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2021.02.14
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【深圳レポート】中国、CPTPPへの加盟を申請

【深圳レポート】中国、CPTPPへの加盟を申請…

※本記事は、深圳イノベーションセンター(MICS)会員に限定配信している
「MICS NEWS(vol.51)」に掲載されたものです。

 

収束を見せない新型コロナ感染症は、世界経済情勢に影響を与えるだけでなく、世界の産業チェーンとサプライチェーンにも衝撃を与えている。

このような背景のなか、地域貿易協定はますます経済成長の重要な原動力になってくる。各国が近年、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)、包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)、米国・カナダ・メキシコ自由貿易協定(USMCA)、日・EU自由貿易協定、アフリカ自由貿易圏などの締結を積極的に推進している理由でもある。

9月16日の中国商務部の公式ウェブサイトのニュースによると、王文濤商務相は、CPTPPの寄託国であるニュージーランドのオコナー貿易・輸出振興相に、正式にCPTPP加盟の申請をしたと発表している。王氏とオコナー氏は電話会議も行い、中国の正式加盟申請に関連するフォローアップ作業について意思疎通を図ったという。

CPTPPは米国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱した後、日本、カナダ、オーストラリア、チリ、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、メキシコ、ペルーの11ヶ国が改めて調印した自由貿易協定であり、2018年12月30日に正式に発効し、カバーする人口は4億9800万人、加盟国の国内総生産(GDP)の合計は世界経済全体の約13%を占める。仮に中国が加盟したとすると、約20億人をカバーし、GDPは25兆米ドルを超え、世界の約30%を占めることになる。

 

なぜ中国はCPTPPに加盟するか

自由貿易協定に加盟するかどうかを検討するとき、最も基本的な判断条件として、中国を含むいずれの国も、まずそれが自国にとって有益であるかどうかが重要である。

中国はCPTPPに加盟することによって、経済的利益をもたらし、自国の改革開放を深めるとともに、世界経済ガバナンスに参加することなどのメリットがあると判断している。

 

● 中国はCPTPPに加盟することで、巨大な経済的利益を得ることができる。

中国農業大学経済管理学部李春頂教授によって構築された「グローバルCGE (Computable General Equilibrium )モデル」の試算結果に基づくと、様々な状況において、中国のCPTPP加盟によりGDPは0.74-2.27%、輸出は4.69-10.25%成長するとしている。中国がCPTPPに加盟しない場合に比べて大幅な成長数値となっている。

注: CGEモデルは、計量経済モデルに比べてデータ制約も影響が小さく且つ経済理論と整合性が取れた分析手法である。

▼複数のシナリオでCPTPPが中国にもたらす経済効果(単位:%)

出典:中国農業大学経済管理学部の李春頂教授の数値シミュレーション結果に基づく。

 

米国のピーターソン国際経済研究所の推計によると、CPTPPは毎年世界に約1470億米ドルの収益をもたらすことができるとしている。これに中国が加盟すると、中国は2980億米ドルの収益を獲得するだけでなく、CPTPP全体の収益も4倍の6320億米ドルに達するという。

●中国のCPTPP加盟は国内改革を深耕

RCEPと比べると、CPTPPの内容はより広範囲であり、「21世紀に向けた高水準の貿易協定」と呼ばれ、新世代の世界貿易規則の典型的な特徴を表している。また、アジア太平洋、さらには世界貿易の勢力構造を再構築することになる。

協定の内容には、貨物貿易、原産地規則、貿易の技術的障壁などの従来の課題だけでなく、サービス貿易、政府調達、透明性および投資家対国家の紛争解決手続き(ISDS)など、多数の新しい議題も含まれている。

CPTPPは、中国の次段階における改革のための課題を提供したとも言える。CPTPP加盟を申請することは、より強力に国内改革をバックキャスティングし、全面的に開放を拡大するという中国の意志と決意が現れている。

● CPTPP加盟は、中国の世界貿易ガバナンスシステムの構築への参入に役立つ。

現在、アジア太平洋経済統合には、アジア太平洋自由貿易圏(FTAPP)、CPTPP、RCEPの3つの可能な道がある。中国は既にFTAPPとRCEPに参加しており、さらにCPTPPに加盟すれば、アジア太平洋経済統合におけるこれら3つの道の統合に参入することができる。中国のCPTPP加盟は、将来の他の高水準の自由貿易協定の交渉にも役立つであろう。

また、多国間観点から見ると、WTOの改革は避けられない傾向にあり、改革のメインテーマは貿易規則の再構築であり、将来的にはCPTPPの一部の規則もWTOの多国間レベルに組み込まれるだろう。

中国のCPTPP加盟の交渉プロセスは、規則の受け入れ能力を強化するプロセスでもあり、WTO改革への参加における中国の主導権把握に役立つ。

実際、中国の「WTO加盟」が既存の多国間貿易規則に参加することであるなら、中国のCPTPP加盟は、多国間貿易規則を更新するプロセスに積極的に参加することを意味する。

CPTPP加盟申請は、中国のさらなる改革を後押しする

現在、中国の実際の国情とCPTPPの基準にはまだ大きなギャップがある。例えば、国有企業の改革、政府の補助金、産業政策、透明性の原則など、一部の分野には制度上の障害も存在する。このほか、環境保護、競争の中立性、サービス業の市場参入などの要求においても、一定のギャップがある。

しかし、長期的には、CPTPPのいくつかの厳しい規則は、中国の改革開放深化の方向性に適合するものである。CPTPPに加盟することによって、もたらされる可能性のある市場開放のインパクトと国際競争に備えると同時に、「より高いレベルの開放型経済新体制」の構築を将来の発展における新しい道とし、重点分野の改革の推進を加速し、大きな制度的ブレークスルーの達成に努めることが期待される。

中国の加盟交渉が順調に進むかどうかはまだ未知数である。中国が首尾よく加盟するためには、協定の加盟国によって満場一致で受け入れられなければならないが、地政学的影響のため、中国の交渉は容易ではないことは明らかだ。「ウォールストリートジャーナル」は、中国が申請を提出した翌日に、CPTPPを主導する各国は、早速議論したとしている。一部の加盟国は、どの国の加盟申請も歓迎すると述べたが、一方で中国がこの枠組みに適していないという意見も聞かれたようだ。

今後、中国は改革を継続することによって、CPTPP規則をベンチマーキングするための中国の努力を各加盟国に確信させる必要がある。

台湾地区もCPTPP加盟を申請

台湾行政院は、9月22日、CPTPP加盟申請を正式に提出した。中国本土と台湾が非常に近い時期に申請を提出することは、確かに微妙である。

「日本経済新聞」の報道によると、台湾のCPTPP加盟申請は、日本などの加盟国がやむを得ず、中国本土と台湾で二者択一をしなければならない局面になったという。これは安全保障の観点からも、慎重に考慮する必要があり、判断が難しいであろう。中国(本土)と台湾のどちらがCPTPPに加盟した場合、もう一方の加盟は困難となる。

果たして、中国は順調にCPTPPに順調の加盟できるのか。

 

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