8tips引き継げる経営
会社・事業を売却する前に準備すべき事項とは?
最近、M&A(会社・事業買収)目的のデューデリジェンスを依頼されることが多くなりました。会社・事業を売却する理由としては、事業承継(後継者不在)、経営の安定化(大企業の傘下へ)などが考えられますが、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」になったこの1年でM&Aの動きがより活発になっている印象があります。
買い手から依頼を受け、売り手の会社のデューデリジェンスをおこないますが、ときどき、通常より手間がかかることがあります。
デューデリジェンスに手間がかかるのは、M&Aをする前の準備ができていないことが原因なのですが、売り手の会社にM&Aのことを熟知している方がほぼいらっしゃらないことを鑑みると、金融機関やM&A仲介会社などのアドバイザーによる事前説明や指導不足がその背景にあるのではないかと考えます。
今回このテーマを取り上げたのは、手間がかかって大変だ、ということではなく、デューデリジェンスに時間と手間がかかることにより、買収後の統合プロセスが面倒だとの印象を与え、買収価格の減額を要請されたり、あるいはM&A自体が不成立になることもあるなど、売り手の会社にとっての不利益が発生することがあるからです。
そこで、デューデリジェンスに手間がかからないようにするため、すなわち、M&Aを成功させるために、事前に準備しておくべきポイントを以下にいくつかご紹介します。
①すぐ出すべき情報は事前準備を
依頼した資料がなかなか出てこなくて、想定するスケジュールどおりにデューデリジェンスをおこなうことができないことがあります。依頼する側は短期間で出てくること想定してますので、短期間で出てこないとなると情報の管理が不十分である(ずさんな経営管理体制では?)との印象を持たれかねません。以下の資料については、速やかに提出できるよう、準備しておくことをお勧めします。
・定款、株主総会議事録、取締役会議事録(直近10年程度)
・株主の異動履歴(設立以降、現在まで)
・各種取引の契約書類(現状、有効なもの)
・人事関連規程(特に労働基準監督署に提出したもの)
・決算書類、会計帳簿、人事・労務関係の書類(直近3年程度)
②株式の履歴と集約化
「会社を売却する」とは、「発行済株式を売却する」ことです。万一、株式の保有者、株主が分散している場合は、設立以降適法な手続きにより分散したのかどうか、法的なリスクがないかどうかを確認するため、異動履歴や議事録などの準備が必要となります。
また、分散していると株主からM&Aに否定的な意見が出てくる可能性もありますので、M&Aに向けて経営者が株式を買い上げるなどして、株式の保有者を減らすこともお勧めします。
③適切な財務内容の把握
換金性のない資産(例:貸倒債権、販売困難な在庫、使用不可の固定資産など)が貸借対照表に計上されたままであったり、本来計上すべき負債が未計上になっていない場合は、実態を表した適正な貸借対照表を作成すべきです。
また、会社・事業の売却価格を試算するためにも、貸借対照表計上額と時価に大きな乖離があるかどうかを把握しておくこともお勧めします。
④どこの会社にもある「労務」課題への注力
最近は、多額の未払残業代や重要な労務問題の存在が、M&Aの成否や会社・事業の売却価格に影響を与えることが多くなってきています。できる限り、多額の未払残業代や重要な労務問題は解消しておくとともに、会社・事業の売却価格を試算するためにも、未払残業代がどの程度存在しているのかは、事前に把握しておくことをお勧めします。
事前準備は、ある程度の時間(半年~1年)をかけてじっくりおこなうことにより、売り手・買い手双方にとって最良のM&Aになる可能性が高くなります。また、事前準備によっては、会社・事業の売却価格が高くなることもありますので、できるだけ早い段階で、事前説明、指導をきちんとしてくれる経験豊富なアドバイザーを選ぶことが大切です。
みらいコンサルティングでは、デューデリジェンスに限らず、M&Aに関する業務(アドバイザリー、バリュエーションなど)について多くの企業さまのご支援させていただいておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。
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