。

短時間労働者の加入対象拡大

2016年10月より、短時間労働者への「厚生年金保険」「健康保険」の適用が拡大されました。以前は「所定労働時間が週30時間」が加入要件でしたが、新たに以下1~5の要件を全て満たす短時間労働者も、加入対象となりました。

1.1週間あたりの労働時間(※1)が20時間以上であること
(※1)残業時間を含まない所定労働時間

2.1ヵ月あたりの賃金(※2)が8万8,000円以上であること
(※2)賞与、残業代、通勤手当等を含まない所定内賃金

3.見込みの雇用期間が1年以上(※3)であること
(※3)1年未満であっても、雇用契約書や就業規則において契約が更新される場合がある旨の記載があれば加入対象

4.学生ではないこと(夜間、通信、定時制の学生は加入対象)

5.以下のいずれかに該当すること
①従業員数501人以上
②従業員数500人以下で、社会保険加入について労使で合意(※4)がなされている

(※4)労使の合意とは、短時間労働者が社会保険に加入することについて、同意対象者(厚生年金保険の被保険者と、上記1~4の要件を全て満たす方々)の2分の1以上の同意を得た上で、事業主が管轄の年金事務所に申出することをいいます。

事業主にとっての社会保険加入のメリットとは

加入者にとってはメリットが大きい社会保険への加入。一方、事業主の方にとっては「保険料の負担が大きい」というマイナスイメージから、社会保険未加入の事業者の方もいるかもしれません。しかし、実は事業主側にもメリットがあるのです。

● 人材確保へのメリット

社会保険に加入できるかどうかは、医療保険の給付、将来貰える年金が増える、等メリットが大きいため、就業者にとって重要なポイントです。そのため、社会保険が完備されているということは“魅力の高い企業”として認識され、求人時の応募数増加・採用率向上につながります。また、企業への信用度も高まり、安心して働けるという印象を持つため、入社後の人材定着率向上にもつながります。

日本年金機構のホームページでは、事業所名称、法人番号等を入力することで全国の事業所の厚生年金保険・健康保険の加入状況を誰でも確認できるようになっています。そのため、就業希望者が応募先企業の加入状況を確認し、応募するかどうかの検討材料にするということもあり得るのです。

有効求人倍率が1.60倍(2018年5月度)と上昇しており、採用難の状況が続いています。コンプライアンスが不足している企業はそれだけで敬遠されがちな風潮にあります。
社会保険に加入し“魅力の高い企業”として認識してもらい、人材確保力を高める必要があるでしょう。

● 従業員の労働生産性向上

「人材確保へのメリット」でも記述した通り、従業員にとって社会保険加入は「会社への信頼」に繋がる大事な制度。もし社会保険が完備されていなかった場合、従業員の士気の低下を招きかねません。

特に健康保険は、労働者が病気や怪我をした際、必要な医療費の給付や手当金を支給することで、労働者の生活を安定させることを目的とした社会保険制度です。つまり結果として、従業員の健康保持につながり、労働生産性が向上すると考えられます。

事業主の役割を今一度見直す

経営に関与する側としては社会保険の加入枠の拡大によって負担増を懸念するかもしれません。しかし事業を営む雇用者としては「利潤の拡大」と「起こり得る危機の回避」という、2つの視点を常に持たねばなりません。社会保険枠の拡大は、リターンの増加には貢献しにくいかもしれません。しかし、例えば被雇用者が業務中に事故や病気で倒れてしまうというような、十二分に起こり得る、大きな危機を未然に回避することにつながります。

また、企業価値としての問題もあります。インターネット上での口コミなどで風評が広がりやすい現代、社会保険未加入であるというだけで、一瞬にしてブランド価値の低下を招きかねません。特に上場企業や今後の上場を考えるようであれば、少々の負担は文字どおりの「保険」として受け止め、早めに加入しておくことで事業としての信用を高めることにもつながるでしょう。

今後も加入対象は拡大する見込み

将来的には、さらに社会保険の加入対象は広がっていきます(法律で、2019年9月までにさらなる拡大を検討することが決まっています)。社会保険加入は単なるコスト負担ではなく“メリット”ととらえることが大切です。社会保険に未加入の事業主の方はぜひ社会保険に加入することをお勧めします。

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