地域経済の救世主「ONSEN – 温泉 -」が切り拓く新時代 〜地域を元気にする仕組みを考える〜

地域経済が抱える課題
給与は上がっているはずなのに、なぜか暮らしの実感がよくならない。そんな声を耳にすることが増えています。
背景には、最低賃金の引き上げが続く一方で、地域企業の多くが売上を伸ばせず、人件費負担だけが重くなっている現実があるように思います。製造業は海外移転や自動化が進み、農業などの一次産業も高齢化で縮小が止まりません。
こうした状況の中で「まだ成長の余地がある」と注目されているのが、温泉を核とした地域観光なのです。
外貨を稼ぐという発想
地域経済を成長させるには、地元住民だけを相手にしていては限界があります。必要なのは地域の外からのお金、すなわち「外貨」を稼ぐ仕組みです。
都市部の人が週末に温泉地を訪れれば、都市のお金が地域に流れ込みます。海外から観光客が訪れれば、外国通貨が円に変わり、地域経済に直接入ってきます。
実際、2025年8月には342万8,000人の外国人が日本を訪れ、8月としては過去最高を記録しました。訪日客の消費単価は国内客より高く、宿泊・飲食・体験・土産など幅広く地域経済に波及効果をもたらしています。
人口減少で内需が縮小する中、外貨獲得こそが地域経済を支える生命線なのです。
温泉は「オンリーワン商品」
観光で生き残るには、他にない価値=差別化が不可欠です。その点で温泉は極めて優れた資源といえます。
日本固有の文化であり、海外では代替できない「オンリーワン商品」であるからこそ、世界市場にも訴求できます。政府は「ONSEN」を世界共通語に広め、2028年のユネスコ無形文化遺産登録を目指しています。さらに、全47都道府県の知事が参加する「知事の会」も設立され、温泉文化の価値を世界に発信する取り組みが進んでいます。
温泉を「ただのお風呂」から「文化体験」へと再定義し、国内外から高付加価値の需要を呼び込む。この戦略は、国と地域が足並みをそろえた稀有な挑戦となっているのです。
地域協業とデジタル化の力
観光業の特徴は「草津温泉」「熱海温泉」のように地域全体がブランドとなり、一社単独ではなく地域がまとまることで規模の経済を発揮できることにもあります。
たとえば、山口県長門市の俵山温泉では、温泉街全体を一つのホテルに見立てる「まちごと旅館」構想を始めています。
- 宿泊受付を閉鎖中の入浴施設に一本化
- 清掃やシーツ洗濯を集約し、経営者の負担を軽減
- 空き店舗を飲食店やカフェに転用
また、地域がまとまることは、近年ビジネス界で導入が進んでいる「デジタル化(DX)」とも相性が良く、たとえば、地域全体で導入すれば効果はさらに高まる以下のような施策も考えられます。
- 予約システムを統合し、稼働率を最大化
- AIによる多言語対応で外国人観光客にスムーズなサービスを提供
- データを共有し、顧客ニーズを地域戦略に反映
個社では難しいDX投資も、地域全体で進めれば負担を分散し、大きな成果を生み出せるのです。もちろん、単に規模を拡大すればよいわけではありません。旅館ごとの個性や文化を守りつつ、共通業務は共同化・デジタル化する。この「規模と個性の両立」こそが、地域全体の生産性を高める鍵ではないでしょうか。
地域の未来をつくる温泉
各地で人材不足は深刻ですが、それは逆に「高付加価値化のチャンス」とも捉えられます。宿泊を単なる「滞在」ではなく、地域の歴史や文化、食を組み合わせた「文化体験」へと進化させることで、少ない人手でも高い付加価値を実現することも可能です。
このように、温泉を核とした地域観光は、差別化・協業・DX・高付加価値化といった成長の要素を兼ね備えています。人口減少という逆風のなかでも、地域が一体となり知恵を結集すれば、持続的な発展を実現するポテンシャルを十分に秘めており、新しい時代を象徴するモデルとなり得るのです。
そのために求められているのは、中小企業が一社だけで戦うのではなく、地域全体で連携しながら生産性を高めていく姿勢です。温泉地で地域に根を下ろす旅館は、その恵みを活かす担い手であり、地域経済を支える中小企業にほかなりません。
私たちは、中小企業向けのコンサルティング会社として、こうした旅館の面的な成長に注目しています。地域ごとに課題は異なり、決して容易ではありませんが、旅館が個社単位の改善にとどまらず、地域全体で連携して成長する仕組みをつくることこそが、持続的な観光振興や地域経済の底上げにつながると考えています。
そのため、私たちは「地域観光」や「温泉」といった資源を軸に、地域の中小旅館が協力し合い、面的に成長できる仕組みづくりに取り組んでまいります。
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