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  1. 野球で紡ぐ、持続可能な地域社会~石狩レッドフェニックスの挑戦~

Regional Transformation地域創生

2025.01.06

野球で紡ぐ、持続可能な地域社会~石狩レッドフェニックスの挑戦~

札幌で毎年開催される「NoMaps」というイベントで「石狩レッドフェニックス」の老田よし枝(おいだよしえ)球団代表と知り合うことができました。今回、球団立ち上げの背景や今後の展望を取材させていただくことができましたのでご紹介します。なお、2020年に設立した球団は、今シーズンの北海道フロンティアリーグで優勝、昨シーズンから続けて2連覇しています。

▲取材の様子@みらいコンサルティング札幌支社

球団立ち上げのきっかけ

老田代表は、2001年から14年間ニューヨークでの生活を経験、健康意識の高まりや現地での野球の盛り上がりを受け、帰国後にアスリートフードマイスター1級資格を取得します。この資格は当時日本全国で60名弱しか保持者がいない難関資格で、老田代表は猛勉強の末にストレート合格を果たしたそうです。

資格取得と同時に会社を立ち上げた老田代表は、栄養学の講師を5、6年続けていたところ、SNSから北海道のスポーツを盛り上げるパネルディスカッションに招待されます。パネルディスカッションでは、株式会社まちのミライの代表取締役三上大勝氏、株式会社レバンガ北海道の代表取締役CEO横田陽氏、北海道独立リーグ立ち上げのきっかけとなった出合祐太氏と老田代表の計4名が登壇、その野球による北海道の町おこしを計画していた出合氏の想いに共感し、栄養学のプロジェクトメンバーとして参加することになったとのことです 。既に富良野市と美唄市で2球団の立ち上げが決まっている中、次の拠点として老田代表は札幌市の北にある石狩市を選びました。

▲2020年球団発足時 決定したロゴを持った写真(2020年5月)

 

拠点を「石狩市」に

本拠地選びのコンセプトは、都市部ではなく、若者の労働力を必要とし、かつ野球を楽しめる地域だったそうです。老田代表は、理事を務めていた札幌石狩砂利協同組合が取壊しを計画していた工場を、冬場の北海道では貴重な室内練習場として活用することを提案し、その練習場が現在のフェニックスフィールドとなっています。また、石狩市はもともとソフトボールが盛んで、スポーツへの理解がある地域であったことも決め手となりました 。

老田代表はタイミングにも恵まれたとおっしゃっています。出合氏による現球団副代表の指田準一氏との引き合わせ、当時当選1期目であった加藤龍幸石狩市長や、市議会議員の方による積極的なサポート体制が背景にあったそうです。石狩レッドフェニックスをスムーズに立ち上げるための協力的な布陣が整っていたのでしょう。

 

石狩レッドフェニックスの挑戦

石狩レッドフェニックスは、独立リーグの野球チーム運営を通じて、野球による「若者の雇用創出」と「地域活性化」に取り組んでいます。たとえば、選手はスポンサー契約を結ぶ地元企業に就職し、仕事と野球を両立しています。企業は練習時間への配慮など、柔軟な働き方を提供し、若い人材の確保に繋げています。

このような取り組みを通じて、石狩レッドフェニックスでは、野球による「北海道の移住定住促進と地域の活性化」を体現し、石狩市への貢献を先進的におこなっています。老田代表は、「選手は全国から集まってきます。石狩市民となって地元企業で働き、野球を通じて地域を盛り上げる。そして将来的にはこの地で生涯を過ごしてほしい。」とお話しされていました。そんな老田代表の想いに呼応するように、実際に地元で結婚し定住を決めた選手も出てきているそうです。

▲2024リーグ1位通過決定時(2024年8月)

▲2024クライマックスシリーズでリーグ優勝決定時(ペナント集合写真)(2024年9月)

石狩レッドフェニックスの取り組み

石狩レッドフェニックスでは、選手のセカンドキャリア支援や地域のスポンサー企業との連携により、選手の定住や就業継続をサポートしています。また、2023年には中学生対象の軟式野球クラブ「石狩レッドフェニックスJr.」を立ち上げ、野球に熱心に取り組む地域の子どもたちのための環境づくりをし、野球教育にも力を注いでいます。

 

今後の展望

老田代表の今後の展望は、過疎化の進む道内各振興局に独立リーグを作り、地域を活性化させていくことだそうです。全国的にも新しい地域おこしモデルとなり、野球を通して「地域住民全員で一緒に地域と球団を作り上げていく」という思いは、着々と実現しています。

▲北海道知事より「輝く女性のチャレンジ賞」受賞(2023年1月)

 

まとめ

石狩レッドフェニックスの取り組みは、スポーツビジネスが単なる興行ではなく、持続可能な地域社会の構築に寄与するモデルとして注目されています。選手が地元企業で働きながら野球に打ち込むことで、地域との結びつきが強まり、地域全体の活性化に繋がっています。そして、この成功の鍵は選手と地元企業が一体となり、ともに成長し続けることにあるのだと思います。選手の心の変化を理解し、チームの志を共有することで、地域企業や住民サポーターとともに持続可能な地域社会を創り上げることが重要なのではないでしょうか。

石狩レッドフェニックスの取り組みは、地域の未来を明るくし、石狩市、また北海道全体の活性化に寄与するものとして期待されています。みらいコンサルティンググループでも、スポーツの力で地域を元気にする企業のご支援をしていきたいと思います。

 

石狩レッドフェニックス https://i-red-phoenix.com/

 

<執筆者>

北海道地域創生プラットフォーム株式会社(HPR2)

門崎 真有子

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