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出向社員の給与や社会保険はどちらが負担?

出向社員の給与や社会保険はどちらが負担?…

(写真=画像素材:PIXTA)

グループ会社、子会社への出向をはじめ、会社が人事異動として出向を命じた場合、出向者の給与や、社会保険はどちらの会社が負担するべきなのでしょうか。同列のグループ会社で、しかも各々が厳しくコスト管理をするタイプであれば、どちらが負担するかで話し合いになるおそれも否めません。もちろん、お互いに膝を詰めて納得がゆくのであればそれがベストですが、まずは一般的な考え方を押さえておくのも大切なことです。本稿では、出向者の費用の負担について紹介します。

転籍出向と在籍出向

一口に出向といっても「転籍出向」と「在籍出向」の2種類があります。「転籍出向」とは今まで勤めていた会社との雇用契約を終了させて、新たに出向先と雇用契約を締結することをいいます。実質、転職と同じ状態なので、退職金も清算されます。

一方、「在籍出向」とは、今まで通り(出向元の従業員として)会社に籍を残しながらも、別の会社で勤務することをいいます。人事交流や人材開発、業務指導、人件費削減など、さまざまな目的のためにあくまでも一時的に従業員を出向させるケースが多いといえます。なお出向というと、一般的には在籍出向を指すことが多いようです。

出向社員に対する給与の支払いに取り決めはない

出向した従業員の給与はどちらの会社が負担するべきなのかについて、明確な決まりはありません。転籍出向の場合、転籍元から命じられたとはいえ、本人の意思と関係なく、実質的には転職と同じ扱いになります。かたや在籍出向は出向元に在籍しつつ、出向先に勤務するものです。すると出向社員に対しての指揮命令系統の責任割合なども生じるため、雇用関係が複雑になります。

在籍出向の場合は、下記の3種類に分かれます。

1.在籍元または在籍先が給与を負担する
2.在籍元が給与を負担したうえで、在籍先が在籍元に給与分のいくらかまたは全額を支払う(逆のケースもあり得る)
3.在籍先と在籍元で、それぞれに給与を負担する

例えば、子会社にテコ入れをするために親会社から出向してきたのであれば①のケースは十分あり得ます。また、出向先が社員を強く求めたり、能力に相応であると見なしたりする場合であれば、お互いに割合を決めて給与を負担する2や3のケースが考えられるでしょう。

出向元・出向先のいずれかが給与の全額を負担するのであれば、それは問題ありません。しかし、それぞれに負担割合を決めるとなると、それについて協議する必要が出てきます。このような事態が生じる際に押さえておくべきポイントがあります。

出向社員の支払い窓口は大事なポイント

出向先と出向元、それぞれの負担割合が生じた際、押さえておくべきポイント。それは「どちらが給与に対する支払い窓口になるか」です。なぜなら「誰が」支払うか、によって社会保険の負担先が変わるからです。

給与と異なり、在籍出向の社員に対して、社会保険には明確なルールが存在します。健康保険や厚生年金といった社会保険は、直接給与を支払う企業での適用です。そのため、出向先で給与が支払われていれば、社会保険は出向先での適用となり、出向元から給与が支払われているのであれば、出向元の適用となります。

この場合、社会保険の負担は、あくまでも支払窓口がどちらであるかによって決まります。実質的な給与の負担は関係ありません。また、社会保険は、会社が加入している健保組合によって保険料率に違いがあります。出向先で社会保険を負担する場合、出向元と同じ健保組合に加入しているのであれば、保険料率に変わりはありません。

しかし、異なる健保組合の場合には、健保組合の切り替えが必要となり、保険料率も変わってきます。なお、出向者の不利益となる部分があれば、一定期間補填するといった対応をすることもできます。いずれにせよ、給与の支払い窓口によって、社会保険を加味した負担の按分が変わってきます。当然それによる負担割合も変わってくることを押さえておかなければなりません。

雇用保険・労災保険・社会保険の支払企業が異なる場合も

保険は社会保険だけでなく、雇用保険や労災保険もありますが、それぞれ決まりがあるため、保険の支払い企業が社会保険と異なる場合もあります。

・労災保険
労災保険は労働者個人に対してではありません。事業単位で保険関係が成立しており、保険料も使用者が全額負担します。そのため、労災保険は出向者が実際に勤務をしている出向先で適用することになります。仮に出向元から給与が支払われていたとしても、労災保険は出向先が支払うこととなります。ただし勘案すべき点として、出向元の賃金が出向先のそれよりも高ければ、算出された労災保険の差額について協議する必要が出てくることが挙げられます。

・雇用保険
在籍出向の場合、雇用保険は「主に給与を支払う側」での適用になります。給与を一部負担しあっていれば、より多くを負担している側が雇用保険を負担するのです。また、雇用保険の負担者が出向先となった場合は、出向元における雇用保険の資格をいったん喪失し、出向先で新たに資格を取得することになります。

給与負担と支払い窓口を分けて考えよう

在籍出向の場合は、出向元と雇用関係がありつつ、実際には出向先の指揮命令も受けるといった二重の労働関係にあります。それに伴い、給与と社会保険の支払い比率について複雑になりがちです。社員を出向させる、または出向を受け入れる場合、「給与の支払い先」というと支払い窓口を指しているのか、それとも給与の負担について話をしているのか、などテーマが混乱しやすくなります。出向先や出向元と協議をするのであれば、この点の表現について重々注意することを忘れないようにしましょう。

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