今の時代だからこそ注目したい「性弱説」マネジメント
管理職として日々の部下マネジメントに向き合うなかで、「部下がなかなか期待通りに動いてくれない」「何度注意しても同じミスが減らない」と頭を抱えることはありませんか。 最近はパワーハラスメントへの配慮も強く求められるようになり、部下への指導方法に悩むリーダーがますます増えています。 そこで今回は、性善説でも性悪説でもない「性弱説」を用いた、新しい部下マネジメントについてお話しします。
性善説と性悪説のジレンマ
まず、部下マネジメントにおける性善説と性悪説の違いを確認してみましょう。
- 性善説:人は本来真面目で善良だから、信じて任せるべきだという考え方
- 性悪説:人は放っておくと怠ける生き物だから、厳しく管理すべきだという考え方
もちろん、性善説にもとづいた信頼関係が理想です。しかし、多忙で心に余裕がないときや部下のミスが続いたときには、つい性悪説に立ち、厳しく管理したくなるのが人間の心理ではないでしょうか。 そこで今回おすすめしたいのが、これらとは異なる「性弱説」にもとづいたアプローチです。
誰もが持つ「弱さ」を受け入れる性弱説
「性弱説」とは、人は悪人でも善人でもなく、「本来的にとても弱い生き物である」という前提に立つ考え方です。 どれほど優秀で真面目な人であっても、その時の感情や体調によってパフォーマンスは大きく左右されます。プライベートな悩みから仕事に集中できない日もあれば、自己保身からつい言い訳をしてしまうこともあります。 性弱説マネジメントとは、こうした「人間の弱さ」を頭から否定するのではなく、「人は弱くて当たり前」という現実を素直に受け入れるところからスタートする人材育成の手法なのです。
単なる甘やかしとは違う、2つの「許容」
ここでよくいただくのが、「部下の怠けや弱さを許容してしまったら、成長の機会を奪う『甘やかし』になるのでは」「組織の緊張感が失われるのでは」という疑問です。 確かに、ミスや言い訳をうやむやにして「まあよいか」と見過ごすのは、単なる放任であり甘やかしです。 性弱説における「許容」とは、怠けや失敗そのものを推奨することではありません。「人は怠けるし、失敗もする」という前提に立った上で、次の2つのアプローチを実践することです。
- 精神的な許容(心理的安全性) 失敗や弱さを見せたときに、相手の人格を否定したり感情的に責めたりしないことです。「人はミスをするものだ」という前提で接することで、部下は「ここでは正直に報告しても大丈夫だ」という安心感を抱きます。
- 仕組みによるカバー 「次から気をつけます」「意識を高めます」といった個人の精神論に頼るのではなく、怠けたり間違えたりできない「仕組み(プロセスやチェック体制)」を組織として整えます。たとえば、重要な業務は複数人で確認するルールを設けることなどがこれに当たります。
つまり、「人の心には優しくよりそい、業務の仕組みは弱さに配慮して固める」ことこそが、性弱説マネジメントの本質です。
弱さを認めることで生まれる「信頼」と「主体性」
ある企業で、重要な報告を数日間放置し、トラブルを起こしてしまった若手社員がいました。 もし上司が「なぜもっと早く報告しなかったんだ」と強く叱責すれば、その社員は萎縮し、次回からはさらにトラブルを隠すようになるかもしれません。これは性悪説に陥った悪循環です。 一方で、性弱説に立つとアプローチは変わります。「人間だから、不都合な報告は後回しにしたくなる心理が働くよね。責めても解決しないから、まずはどうミスをカバーするかいっしょに考えよう。そして、次からは報告のハードルを下げる仕組みを考えよう」と伝えます。 このように、自分の弱さを受け止めてもらえたと感じた部下は、上司に対して強い信頼感を抱きます。 「このリーダーのもとなら、失敗を恐れずに挑戦できる」「自分の弱さと向き合って成長したい」という主体性が芽生えるのは、まさにこの安心感があるからではないでしょうか。
リーダー自身も「弱い人間」である
経営者や管理職であっても、時には「今日はやる気がでないな」「少し休みたいな」と感じることがあるはずです。私たちリーダー自身もまた、一人の「弱い人間」なのです。 「人は弱い」という前提に立ち、失敗を責めずによりそい、仕組みで支え合う。そんな「性弱説」の視点を少し取り入れるだけで、職場環境や部下との関係性はぐっと柔らかく、そしてよりよいものに変わっていくはずです。ぜひ、日々のマネジメントの参考にしてください。
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