みらい経営者 ONLINE

経営課題の発見・解決に役立つ情報サイト

みらい経営者 ONLINE

  1. 世界を駆ける経営
  2. 【深圳レポート】テックへの投資が未来への投資、大手テック企業の動きは

8tips世界を駆ける経営

2023.09.01
世界を駆ける経営

【深圳レポート】テックへの投資が未来への投資、大手テック企業の動きは

【深圳レポート】テックへの投資が未来への投資、大手テック企業の動きは…

※本記事は、深圳イノベーションセンター(MICS)会員に限定配信している
「MICS NEWS(vol.80)」に掲載されたものです。

中国経済の全体的な成長鈍化を背景に、今年のテック大手企業のQ3決算報告では、コスト削減と効率化が主要テーマとなっていた。

同時に、モバイルインターネットから産業インターネットまで、大企業はビッグデータ、クラウドコンピューティング、メタバースなどの新興技術で競争し、将来のコア競争力の鍵を握ろうとするなか、インターネット大企業の「軍拡競争」はとどまるところを知らない。

AlibabaとTencentの積極的な投資、月に50億元ベース

2022年Q3期で、大手ITテック企業10社は合計609.2億元を研究開発に投資し、平均研究開発投資額は60.9億元となっている。

AlibabaとTencentはダントツの1位で、両社とも3か月に150億元以上の研究開発費を投じている。

今年のように経済が低迷しているにもかかわらず、大手2社の研究開発投資額は、コロナ感染症開始前の水準をはるかに上回っている。

また、有価証券報告書に計上されている研究開発費のほとんどは、研究開発スタッフの給与やエクイティインセンティブで構成されている。

一方、全体的な傾向として、大手2社は研究開発投資に対して慎重になっており、2桁成長は過去のものとなっている。 両社とも従業員関連費用の減少されていて、 2022年1〜9月の間に、Tencentは合計5,423人、Alibabaは15,413人の従業員を純減させていて、寒い冬にはレイオフがよく選ばれていることが検証されている。

同様に、京東(JINGDONG)も、Q3でコスト管理を優先していた。Q2、Q3の研究開発投資を約40億元に抑え、2桁の売上増加が続いているにもかかわらず、研究開発費は比較的低い水準にとどまっている。 2017年に提議された技術志向の変革以来、京東方式の基礎科学技術研究開発への累積投資額は2022年第3四半期末までに900億元を超えたが、長い間ライバル関係にあったAlibabaに比べたらおよばないレベルである。

細分化された投資分野では、集中と特化を重要視

AlibabaとTencentを除いたIT分野でのリーダー企業は、「集中と特化」の道を選択している。

地域生活サービスプラットフォームである「美団Meituan」は、自動配送の分野に引き続き深く踏み込んでおり、Q3の研究開発費は前年同期比14.9%増の54億1000万元となった。 2022年11月現在、Meituanのドローン配送は5つのビジネスエリアに展開していて、配送ルートは18の地域コミュニティとオフィスビルをカバーし、約2万世帯にサービスを提供している。リアルユーザーの累計10万件以上の注文を完了させたというデータが発表されている。

意外と知られていないが、設立初期は農産物の販売がメインとなっていた拼多多(Pinduoduo)の場合、Q3の研究開発費は前年同期比11.4%増の27億元となり、過去最高を記録した。なお、2021年の8月にPinduoduoは100億元の特別農業科学技術プロジェクトの設立を発表した。

网易(NetEase)のQ3 研究開発費は2.9%増の39.7億元で、Q1~Q3の累積研究開発投資額は110億元近くとなった。ゲーム事業が売上の77%を占めるNetEaseは、技術革新の成果をゲーム開発に費やすことも多くなっている。

Meituan、Pinduoduo、NetEaseは、本業の収益性が証明されており、ニッチ分野への技術投資により、既存の優位性を固め、将来的にさらに競争力の差を広げることが可能である。

IT中堅企業、生き残りが課題

インターネット企業10社のなかで、研究開発費の伸び率が最も高かったのはBiliBiliで、Q3の研究開発費は11億人民元、前年同期比43.5%増となった。主に、研究開発要員の増加、およびサーバや設備の減価償却費の増加によるものである。CEOの陳氏によると、2024年までに収支均衡を達成するという目標は変わらないことと、損失を減少することが会社のもっとも重要な課題の1つであることを強調した。直近では、体系的なコスト削減と効率化アクションを開始し、20億元ほどのコスト削減することを発表した。 同時に、ライブ配信、コミック、メインサイトなどの事業を中心に、新たな社内レイオフを開始し、経営陣の黒字転換への決意のほどがうかがえる。

同業他社である快手(Kuaishou)は、Q3で迅速な決断をくだし、研究開発費は前年同期の42億人民元から16.2%減の35億人民元となった。主に従業員に対する福利厚生費用の削減によるものである。販売費・一般管理費は前年同期比17.1%減とさらに削減され、売上高に占める割合は53.8%から39.5%へと大幅に低下した。この効果は財務諸表にもすぐに効果が表れて、KuaishouのQ3純損失は前年同期比61.7%減の27億1千万元、調整後純損失は同85.4%減の6億7190万元となっている。

未来に向けて新たな分野の開発へ

BaiduとXiaomiは、新しい技術分野で将来性をみつけだしている。

BaiduのQ3研究開発費は58億元で、前年同期比7%減となっているが、主にレイオフによる効果である。一方、Baiduは、Baidu Intelligent Cloudや自律走行などの技術分野への長期投資に注力すると述べている。2022年9月、Baidu Intelli-gent Cloudは新たな戦略的アーキテクチャをリリースし、産業用IoTプラットフォームは22以上の業界の300以上のベンチマーク企業との協力関係を確立している。Q3にBaiduの自動運転配車サービスプラットフォーム「萝卜快跑」は、前年同期比311%増、前四半期比65%増の47万4000件以上の注文を実行し、商用化のプロセスを加速させた。Baiduが現在最も賭けている自動運転事業は、当面は強力なネット上のライバルがおらず、将来的に消えゆく検索エンジン事業に代わるパフォーマンスエンジンになるかどうかはまだ不明である。

また、研究開発によって本来の事業から脱却しようとしているのがXiaomiである。 自動車づくりに余念がないXiaomiは、第3四半期に研究開発費が25.7%増の40億7千万元に達し、今後5年間で研究開発に累計1000億元を費やすと公言している。 2022年9月末までに、Xiaomiの従業員総数は第2四半期の32,869人から35,314人に拡大し、増えた人員の9割が研究開発スタッフであることがわかった。 XiaomiのCEOは、2024年には電気自動車の正式量産を達成する自信があると楽観的な見方を示しているが、IT企業であるXiaomiが伝統的な自動車メーカーや新自動車メーカーとの競争に勝つには、まだ長い道のりが必要である。

 

テック業界の冬の時代に大手企業すべきことは、衣食住を切り詰め、コスト構造を最適化し、業務効率を高め、反独占などのプレッシャーのもとで新たな成長点を見出すことだろう。また、新しいレースを模索し、国の政策を全面的に受け入れながら、技術革新に照準をあわせることでもある。これからマクロ経済が安定し、市場に対する期待が高まると、より広い市場を獲得し、競争力を高めるためには、どの会社も研究開発投資のさらなる拡大が必須な選択になるだろう。

 

PREV
【深圳レポート】中央経済工作会議とは?2023年度中…
NEXT
今こそ、グローバル人材の育成を!

ページトップへ