「隠れ副業」は時限爆弾? “禁止”のリスクを知り、人を活かす「制度設計」へ
「うちは関係ない」が一番危ない。副業解禁は“パンドラの箱”か?
「うちは副業禁止にしているから、関係ないよ」 もし、そうお考えだとしたら、その認識はすでに社内に“時限爆弾”を抱えているのと同じ状態かもしれません。
政府による働き方改革の推進や、物価高による実質賃金の目減りを背景に、「副業・兼業」は一部のIT企業だけの話ではなく、あらゆる業界で「ごく当たり前の選択肢」になりつつあります。
しかし、従業員の「やりたい」という意欲と、企業の「制度整備」のスピードには大きなギャップが生じています。そして、その歪みが今、「予期せぬトラブル」や「人材流出」という形で表面化し始めているのです。
このリスクを正しく認識し、企業と従業員の双方を守るための「守りと攻めの副業戦略」について、そのポイントを見ていきましょう。
「禁止」しても「隠れ副業」 そこに潜む最大のリスク
経営者が最も警戒すべきは、「なし崩し的な副業」の蔓延です。
たとえば、専門スキルを持つ人材が多い不動産業や製造業などでも、「会社が認めてくれないから」といって、従業員が副業を諦めるわけではありません。結果として、「会社に内緒で」始めることになります。
実は、この「ルールなき副業(隠れ副業)」こそが、最大のリスクです。 会社が把握していないため、長時間労働による本業への支障、情報漏洩、競業避止義務違反といったトラブルが起きても、手が打てません。 つまり、「制度がないこと(禁止していること)」が、かえってリスクを増幅させているという皮肉な現実があるのです。
「制度の遅れ」が、優秀な人材を“追い出す”
もうひとつ見逃せないのは、副業制度への対応状況が、優秀な人材の離職に直結し始めている点です。
かつては「副業を認めると、従業員の意識が外に向かい、離職につながる」と懸念されていました。しかし、現実は逆です。 「キャリア自律」や「多様な働き方」を求める現代の従業員にとって、副業を頑なに禁止し、制度整備を怠る企業は「自身の可能性を閉ざす場所」と映ります。
優秀な人材ほど、自分のスキルを試したい、複数の収入源を持ちたいという意欲が高いものです。彼らを繋ぎ止めるための「囲い込み(禁止)」が、皮肉にも「愛想尽かし」の引き金となってしまう、そんなことがあるのです。
企業が今すぐ取り組むべき「3つのステップ」
では、この波にどう向き合うべきでしょうか。無防備に解禁するのではなく、以下の3つのステップで「管理された副業」へと舵を切ることをおすすめしたいと思います。
ステップ1:実態把握と「臭いものに蓋」の撤廃
まずは、従業員がどの程度関心を持ち、あるいは既に実施しているのか、実態を直視することです。匿名アンケート等をおこなえば、驚くような実態が見えるかもしれません。見て見ぬふりをせず、現状を正しく認識することがスタートラインです。
ステップ2:リスクを制御する「明確なルール作り」
次に、労務リスクを排除するためのルールを設計します。 とくに、技術流出や顧客情報の持ち出しが致命傷になりかねない業種では、抽象的な「禁止」ではなく、具体的な「許可基準」を設けることで、会社と従業員双方を守る防波堤を築く必要があります。
- 労働時間の管理: 本業と副業の通算ルールと健康管理の徹底
- 競業・秘密保持: 許可範囲とNGラインの明確化(ガイドライン策定)
- 申請・届出制: 透明性を確保する仕組み
ステップ3:「エンゲージメント向上」への転換
最後に、制度を「福利厚生」ではなく「人材戦略」として位置づけます。 「社外で得た知見を本業に還元してほしい」というメッセージとともに運用すれば、副業は「離職への入口」から「成長への投資」へと変わります。「この会社なら柔軟に働ける」という実感こそが、エンゲージメントを高め、人材定着につながるのです。
「禁止」の看板を下ろし、「対話」のテーブルへ
副業・兼業は、もはや止めることのできない時代の潮流です。 とくにリスクが高いと考えられる業界ほど、自社の就業規則と向き合い、「禁止」の看板を下ろして、従業員との「対話」と「ルール作り」をご検討してみてはいかがでしょうか。
それが、貴社の未来を支える大切な人材を守る、確実な防衛策となるはずです。
みらいコンサルティンググループでは、各種規程の整備や労務改善のご支援をしています。制度設計にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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