Regional Transformation地域創生
2022.07.06
地域創生のヒントが詰まる「中標津モデル」から得た気付き
先日、道東の中標津(なかしべつ)町を訪問してきました。
中標津町は、人口2万3千人ほどの酪農をはじめとする一次産業が盛んな町です。町内中心部から車で10分ほど走ると、牧草地で草を食む牛の姿がそこかしこで見られるとてものどかな風景です。
しかし、そんなのどかな風景が広がる中標津町には、すごい事実があります。なんと、2001年頃から2020年まで20年間、ほとんど人口が減っていないのです。
全国の地方都市が人口減少にあえぐ中、北海道の東端に位置する小さな町が、なぜこのような驚異的な記録を残しているのでしょうか。私たちは今回、その謎に迫るため中標津町役場を訪れ、西村穣町長にインタビューをさせていただきました。当日は西村町長の他、政策推進課の渡部課長、伊與部(いよべ)係長にもお話を伺うことができました。
西村町長曰く、カギは「周辺自治体も巻き込んだ街づくり」にあるそうです。
町内のバイパス沿いには「ニトリ」「ユニクロ」「しまむら」等々、誰もが知るお店が立ち並んでいます。また、街自体がとてもコンパクトにまとまっており、店舗間の行き来がしやすいためとても利便性が高いように感じました。
こうした充実した買い物環境があることから、近隣の市町村からたくさんの人が買い物のため中標津町を訪れており、中標津町は商圏人口が8万人から10万人(住民の4〜5倍)程度とも言われています。また、この利便性ゆえ、中標津町からの人口流出も少なくなり、人口に比して大きな経済規模を保つ、という好循環を生み出しているそうです。このような成功例は「中標津モデル」と言われています。
一方で、そんな中標津町でも、「女性や若者の町外流出」を課題と感じていらっしゃるとのことで、働く場や学ぶ場の「選択肢がたくさんあること」が重要であるとのことでした。また、単に施設があるというだけでは不十分であり、「ヒトが楽しみ、輝けるような場であることが大切」、と町長はおっしゃっていました。
「女性や若者の活躍推進」は国を挙げて取り組んでいるテーマではありますが、単にポストを用意したり制度を導入するだけでは不十分であり、それよりも重要なのは、そこで働くヒトを「楽しみ、輝かせるための仕組みや雰囲気づくりをすること」、というとても大切な気づきをいただきました。
町長へのインタビューの前に、町内につい先日オープンしたという「コ・ワーキングスペース」を見学したのですが、そこの管理人の方がおっしゃっていた「ここを単に人が集まって仕事をする場ではなく、町外・町内の人が交流することで何かを生み出すような場所にできたら」という言葉が、町長の言葉と重なりました。
地域創生にはハード面のみならず、ソフト面の仕組みづくりも必要。これは企業が成長していくプロセスにおいても同様のことが言えると思います。私たちもその仕組みづくりに、お役に立てることがないか模索していきたいと思います。
お忙しい中、こころよく取材に応じてくださった西村町長、渡部課長、伊與部係長、この度はありがとうございました。