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8tips世界を駆ける経営

2020.09.25
世界を駆ける経営

担当者が知っておくべき!労務ポイント【タイ】

担当者が知っておくべき!労務ポイント【タイ】…

日系企業がタイでビジネスを行う際の、労務上の主な留意点を解説いたします。
(なお、本稿は2020年8月1日時点における法令にもとづいて作成しています。)

1.労働時間・休日休暇

①労働時間
・原則として1日8時間以内、週48時間以内(省令で定められた危険業務は、1日7時間以内、週42時間以内)
・時間外労働を命じる場合、原則として、労働者の事前の同意が必要(緊急の場合等の例外あり)
・時間外労働や休日労働時間は、合わせて最大週36時間まで

②休憩時間
・原則として1日のうち1時間以上
・連続して5時間以上労働させる前には必ず休憩時間の付与が必要
・通常労働時間後に2時間以上の時間外労働を行わせる場合は、必ず20分以上の休憩の付与が必要

③休日
・週休日は、原則として1週間に1日以上。
・週休日と次の週休日には、6日以上の間隔を空けなければならない。(特定業種について例外あり)
・毎年、メーデーを含めて年間13日以上の休日を定め、労働者への通知が必要

④休暇
・以下のような休暇が定められている。

2.雇用契約・試用期間

①雇用契約の締結

・労使が合意すれば雇用契約は成立し、労働契約書の作成は義務付けられていないが、トラブル回避のために雇用契約書を作成するのが一般的。

 

②就業規則の作成

・10人以上の労働者を雇用する会社は、タイ語で就業規則を作成する義務がある(作成は事業所単位ではなく会社単位で作成すれば良い)

・就業規則は、労働者が容易に読むことができるよう、事業所内の公の場所に掲示しておく必要がある

 

③年少労働者

・15歳未満の者を雇用することは禁止

・15歳~18歳までの年少労働者を雇用する際には、勤務開始日より15日以内に労働監督官への報告が必要となり、解雇する場合にも、解雇日より7日以内の報告が必要。

 

④試用期間

・試用期間は最大119日とするのが一般的(下記⑤解雇補償金との関係)

・試用期間中は、労働者の能力不足を理由とした解雇が可能

・試用期間中の解雇であっても事前の解雇通知が必要

・試用期間を定めると、有期雇用であっても無期雇用と見做されるため注意が必要

 

⑤解雇補償金

・勤続120日以上の労働者を解雇する場合には、以下のとおり解雇補償金の支払いが必要

⑥労働契約の終了

・雇用契約で定めた期間が満了したときは、事前通告を行わずとも雇用契約は終了する。

・雇用契約に期間の定めがない場合、使用者または労働者は一方に対して、賃金支払日またはそれ以前に、書面により、次の賃金支払日に雇用契約を終了すると通告することにより雇用契約を終了させることができる。但し、合理的な理由が必要となる。3ヵ月を超える以前の通告は不要。

・使用者は、事前通告により雇用契約満了のときまで支払わなければならない額の賃金を支払うことにより、労働者を直ちに解雇することができる。

 

3.賃金・時間外手当

①最低賃金

・最低賃金制度には、地域別最低賃金と、技能別最低賃金がある。地域別最低賃金は、地域・県ごとに規定され、技能別最低賃金は、政府が実施する試験に合格して技能認定を受けた労働者に適用される最低賃金である。

・給与支払いに関しては、以下のような諸原則がある。

■賃金全額払いの原則

・原則として使用者は、賃金・時間外労働手当・休日労働手当・休日時間外労働手当から、税金や社会保険料を控除する。

■直接払いの原則

・原則として労働者の勤務場所で支払わなければならない。銀行振込による場合は、予め書面により従業員の同意を取得しておく必要あり。

■同一労働同一賃金の原則

・業務の内容及び質が同一で、業務量も同一である場合には、性別にかかわらず同等の賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当を支払う必要がある。

