8tips社員が幸せな経営
エンゲージメントの「鍵」となる「WILL CAN MUST」
企業からの相談で最近もっとも多いのが、「人が採用できない」「若手が定着しない」など、いわゆる「人手不足」のテーマです。仕事の需要はあるのに、従業員が採用できないことによる「人手不足倒産」も今後増えると予測されているのもご承知のとおりかと思います。そのような「人手不足」が日常となる時代において、注目されてきているキーワードの一つが「エンゲージメント」です。
エンゲージメント施策を取り組む前に!
「エンゲージメント」とは、さまざまな場面で使われますが、一般的には「会社と従業員との深いつながり」を意味します。
言い換えると、「会社と従業員が『両想い』になっている関係」とでもいうのでしょうか。
最近では、IT企業など成長企業を中心に「エンゲージメント経営」を標榜して、たとえば「心理的安全性の確保」「1on1の継続実施」「エンゲージメント指数の見える化」といった具体的な施策を実施している企業も増えています。
ただ、このようなエンゲージメント施策は、売上アップやコスト改善の施策と異なり、「効果がはっきりと見えない」ため、経営者、特に人材とコストに制約がある中小企業にとっては取り組み辛い分野になります。
そこで、大きなエンゲージメント施策の取り組みをする前に、おススメしたいのが
「WILL CAN MUST」です。
「WILL CAN MUST」とはリクルートが広めたといわれるフレームワークで、
①WILL 自分がやりたいこと・達成したいこと
②CAN 自分のできること・スキル
③MUST 自分がやらなければならないこと・会社の目標・会社からの期待
この3つの輪が重なるところが拡がっていくと「働きがい」が高まるといわれています。
▲この3つの接点が重なるところで仕事をすると「働きがい」が高まる
WILL CAN MUSTを活用するポイント!
ところが、現実はそんなにスムーズにいきません。それは、この「WILL CAN MUST」を作成すること自体が従業員の皆様にとっても初めての経験となるため、作成したところで得られる成果の実感が湧かない、ということに起因すると考えられます。
そこで、「WILL CAN MUST」を作成した場合のよくある事例をパターンで整理してみましたのでご参照ください。
パターン①:MUST思考が強い方
長く勤めているベテラン社員や「他人に貢献したい」という気持ちの強い方が「MUST思考」になりやすいといわれてます。
経営者や上司から与えられた業務をきっちりと時間内に対応することが仕事、という思いや、自分よりも他人が喜んでもらうことに喜びを感じる方は、「会社の目標」や「本人への期待」が「WILL(やりたいこと)」と混同してしまうことがよくあります。
具体的には「WILL(やりたいこと)」がわからない、あるいは「MUST」とほぼ同一になってしまうという方です。
「WILL」について「会社の目標」を記載していたら、「MUST思考が強い方」といえると考えられますので、そのような方には、「WILL(自分がやりたいこと)」を表現することの大切さを伝え、自分の人生の中で最も嬉しかったことなどを振り返るなど、「WILL」を考えることからスタートすると効果的です。
ベテランほど与えられたタスクをこなすことが大切で、「WILL」など考えてはいけないと考えがちです。「WILL」を考えることで、仕事に対する価値観を再度考えることができ、ベテランがイキイキと働くようになる可能性もあるのではないでしょうか。
パターン②:WILL思考が強い方
自分のやりたいことが多い、など、比較的若い世代に多いパターンといえます。
「WILL」が強い場合は、「自分のやりたいこと」と「会社で期待されていること」に違いやズレがあることが自覚できず、「自分は頑張っているのに会社が評価してくれない」というように、結果としてモチベーションダウンにつながることがあります。
その理由は「MUST(役割・期待されていること)」がきちんと理解できていないことにありますので、まずは本人に「上司からの期待を言語化させる」と効果があります。
「MUST」と「WILL」の違いを認識させた上で、「どうやったらMUSTとWILL が実現できるのか?」を「1on1」などで対話するといいでしょう。
「WILL思考」の方には「1on1」で継続的に「MUST(会社が期待していること)」を話し続け、「MUSTとWILLの両方を意識させ続ける」ことも効果的です。
パターン③:CAN思考が強い方
成長意欲が高い若手に多く、「スキルを得る=成長」と考えている方が起こしやすいパターンです。
このタイプは、具体的なスキルイメージを持っているため、今後得たいスキルがその会社では得られないと判断すると、退職しやすい、という傾向があります。
対策としては、スキルを「抽象的な強み」に変換することで、「MUST」や「WILL」に重なりやすくしてあげると、会社に対する貢献感が増し、エンゲージメントが高まりやすくなります。
たとえば、単純に「A業務のスキル」を「CAN」と考えると、A業務以外では使えない、という考え方になります。そこで、A業務を通じた本人の「抽象的」な貢献事象、たとえば、「形式的な業務を業務改善し続ける力」といったものを「CAN」と位置づけると、それ自体が違う業務にも役立つ「スキル」となり、組織が期待するその他の業務にも活かせるのではないか、という考え方につながるのです。一歩踏み込んで本質的な貢献価値を考えることで、CANとMUSTの両立が実現していくのがおわかりいただけると思います。
WILL CAN MUSTで働きがいを高める!
「WILL CAN MUST」 は「重なるところを拡げる」というゴールをどうしても意識してしまうため、本来あるべき「3つの要素を洗い出す」ことが軽視されがちです。
一度「3つの要素」をそれぞれ独立したものとして考え、それらを重ねるためにどうしたらいいのか、という順番で考えてみてはいかがでしょうか。
独立して考えるからこそ、その接点は何かを深掘りして考えることに繋がるのです。
別のいい方をすると、「A or B or C」ではなく「A and B and C」にするためにどうしたらいいか、を考えるということになるのですが、そのためには「知恵」が必要となり、この知恵を会社と本人が一緒に考えるプロセスこそがエンゲージメントに繋がるのではないかと考えます。
働きがいを高めるためにも「WILL CAN MUST」を徹底的に活用してみてはいかがでしょうか。
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