8tipsリスクに備える経営
信託型ストックオプションの適時開示状況
これまでのコラムでお伝えしているとおり、国税庁は5月末に信託型ストックオプション(以下、「信託型SO」)について「給与」としての税務処理が必要で、最大55%の税金が課されるとの見解を示しました。
この発表により、信託型SOを導入しているスタートアップ(新興企業)に動揺が広がっていますが、今回は、続報として上場企業の開示の状況についてお伝えします。
まず、そもそも上場企業は、有価証券報告書などで決算内容を開示する必要があるとともに、金融商品取引所における適時開示制度に基づき、「重要な会社情報」が発生した場合、投資家に対して情報提供する必要があります。ここでいう「重要な会社情報」とは、有価証券の投資判断に重要な影響を与えるような事実、すなわち、業績・財務状況に大きな影響を与える事実等が該当します。
今回の国税庁による信託型SOに対する課税の見解が、企業の業績・財務状況に与える影響は未確定であり、開示すべき事由に該当するかも不透明の状況です。
ただ、東証グロース市場の企業を中心に、以下のような開示がおこなわれています。
①信託型SOを従業員に付与済、一部権利行使が行われている企業の場合
開示ポイント:
・ 税務・財務に影響が発生する可能性がある旨
・ 信託型SOの行使状況
・ 財務上の影響については未確定ではあるが、一過性の事象であり、本質的な事業内容および事業成長に影響を与えるものではない旨
・ 今後、公表すべき事項が生じた場合には、速やかに開示する旨
②信託型SOを導入しているが、付与されておらず、権利行使も行われていない企業の場合
開示ポイント:
・ 信託型SOを導入しているが、付与されておらず、権利行使も行われていない旨
・ 税務・財務には一切影響はない旨
・ 今後、公表すべき事項が生じた場合には、速やかに開示する旨
信託型SO導入済みの企業でも、現時点(2023年6月14日)では対応が分かれているようですが、実際に開示の有無により、株価に影響が出ている企業もあるようです(もちろん当該事実のみをもって株価が変動するわけではありません)。
本件に関わらず、上場企業はパブリックカンパニーとして、証券市場との緻密な対話が重要になってくるということを、上場を考えている経営者の皆さまはあらためて意識されたのではないでしょうか。
今後も随時最新情報を配信してまいります。
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