Regional Transformation地域創生
2024.11.05
北大生が切り拓くビールの未来 – 地域と共に歩む「パイオビア」の挑戦
みなさんは、北海道が「酒どころ」として注目されていることをご存じでしょうか?ここ数年、北海道各地に、ワイナリーやブルワリー、蒸留所や酒蔵が次々と誕生していますし、たとえば、ニセコで製造されたジンが国際大会で世界最高賞に輝くなど、「酒どころ」としての魅力が高まっています。
北海道とビール
北海道におけるビールの歴史は、明治9(1876)年に開拓使の事業として、村橋久成が「開拓使麦酒醸造所」を立ち上げたことに始まります。その翌年には、北海道初のビール「札幌ビール」が販売され、現在でも「サッポロビール」として全国で親しまれています。明治2(1869)年に北海道開拓が始まったことを考えると、北海道のビールは北海道の開拓の歴史と切っても切れない関係にあることがわかります。
▲村橋久成
▲開拓使麦酒醸造所
北海道ビールの新しい風!「パイオビア」
北海道のビール業界に新たな風を吹き込む存在として、オリジナルのクラフトビールを開発・販売する「パイオビア」が2023年に誕生しました。「パイオビア」という名前は、「パイオニア(先駆者)」と「ビア(ビール)」を掛け合わせたもので、新しいビール文化を開拓していくという強い想いが込められているそうです。
パイオビアを創業したのは北海道大学に通う学生、宮地帝輔さんで、現在も北海道大学の大学院で学業に励みながら、パイオビアの代表を務めていらっしゃいます。お話を伺うと、宮地さんは、大学に入学するまでは人見知りだったそうです。大学に入学し、「とりあえず生(ナマ)!」から始まる人と人の交流に魅力を感じ、ビールをコミュニケーションツールのひとつととらえるとともに、ビールの世界にのめり込んでいったとのことです。海外留学時に、世界的なビール大国であるドイツや、日本にビールを持ち込んだとされるオランダの多様なビール文化に触れ、「日本のビール文化をさらに発展させたい!」という想いから、「パイオビア」を立ち上げ、オリジナルクラフトビールの開発やビールイベントの開催を通じて、ビールの魅力を広める活動をされています。
パイオビアの魅力!
パイオビアの開発コンセプトについて、宮地さんはこのようにお話しされていました。「クラフトビールは癖が強いものも多く、ビール初心者には飲みにくいこともある」「コミュニケーションツールとして使うためには、ビール初心者でもおいしく飲める必要がある」「そのためにも、クラフトビールらしい多様な味わいや香りを残しながらも、多くの人にとって飲みやすいビールにしたかった」。どちらかというと個性的な商品が多いクラフトビール業界の中であっても、宮地さんがビールをコミュニケーションツールの一つととらえているからこそのコンセプトだと感じました。
パイオビアの目指すところとして、「クラフトビールをきっかけに、ビールを飲む人やそのコミュニティを広げ、人々の暮らしを豊かにしたい」「様々な地域で、その地域の特徴を活かしたクラフトビールを開発し、地域のコミュニティを広げたい」と笑顔で語る宮地さんからは、クラフトビールで人と人とのつながりを作りたいという強い想いが伝わってきます。
起業で地域の活性化を
宮地さんは当初、起業する予定はなかったそうです。そのような中でパイオビアを立ち上げた背景にも人と人とのつながりが関係しています。宮地さんが所属する学生団体『未来開拓倶楽部』の顧問の教授、オリジナルビールの開発に協力してくれた醸造会社の社長、クラウドファンディングの支援者など、多くの人が宮地さんの想いに共感し、その協力があったからこそ、パイオビアという会社が誕生しました。兵庫県出身の宮地さんですが、パイオビアを立ち上げたことで、大学院卒業後も北海道に残り、クラフトビールの開発・販売を続けていくことを決めたそうです。
パイオビアの取り組みから学んだこと
宮地さんの活躍から、2つのことを学ばせていただきました。
ひとつめは、実直な想いとその想いに応える周りの協力が、地域に新たなブランドを誕生させ、地域の活性化につながっていく、ということです。企業経営においても、社員やパートナー、顧客との信頼関係を築くことが事業の成功に直結するもので、「人とのつながり」の重要性を再認識することができました。
ふたつめは、地域資源を活用し、地域と共に成長するビジネスモデルの重要性です。そのためには、自社の強みを再評価し、地域との共生を図る戦略を考えることが大切だと気づかされました。
志の高い若者のパワフルな想いを受け止め、一緒になって挑戦する、そんな取り組みが広がっていくよう、私たちも地域創生に向けたご支援を続けていきます。
パイオビア
<執筆者>
北海道地域創生プラットフォーム株式会社(HPR2)
筒井 志織
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