みらい経営者 ONLINE

経営課題の発見・解決に役立つ情報サイト

みらい経営者 ONLINE

  1. リスクに備える経営
  2. 信託型ストックオプション<実務編>

8tipsリスクに備える経営

2023.07.14
リスクに備える経営

信託型ストックオプション<実務編>

信託型ストックオプション<実務編>…

信託型ストックオプション(以下、信託型SO)の取り扱いについて、国税庁の見解に基づき、給与担当者が実務上留意すべき点を所得税関連、社会保険、労働保険(雇用保険)の3つに分けて説明します。

 

所得税関連

【既に権利行使を行っている場合】

権利行使価格に対して給与課税が適切におこなわれていなければ、遡って課税する必要があります。一般的には、追加で発生する源泉所得税は本人が支払うべきものであるため、別途徴収します。ただし、今回のケースでは遡及処理の背景を考慮し、会社が一定額を負担する場合も想定され、その際には会社が負担する個人の源泉所得税に対しても給与課税が必要となりますので、給与処理の際は留意してください。

 

なお、年度をまたいで課税処理を行う場合、会社は年末調整を再実施する必要があります。

年収が2,000万円を超える人は年末調整による給与所得の調整ができないため、本人による確定申告が必要です。会社としては、本人に対して確定申告が必要であることを案内することが望ましいでしょう。

また、課税処理を行う(つまり、給与所得が増加する)と、それに応じて住民税額も増額改定されます。会社が源泉所得税を負担する場合には、住民税額の増額分も考慮する必要があります。

 

【まだ権利行使しておらず、今後に向けて権利行使を考えている場合】

権利行使の段階で給与課税がおこなわれますが、その時点では本人に金銭が支給されるわけではありません。そのため、給与課税によって生じる源泉所得税については、本人から別途振り込みを依頼するなどの対応が必要です。株価によっては源泉所得税の負担額が高額になる可能性もあるため、一時的に会社が立て替え、数か月にわたって給与から返金してもらう、といった方法も考えられます。

 

社会保険

 日本年金機構の疑義照会において、ストックオプションが社会保険の報酬(労働の対償)に該当するかどうかの見解が公表されています。その見解では、利益の発生は労働者の意思に左右されるため、ストックオプションは社会保険の報酬に該当しないとされています。信託型SOにおいても、この見解を流用できるものと考えられます。


※参
照:日本年金機構の疑義照会より抜粋

「権利付与をされた労働者が権利行使をする場合、権利を行使する時期、株式の売買時期について労働者自身が決定することとされている。ストックオプションの利益が発生するか否かは労働者の意思に左右されることから、労働の対償とはなりえない。よって、ストックオプションから得られる利益については社会保険制度において「報酬」及び「賞与」のいずれにも該当しない」

 

労働保険(雇用保険)

社会保険と同様、株式の権利行使時期や売買時期は本人の意思に委ねられているため、労働の対価として適当ではなく、労働保険(雇用保険)の賃金に該当しないとされています。信託型SOは福利厚生の一環として提供され、資産形成の手段としても普及しています。このような制度は、労働保険(雇用保険)の適用範囲から広く除外されています。

 

 

説明は以上ですが、信託型SOの運用に関してはさまざまなイレギュラーな事態が発生する可能性があります。運用面で不安がある場合は、社会保険労務士や官公庁(税務署、年金事務所、労働局、労働基準監督署など)にぜひご相談いただき、将来、大きな問題とならないような対策をおすすめします。

 

【関連記事】

信託型ストックオプションの適時開示状況

「信託型ストックオプション」で何が問題とされているのか?

 

PREV
信託型ストックオプションの適時開示状況
NEXT
2024年1月より義務化、すべての会社が関係する「電子…

ページトップへ