■月1回以上払いの原則

・使用者は、最低でも月に1回以上、賃金を支払わなければならない。

■タイ通貨払いの原則

・労働者への賃金は、原則としてすべてタイ通貨によることが定められている。外貨で支払う場合にはあらかじめ労働者の同意が必要となる。

 

②割増賃金

・割増賃金の時間あたりの賃金の計算にあたっては、1ヵ月の労働日数を30日として計算する。

 例)月給18,000バーツ、1日あたりの労働時間8時間の場合

     18,000÷(30日×8時間)=75バーツ

4.社会保険等

①社会保険

・15歳以上60歳未満のすべての民間労働者が強制加入となり、労働者が60歳を過ぎても継続雇用されている時は、被保険者であるとみなされる。

 ・使用者は、1人でも労働者を雇用する場合には社会保険に加入する必要がある。

・社会保険料は労使折半で賃金の5%ずつ。但し上限あり。社会保険の給付対象は被保険者本人に限られ、家族は対象外。

・傷病給付は、社会保険加入の際にあらかじめ診療を受ける指定病院を一つ選択して登録する必要があり、指定病院以外では保険診療を受けることができない。

・傷病給付以外の給付には、障害給付・出産給付・死亡給付・老齢年金給付・失業保険給付等がある。

・失業保険給付については、会社都合退職の場合は給与の50%×180日間、自己都合及び契約満了の場合は給与の30%×90日間相当が支給される。但し上限あり。

 

②労災保険

・労働者が業務上の事由により負傷し、疾病にかかった場合に備え、使用者は治療費、装具等の費用、リハビリ費用、及び葬儀費用のための労災保険を納付する。労災保険の料率は、業種によってことなり、賃金の0.2%~1.0%となる。但し、上限あり。

・補償金は、労働不能となった期間や器官喪失、障害の有無等に応じて支給される。但し上限あり。

・「負傷」は、使用者のための業務遂行、使用者の利益保全のため、または使用者の指令に基づく業務に起因する必要があり、「疾病」は業務の性質または状況により生じたものである等の条件がある。

 

5.ビザ・労働許可

①ノンイミグラントビザの取得

・日本人がタイで働くためには、在日もしくは各国のタイ領事館で、ノン・イミグラントBビザ(就労目的でタイに入国するためのビザ)を取得の上、タイに入国する必要がある。Bビザはタイ入国日を起算として最大90日の滞在期間とされている。

 

②ワークパーミットの取得

・タイに入国した後は、すみやかに労働許可証(ワークパーミット)を取得する必要がある。最初のワークパーミット取得後にBビザの延長手続きを行うと、通常は1年間の滞在許可が与えられる。ワークパーミットなしでの就業は外国人就労法違反となるので注意が必要。

 

③90日レポート

・タイに90日以上継続して滞在する外国人は、90日ごとにイミグレーションに居住地の報告をする必要がある。違反した場合には空港で出国する際に罰金が科される。なお、90日レポートは、2回目以降は郵送やウェブサイトからの提出が可能。

 

6.タイ人の労働観について

タイに現地法人を持つ多くの日系企業が「社員がなかなか定着しない」、「思うように社員の育成ができない」、といった悩みを持っている。タイでは、比較的賃金に対する意識が高いと言われるが、賃金だけではなく、仕事へのやりがいや職場環境の良さも非常に重要なものになる。

他人にあまり多くを語らない文化は、日本とタイに共通する慣習かも知れない。会社や上司に対して悩みや不満があったとしても、それを話すことはあまりしない傾向にある。しかし、日本とタイで違う点は、高い賃金をもらいたいと思う一方で、賃金水準が相場より多少高かったとしても、快適でないと思ったら突然辞めてしまうことがよくある、という点である。会社として成長し続けるためには、社員が定着するような、会社と社員の「双方向の密なコミュニケーション」が重要となるといえる。

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