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2022.08.03
世界を駆ける経営

【深圳レポート】2021年のダブル11、中国のEコマース競争は新たなステージへ

【深圳レポート】2021年のダブル11、中国のEコマース競争は新たなステージへ…

※本記事は、深圳イノベーションセンター(MICS)会員に限定配信している「MICS NEWS(vol.55)」に掲載されたものです。なお、掲載内容は2021年11月時点の情報です

 

中国のダブル11は、毎年国内外の注目を集め、話題になっている。

今年も各ECプラットフォームの売上は依然として成長し、取引データも記録を更新し、ダブル11ビッグセールは再び中国消費市場の大きな可能性を検証したことになる。

 

ダブル11全般の売上状況

今年のダブル11で ECプラットフォーム全体の売上実績は9651.2億元であり、シェアTop1と2の売上が全体の92.15%を占めている。前年同期比12.22%増加したが、1兆元は突破できなかった。

なお、11月11日当日、全体売上(すべての国内ECプラットフォームを含める)は3146億元に達し、前年同期比5.5%落下した。その主な原因として各大手のECプラットフォームがダブル11のイベント期間を伸ばし、売上を分散させたことによる。

 

ライブコマース : Douyin&Kuaishouが注目集める

11月12日、Douyin(抖音) ECはダブル11統計データを公開していて、10月27日から11月11日まで、Douyin(抖音) ECのライブ配信は累計2546万時間に達し、視聴回数は累計395億回、売上高が1千万を突破したブランドは577もあり、1回のライブ配信での売上高が千万を突破したライブ配信ルームは282個であったと発表した。

EC GMV *は前年同期比224%成長し、各ブランド自社運営のライブ配信 GMVは前年同期比14倍も増加した。

*GMVは売上高のことを指して、支払い済み金額と未払いの金額、物流コストなどが含まれる。

Kuaishou(快手)の「116品質ショッピングセール」の間(10月20日から11月11日まで)、EC店舗ライブ配信量は去年同期と比べ52%増加し、その中でブランド店舗のライブ配信量は前年同期比391%増加した。4000以上のブランド店舗が初めてショッピングセールに参加し、ブランド商品注文量全体は前年同期比350%増加し、GMVは前年同期比433%増加した。

 

越境ECの成績

各大手EC プラットフォームは越境EC業務に注力し、同業務の売上総額は315億元に達した。Tモール国際の越境ECの売上額はTモール全体の約11.66%で、各プラットフォームの中で最高値となっている。京東(JD)国際の越境ECの割合は7.22%であり、VIPSHOP国際とPinduoduo国際はそれぞれ6.29%と0.17%を占めた。

 

大手ECプラットフォームは安定成長

今年Tモールのダブル11の累計売上高は5403億元に達した。前年同期比8.5%増加したが、昨年の前年比は26.1%増だったことからも、明らかに成長率が下がった結果となった。売上高が百万級を超えて、千万級へ成長した中小EC店舗は698軒あり、売上額1億元を突破したブランドは78もあった。

京東(JD)のダブル11の累計売上高は3491億元に達し、前年同期比28.6%増加している。去年の32.8%増と比べやや減少したが、成長率は比較的安定している。売上高が10億元を突破したブランドは31個あり、特にアップルの売上高は百億元を突破した。

この2つのECプラットフォームは長年にわたる競争相手であり、以前の成長率はほぼ同じだったが、今年に差異が出た結果になったのも注目されている。

 

まず、Tモールの成長率の鈍化は昨年度の売上額が高かったことが原因にある。2019年まで、アリババは11月11日のみセール販売していたが、昨年の2020年はダブル11の期間を11日間前倒しして、11月1日から11日まで実施したため、売上総額は合計4982億元を突破した。今年は10月20日から予定販売というシステムを導入したものの、連続して高い増加率を確保することは難しかったと言えよう。

次に、今年は「二者択一」*の形式がなくなり、販売者は違うプラットフォームの間での切り替え販促ができるようになった。よって、消費者の選択肢も多くなってきた。アリババは服装、コスメなどの品目においての独占力が弱くなり、京東(JD)はある程度恩恵を受けた形になる。

