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2026年ダブル法改正 「最低賃金」と「同一労働同一賃金」 ――「時給戦」を勝ち抜くには

2026年ダブル法改正 「最低賃金」と「同一労働同一賃金」 ――「時給戦」を勝ち抜くには

2026年10月、働く人の賃金に関して注目すべき2つの法改正がおこなわれます。

ひとつは「最低賃金」の引き上げです。全国平均で1,176円(前年比4.9%・55円増)となります。もうひとつは「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正。正社員とパート・有期契約社員とのあいだにある待遇の差について、「なぜ違うのか」を説明する責任が、これまで以上に厳しく企業に求められます。

人件費の上昇に悩む中小企業は少なくありません。しかし、最低賃金をなんとかクリアすることをゴールにしても、人材不足の解決には繋がらないのが現実です。結論から申し上げれば、現代の採用市場において、最低賃金レベルの求人には人が集まりません。

働く人が基準にする「当たり前の時給」とは

同一労働同一賃金に関連して、厚生労働省が毎年公表している派遣社員の「一般賃金水準」を参考にしてみましょう。これは端的にいえば、「その地域、その業務、その能力や経験であれば、これくらいもらえて当然」という時給の目安です。

働く側からすれば、自分の時給がこの水準を下回っていた場合、「思い切って退職し、派遣社員として働いたほうが手取りが増えるのでは」と考えてしまいます。働き方や労働条件に疑問を感じる、ひとつの判断ラインといえるでしょう。

2026年度の一般賃金水準は、多くの職種で時給1,300円〜1,500円以上のモデルとなっています。たとえば東京都で事務職と営業職の時給を比べた場合、最低賃金(1,280円)と一般賃金水準のあいだに、事務職で70円、営業職で220円の差が生じています。

区分最低賃金(円)一般賃金水準(円)差(円)
事務職1,2801,35070
営業職1,2801,500220

※ 最低賃金額は、2026年8月5日付けで東京地方最低賃金審議会が答申した、地域別最低賃金額です

※ 一般賃金水準は、実際は、職種がより細分化されているため、およその概算値です

この基準はあくまで「未経験者向け」の概算です。経験豊富な中途採用であれば、さらに金額は上がります。もしも自社にこの水準を下回る社員がいる場合、時給という観点だけで見れば、退職リスクが非常に高い状態なのです。

「将来の退職金」より「目の前の手取り」を重視する時代

経営者が採用戦略において認識を変えたほうがよい要素がもうひとつあります。それは、働く人たちの「報酬に対する価値観の変化」です。

かつては「月給が低くても長く勤めれば給与が上がり、最後には手厚い退職金が待っている」という日本型の雇用が機能していました。しかし昨今は、若手層を中心に転職への心理的ハードルが下がり、終身雇用という神話は崩壊しています。

会社の将来への不安、AIに仕事を奪われるかもしれないという懸念、そして長引く物価高。こうした現代において労働者が求めているのは、30〜40年後の不確実な退職金ではなく、目の前の生活を支える確実な手取り額です。 また、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が流行しているように、労働時間や休日数も厳しくチェックされています。まさに今の採用市場は、時給額で争う「時給戦」なのです。

会社を「高付加価値型」へ変革する

この状況に対し、「そんな高い賃金は払えない」とあきらめる必要はありません。むしろ、自社のビジネスモデルを、労働力に頼る形から「高い生産性を生み出す形」へと脱皮させる、前向きな変革のチャンスととらえてみてはいかがでしょうか。

少ない人数でも現場が回る仕組みを作り、業務の効率化によって浮いた利益を、いま働いてくれている社員の手取りに還元する。この好循環をつくることが重要です。パートや契約社員であっても、スキルアップに応じて正当に評価し、会社の戦力として活躍してもらうことが、もっとも効果的な人材不足対策となります。

賃金上昇をただのコスト増(ピンチ)ととらえるか、組織改革と高収益化へのチャンスととらえるか。もしかしたら、このとらえ方次第で未来は変わってくるのかもしれません。

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