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海外での知財侵害と訴訟に対抗する!海外知財訴訟費用保険について
国内企業が海外に進出するにあたり、中国を中心にアジア圏での知的財産の侵害による訴訟が頻発しています。大企業はもとより、中小企業が知財侵害での訴訟に巻き込まれると多額の費用がかかるため、結果的に泣く泣く撤退の憂き目に遭ったという事例も生じています。このような事態に対応するため、特許庁では知財係争が生じた際のリスクヘッジとして「海外知財訴訟費用保険」を設立しました。本稿では、この海外知財訴訟費用保険について解説します。
アジア圏で頻発する知財係争
国内企業が海外に進出した際、知的財産の侵害による係争が生じるケースが、アジア圏を中心に広がっています。特許庁のデータによると「海外の企業から権利侵害をしていると指摘を受けた経験」がある企業は、中小企業933社中、6%の55社となっています。
とくに中国では知財民事訴訟件数が増加しており、2011年に約6万件だったものが、2016年には13万6,000件と倍増しています。
具体的な事例としては、自社が外国での展示会に出展するにあたり、技術やデザインなどが第三者の権利を侵害しているとして国外企業から訴訟を受けたケースや、自社製品の部品を海外で生産した結果、知的財産を侵害しているとして生産停止に遭ったというケースなどが挙げられています。
「先駆け出願」が大きな問題に
知的財産の侵害内容は、大きく「権利」と「商標」の2つに分けられます。中でも問題となっているのが商標登録です。本来であれば、日本企業が発案したオリジナルブランドであるにも関わらず、中国をはじめ、アジア圏において先にその権利を取得された挙げ句、当該企業が海外に進出するや、商標権を侵害しているとして訴訟に遭うケースが多いのです。この「先駆け出願」は、大企業であってもなかなか対処が難しい問題です。ましてやはじめての海外進出を考えている中小企業などでは太刀打ちできないのが現状なのです。
「先駆け出願」に特許庁が対応
上述のように、本来であれば自社のオリジナルブランドであるにも関わらず、外国企業が先駆けて商標登録をするのは、あらかじめ悪意を持っているケースもあります。日本企業が海外進出するや、商標の買取を迫ってきたり、いきなり訴訟を起こしたりというケースも後を絶ちません。
特許庁設立の「海外知財訴訟費用保険」とは
このような問題に対処するため、特許庁は知財係争が生じた場合、訴訟費用の負担軽減を目的とした「海外知財訴訟費用保険」を設立しました。「海外知財訴訟費用保険」は特許庁から日本商工会議所に補助金を交付し、各保険代理店と提携することで、国内企業が海外進出して知財侵害に遭った場合、係争費用の一部を負担するものです。
当該制度を利用できるのは中小企業に限定されています。また、内容として知財訴訟費用保険の半額を保証するものとなっています。補償対象となる国は「日本」と「北朝鮮」を除いた全世界であり、幅広いフォローアップが可能となっています。
支払い限度額も500~5,000万円まで段階別に分かれています。海外で知財係争が生じた際の訴訟費用は数百万円程度かかると言われているため、万一の際に安心できる保険であると言えるでしょう。
海外進出の前に保険の加入を
海外進出を行った際、思わぬ法律の落とし穴にはまったり、現地トラブルに遭遇したりするケースはけっして珍しい話ではありません。これまでの中小企業であれば、見知らぬ土地で数百万円もの費用を捻出して、先行きの不透明な係争に明け暮れるよりは、奥歯を噛みながらも撤退すると言うのは一つの決断でありました。当該保険制度は、これらのリスクを回避するための大きな手助けとなります。海外進出の際にはぜひ海外知財訴訟費用保険を利用することをおすすめいたします。
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