8tips社員が幸せな経営
定年延長とシニア社員への期待
「定年延長」に関する相談が増えています。少子高齢化が進む中、労働力確保は喫緊の課題であり、定年延長はその対策として注目されています。しかし、単に定年年齢を引き上げるだけでは不十分で、目的や効果を整理し、慎重な検討が必要です。
今回は、実際のご支援の中で感じた定年延長の注意点についてお伝えしたいと思います。
再雇用制度の限界
多くの企業が「シニア社員のモチベーション維持」や「労働力確保と人材活用」に悩んでいます。その背景には、現行の再雇用制度の限界があると考えられます。
1.処遇の変化によるモチベーション低下
再雇用では給与や役職が下がるケースが多く、シニア社員のやる気を削ぎます。
2.人材の流出リスク
条件に不満を持つシニア社員が他社へ転職する可能性があります。
3.組織内の不公平感
正社員と再雇用社員との待遇差が、組織の一体感を損なうことがあります。
定年延長の効果と限界
再雇用制度にかわり、「定年延長」が、シニア社員のモチベーション低下を防ぐ手段として注目されています。しかし、定年延長と同時に処遇を改善するだけでは十分ではありません。ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」によれば、賃金は「衛生要因」であり、一定水準を超えてもモチベーション向上には直結しません。
ご相談いただいた企業さまでも、処遇の問題よりも、その後のキャリアや働き方における「動機づけ要因」の不足が根本的な課題として浮かび上がっています。たとえば、管理職だった社員が定年後にサポート役に回るケースでは、本人と後任の双方に戸惑いが生じ、会社からの期待が不明確になることでモチベーションが低下します。
定年延長は再雇用制度の限界を克服する手段として期待されますが、運用次第では同様の問題が生じる可能性があります。「どのように働いてもらうか」という視点が不可欠です。
役割と期待の明確化が鍵
定年延長を実施する際は、人員確保や処遇水準の見直しと並行して、シニア社員にどのような役割を期待し、どう貢献してもらいたいのかを明確に伝えることが重要です。
1.シニア社員に対する期待を明確にする
企業の事業戦略や人材マネジメント方針と連動させ、期待する貢献を明示します。たとえば、若手育成や業務改善を担うなど、「知見を応用し、組織に提案できる人材」としての役割を明示することが、動機付けにつながります。
2.「役割・貢献」という視点で制度設計し運用する
シニア社員は、これまでのスキルや経験を活かして組織に新しい価値を提供するフェーズにいます。「役割や貢献」という軸での制度設計をおこない、それに応じた賃金水準の設定や適切な評価をする仕組みが重要です。
定年延長は、単なる雇用延長措置ではなく、企業の戦略実行力を高め、競争力を維持・強化するための手段にもなり得ます。これからは、シニア社員向けの施策にとどめず、全社的な人事戦略の一環として計画的かつ丁寧に進めることが求められるのではないでしょうか。
定年延長・シニア社員の活躍に関心をお持ちの方は、ぜひ一度、みらいコンサルティンググループの担当者までご相談ください。
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