8tips社員が幸せな経営
- 2023.11.09
- 社員が幸せな経営
「年収の壁・支援パッケージ」とは?
現在、日本においては、生産年齢人口の減少に伴い、労働力の確保が急務となっています。一方で、働く意欲や能力があるにもかかわらず、「年収の壁」のために働き控えを余儀なくされている人がいます。こうした背景から、政府は年収の壁を意識せずに働ける環境づくりのため、「年収の壁・支援強化パッケージ」を策定し、2023年10月より開始しました。
今回は、この年収の壁・支援強化パッケージのポイントをお伝えします。
「年収の壁」とは?
現在、配偶者に扶養されている人のうち約4割の人が就労しています。一定の労働時間や収入額になった場合には、本人や配偶者に所得税や社会保険料が発生し、手取り収入が減少することから、そのうち約20%の人が労働時間を調整しています。このとき超えないように意識される収入基準のことを一般に「年収の壁」といいます。
年収の壁は複数存在しますが、今回対象となる壁は以下の2つです。
1. 106万円の壁
給与月額が88,000円以上で一定の要件を満たす従業員は、扶養から外れて勤務先の社会保険へ加入するため、社会保険料の負担が生じます。
月額88,000円を年収に換算すると約106万円となることから、一般に106万円の壁といわれています。
2. 130万円の壁
1に該当しない場合でも、年間収入の見込みが130万円以上となる場合には、扶養から外れ、個人で国民年金や国民健康保険に加入する必要があるため、同様に社会保険料の負担が生じます。
年収の壁・支援強化パッケージでの対応策と想定される効果
1. 106万円の壁への対応策と効果
106万円の壁への対応策は、新たに社会保険に加入した従業員に対し、手取り収入の減少を防ぐ取り組みを行う事業者への支援を行うものです。
|1|キャリアアップ助成金に社会保険適用時処遇改善コースを新設
新たに社会保険に加入する従業員への手当支給等により、従業員1名につき3年間で最大50万円が助成されます。
|2|「社会保険適用促進手当」の社会保険料算定からの除外
社会保険に加入する従業員に社会保険料相当額の手当(社会保険適用促進手当)を支給する場合に、その手当を社会保険料の算定の基礎から除外することができます。1.で従業員に支給する手当も社会保険適用促進手当として扱うことができます。
このような社会保険適用促進手当を支給することにより、社会保険加入後も一定期間社会保険料負担を抑えることができるため、従業員が心理的に社会保険へ加入しやすくなる効果が見込まれます。この手当を支給する際に上記の対応策を活用することで、会社としては金銭的な負担を軽減することができます。
これにより、就労調整を必要としない従業員が増加し、恒常的に労働力を確保することができますし、従業員の福利厚生が充実するため、従業員の意欲の向上も図ることができるのではないでしょうか。
2. 130万円の壁への対応策と効果
130万円の壁への対応策は、収入が130万円を超える場合に、勤務先が一時的な収入増であることを証明することで、連続2回まで被扶養者の認定を受けられるものです。
会社としての対応は、従業員から求められた際に証明書を交付するのみです。これにより、一時的な理由による就労調整が不要となり、必要な時期に必要な労働力を確保しやすくなることが見込まれます。
今後、2025年には次期年金制度改正が予定されており、そのなかで被扶養者制度についても議論が進められています。また、2024年10月には従業員51名以上の会社を対象とする社会保険適用拡大が控えており、中小企業にもパート・アルバイトの社会保険加入義務が発生するなど、「被扶養者」を取り巻く環境は近年大きく変化しています。
本パッケージへの対応は義務ではありませんが、次の年金制度改正までの時限措置であるため、この機会を活用し、「収入の壁を気にせず働ける組織風土の醸成」に積極的に取り組む企業さまも増えています。従業員一人ひとりの状況や意向と向き合うことで、会社としては労働力の確保と同時に従業員の働く意欲の向上も期待できます。
対応策の実施を検討される際は、ぜひみらいコンサルティンググループのコンサルタントへご相談ください。
年収の壁・支援強化パッケージの詳細は厚生労働省のサイトをご覧ください。
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