Regional Transformation地域創生
2023.08.21
地元企業と公共施設の連携:地域の魅力を発信する新たな可能性
室蘭市は北海道に位置し、北海道のゲートウェイである新千歳空港から、わずか1時間の距離にあります。室蘭(むろらん)の名前をお聞きになったことがある方も多いと思いますが、製鉄産業を中心に発展し、「鉄の街」として知られています。現在の人口は約8万2千人、北海道の市町村の中では11番目ですが、かつてピーク時には約18万人(1969年)の人口で、当時は北海道で6番目に大きな市でした。
1960年代の人口増加に伴いインフラが整備されましたが、現在は老朽化に対応するために市内の施設の更新がさかんにおこなわれています。例えば、私が子供の頃に通っていた幼稚園、小学校、中学校は全て閉校となり、学区再編が進み、新しい学校が建てられました。
その中で、約1年前に新たに完成したDENZAI環境科学館・室蘭市図書館(愛称:えみらん)を訪れる機会がありました。この施設は老朽化した図書館と科学館を改修して生まれ変わったもので、多世代が集まる交流の場となっています。
1階には美しい市立図書館が広がり、室蘭の歴史に関する貴重な資料が展示されています。また、2階には環境科学館があり、子供の頃に触れた懐かしい展示物や最新のプラネタリウムが楽しめます。特に「ウォッチングモルエラニ※」というアクティビティでは、床一面に室蘭市の地図が広がり、バーコードを読み取ることでその場所の情報や動画がタブレット端末に表示され、臨場感あふれる体験ができます。
※モルエラニは、ゆるやかな下り坂という意味のアイヌ語で、むろらんの語源といわれています。
地元の企業もこの施設に参画しており、タブレット端末を通じた体験では、市内の観光名所の案内だけでなく、室蘭を支える工場の見学も手軽に体験できるようになっています。さらに、地図の横には「てついく※」コーナーがあり、室蘭の発展の歴史と地元企業が次世代の子供たちと交流する機会を提供しています。
※てついく(おそらく鉄育):ものづくりの街、室蘭では子供たちに地域産業への関心を高めてもらう取り組みをおこなっていらっしゃいます。
各企業のブースでは、製品がどのように生活に活用され、室蘭の歴史とどのように関わってきたのかを、あらゆる世代に向けて積極的に発信しています。これにより、「えみらん」のコンセプトである「広域連携と地域の活性化」が具現化され、市と地元企業が協力し合いながら地元の魅力を広めることが期待されています。
北海道は自然に恵まれ、地域に根付いた多くの企業が存在していますので、各自治体が取り組む地域創生活動には無限の可能性があると思います。
今回、同施設を訪問したことで、地域の創生にはやはり基盤となる「産業」が必要で、その産業を育成・持続させるためには、官民一体、行政機関である市と地元企業が協力し合って地元の魅力を伝えることの重要性を実感することができました。
もし、室蘭を訪問する機会がありましたら、ぜひ「えみらん」を体験してみてください。
https://www.kujiran.net/emiran/
<執筆者>
北海道地域創生プラットフォーム株式会社(HPR2)
小川 博也