*「二者択一」とは競争相手PFでの店舗開設或いはセールスイベントに参加することが禁止されることを指す。

また、家電製品においては、従来のECプラットフォームTOP3である蘇寧易購が第三四半期の営業収入が6割以上も減少する経営不振に陥り、ダブル11におけるプロモーション活動も以前とは比べられないほど減り、結果として、蘇寧易購が握っていた家電類の売上が京東に流れ込んだ形となり、ダブル11期間中、京東(JD)の家電類の売上高は記録を更新し、累計売上高は前年同期比50%以上も増加し、5000万以上の世帯が京東(JD)で家電を購入したことになる。

ライブコマースのTOP3

去年、中国の厳しいコロナ感染防止対策が常態化されたことにより、ECはライブ配信により救われたとも言える。今年になり、ほとんどの店舗はライブ配信を開始しているが、やはりタオバオ(アリババ)、Douyin(抖音) 、Kuaishou(快手) という3大プラットフォームを利用するユーザーが圧倒的に多い。

星図データによると、11月1日から11月11日にかけて、主流ライブ配信プラットファームの総売上高は737.56億元に達し、そのうち11月1日と11月11日のライブ放送の売上高が比較的高く、それぞれ111億9700万元と82億3000万元だった。売上額に関して、タオバオライブが総売上高で1位、KuaishouとDouyinそれぞれが2位と3位だった。

 

タオバオ(アリババ)—二超多強

10月20日、タオバオはダブル11の先行販売を開始した。その日、李佳琦(リー・ジャーチー、トップインフルエンサー)は12時間26分生放送し、累計視聴者数は2.48億人に達し、初日の売上高は115.4億元を超え、昨年の本人のダブル11期間全体の売上高を上回った。つまり、昨年の先行販売初日の38.7億元と比べ、198%増加し、ほぼ3倍だった。薇娅(ウェイヤー、トップインフルエンサー)は14時間半生放送し、累計視聴者数は2.39億人に達し、初日の売上高は85.3億元であり、去年初日と比べ、63%増加した。第三位の雪梨は第一、二位と比べ一定の差があるが、それでも好調で、売上額は9.3億元となり、前年同期比11%増加した。

ちなみに第三位の雪梨は、ダブル11が終了した直後に脱税容疑で税務当局に摘発されていて、話題になっている。

 

Kuaishou(快手) – チーム+新人注入

「辛選」というチームはKuaishouライブコマースで最も規模が大きいチームであり、ダブル11期間中は18.74億の売上高を実現した。辛選チームのキャスターである「蛋蛋」は20代前半の若者あるが、セールス期間中に26.83億の売上高を実現した。また、今年初めてダブル11のライブ配信ECに参加した新人キャスター「瑞雪」は、5.43億元の売上高を達成し、チームの優位性を見せてくれた。

 

Douyin(抖音) ‐均衡成長

Douyinでは、プラットフォームの視聴者リソースを合理的各配信ルームに分配するようにしていた。また、大勢の有名人等を動員する以外にも 、販売者自身によるライブ配信も積極的進めた。統計によると、11月10 日までDouyinライブ販売ランキングのトップ3は広東夫婦(6.84億)、賈乃亮(6.52億)、羅永浩(5.9億)である。

 

 

一方、ECビジネスの多様化と反独占法の浸透とともに、中国のEC業界は1社独占のような局面も「2強統治」の局面もなくなっている。

タオバオ(アリババ)と京東(JD)の2社による寡占状態から、タオバオ、京東(JD)、Pinduoduo、Douyin、Kuaishouという戦国時代へと、中国のECビジネスはすでに新しいステージに入り、業界全般も多元化へ発展し、消費者にもより多くの選択肢が出ている。

2021年度の中国経済のバロメーターでもあるダブル11セールスは終了したが、ダブル11の存在価値についても疑問の声が少なからず聞こえてきている。販売価格にしても、決してこの時期が安いとは言えない状況も見られ、冷めている消費者も多い。この中国を代表する一大イベントも変革が必要な時期を迎えている。

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