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2022.10.14
世界を駆ける経営

【深圳レポート】中国の電気自動車(EV)大手BYD、第一四半期純利益が急拡大

【深圳レポート】中国の電気自動車(EV)大手BYD、第一四半期純利益が急拡大…

※本記事は、深圳イノベーションセンター(MICS)会員に限定配信している「MICS NEWS(vol.68)」に掲載されたものです。なお、掲載内容は2022年6月時点の情報です

 

6月10日、BYDの株価は8%以上大幅に上昇し、過去最高値を更新した。同社時価総額は中国の自動車ブランドとして初の1兆元を突破した企業となった。よって、BYDは世界の自動車メーカーにおいて、時価総額ランキングがテスラとトヨタに次いで、3位にまで上昇し、フォルクスワーゲングループを抜いた。

 

BYD執行副総裁の廉玉波氏はメディアのインタビューで、近々テスラにバッテリーを提供すると公表した。テスラ関係者はメディアに対し、この情報を聞いたことがないと述べているのも面白い。いったい真相はどうなのか、時間が経つにつれ、その答えは明らかになるだろう。ただ、このようなニュースでもBYDの時価総額が引き続き上昇することにそれほど影響しなかったようだ。2022年の数か月間で、この中国国産大手自動車メーカーに関する朗報が相次いだのだ。4月27日、BYDは2022年の1Q財務諸表(1-3月期)を正式に発表し、「ガソリン車の生産停止」を実施した後の初めての決算として業界の注目を集めた。

 

*ガソリン車の生産停止:BYDは2022年4月に、同年3月から、ガソリン車の生産を完全に停止したと発表。

 

営業売上大幅に増加、利益急増

 

1Qの決算情報によると、BYDの総売上は668.25億元に達し、前年同期比63.02%上昇した。営業利益は10.61億元で、前年同期比64.24%上昇した。また、純利益は8.08億元で、前年同期比240.59%アップとなる。

 

BYD側は、主に新エネルギー車業界の急速な成長がもたらした結果であり、新エネルギー車の販売量が増加したおかげだと述べた。

 

1Q同社の自動車販売台数は29.1万台で、前年同期比179.78%伸びた。そのなか、新エネルギー車の累計販売台数は28.6万台で、前年同期比422.97%上昇し、純利益は8億元に達した。

 

新エネルギー車の販売台数が飛躍的に増加したことは、川上の原材料の価格上昇による利益減少を食い止めたことになる。純利益は、補助金などが減少しているにもかかわらず、3倍以上の成長を実現して絶好調だ。(2022年1Q、同社は政府補助金を約1.93億元獲得しているが、前年同期比約56.43%減少している。)

 

業界関係者は、同社の新エネルギー車へ全面的に転換する方針が迅速かつ正確な選択だと評価した。また、利益率が高い車種の発売と原材料コストの安定化が、1Q決算における同 社の利益率の転換点となっている可能性も高い。

 

「売上が増加しているが利益が増加しない」という循環から脱出できるのだろうか

 

BYDの売上高は主に、①自動車・自動車関連製品およびそのほかの製品。②携帯電話の部品・組立及びその他の製品、3充 電式バッテリー及び太陽光発電製品、4その他となっている。 その中、自動車及び関連製品の売上シェアが一番高い。

 

1QBYD自動車の売上が、全体売上に占める割合は急速に 伸びたが、上海蔚来汽車( NIO)とテスラのそれぞれ20%、30% の売上総利益率に比べて、収益性の優位性はない。

 

この1年間、BYD全体の売上総利益率はずっと13%前後で 変動しており、大きな増減はなかった。原材料の上昇、研究開発の投入、工場の拡張などがコストの増加をもたらした。これから、全面的に新エネルギー車への転換を推進することにより、 これまでのような「売上が増加するが利益が増加しない」という循環から脱出できるかもしれない。

 

年初から今まで、BYDは駆逐艦05、漢DM-i、DM-pなど多くの車種を相次ぎ発売し、ベンツと立ち上げたDENZAブランドもすでに新しいMPV車種を発売し、下半期には50万を超える高級車を発売すると公言している。

 

次世代の純電動プラットフォームモデルの発売に伴い、高利益率モデルの販売台数の上昇によって、同社の利益構造がより改善され、全体の利益率も伸びていくと見られる。

 

新エネルギー車へ専念、目標販売台数は150万台

 

4月3日、BYDは既にガソリン車の生産を停止し、今後は純電動車とプラグインハイブリッド車業務に専念すると発表した。

 

1Qのガソリン車累計販売台数は5,049台、累計生産台数は4,635台しかなかった。しかも、全部1月と2月の販売台数であり、3月におけるガソリン車の生産販売はゼロだった。ガソリン車の生産を終了するBYD側の固い意志を見せている。

 

新車の発表に関しはとても積極的であり、4月以来、漢EV創 世版、漢DM-i、漢DM-pと元PLUSなど多くの新車種が相次いで発売された。

 

同社関係者はメディアに対し、4月末まで、約40万台の納品していない新車受注残があり、そのなかでDM-iモデルは約30万台であると発表している。新車をリリースする以外、生産量を拡大することにも力を入れるとしている。

 

2022年通年の販売台数は控えめの150万台としているが、サプライチェーンからの供給が追い付けば、200万台を突破することも可能となっている。BYDの2021年の自動車販売台数は73万台にとどまり、今年1Qの新エネルギー車販売台数の伸び率は全体よりはるかに高いが、150万台の販売目標を達成するのは容易ではない。今年、中国国内市場の新エネルギー車販売台数の伸び率が減速しているうえ、コロナの影響による不安定な要素があるため、多くの自動車メーカーは今年の予測に対し控えめな態度を取っている。そのなかでもBYDはかなり急進的目標を掲げたと思われる。

 

現在、同社が直面するもう1つの課題は納期である。いくつかの人気車種は、約3ヶ月前後で納品するようになっているが、BYDはまだ数十万台の注文を納品してない。新品が次々と発売されるにつれ、販売量が引き続き上昇し、新車の納期遅延が発生する可能性もある。

 

2021年の決算報告によると、BYD乗用車の生産稼働率は既に99.5%に達しているので、生産能力を拡大することは最も重要なことである。データによると、同社は西安・深セン・長沙・常州の4つの工場で生産を拡大したほか、昨年に済南・鄭州・合肥・撫州・深汕などの地域で5つの新しい生産工場を設けた。1Qに建設工事の支出として77億元増加し、在庫も年初より100.8億元増加した。

 

2022年は深センを代表する企業であるBYD製品の「表年」であり、生産能力の「表年」でもある。市場占有率をさらに拡大し、「売上が増加するが利益が増加しない」という循環から脱出することを、世界中から期待されている。

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