賞与支給回数の減少-諸制度等への影響を総点検

最近、会社が賞与(ボーナス)を出す回数を減らすというニュースをよく見かけるようになりました。これは、会社の経営状況が変わったり、人件費を調整する必要があったりするためです。特に、年2回の賞与を年1回にする動きは、会社の人事評価や賞与の事務手続きを簡単にする目的や、基本給を上げるための対応策として注目されています。
賞与の回数を減らすと、給料や社会保険料などいろいろな制度に影響が出てきますので、具体的に詳しく見ていきましょう。
残業代などに影響はある?
賞与の一部を毎月の給料に上乗せすることは、基本給(特に新卒の給料)を上げるために有効な方法です。しかし、給料が増えると、残業代や休日出勤手当などの計算も変わってきます。
たとえば:
- 変更前: 年間の給料が600万円で、内訳は基本給が35万円、夏の賞与が60万円、冬の賞与が120万円。
- 変更後: 年間の給料は同じ600万円で、内訳は基本給が40万円、賞与が120万円。
この場合、基本給が5万円上がります。
時給で考えると:
変更後: 基本給40万円 ÷ 160時間(1か月の平均労働時間)× 1.25(残業手当の割合)= 3,125円
変更前: 基本給35万円 ÷ 160時間(1か月の平均労働時間)× 1.25(残業手当の割合)= 2,735円
このように、時給が390円アップします。また、基本給と連動している退職金制度がある場合、退職金も増える可能性があります。
このような変化に対応するために、給料に上乗せする金額を固定残業代にしたり、退職金をポイント制にするなどの方法が考えられます。
社会保険料は変わる?
賞与には、毎月の給料とは別に、健康保険や介護保険(40歳以上)、厚生年金保険がかかります。ただし、賞与にかかる保険料には上限があります。
厚生年金保険: 1か月あたり150万円まで
健康保険、介護保険: 年間の合計額が573万円まで
たとえば:
- 変更前: 年間の給料が600万円で、内訳は基本給が35万円、夏の賞与が60万円、冬の賞与が120万円。
- 変更後: 年間の給料は同じ600万円で、内訳は基本給が35万円、賞与が180万円。
賞与が1回にまとまることで、厚生年金保険料は減る場合がありますが、1回あたりの納付額が大きくなるため、お金の流れに影響が出る可能性があります。
また、毎月の給料に応じて決まる社会保険料にも上限があります。
- 健康保険、介護保険: 139万円
- 厚生年金保険: 65万円
給料を大幅に上げた場合、上限を超える部分については保険料がかからなくなります。
働く条件が変わるときの注意点
賞与の回数や時期は、働く上でとても大切な条件の一つです。変更する際には、以下の点に注意が必要です。
- 制度を変える理由: 基本給を上げることで優秀な人材を確保しやすくなったり、賞与を1回にまとめることで事務手続きが簡単になるなど、会社側のメリットだけでなく、従業員にとって不利なことばかりではないことを説明することが大切です。
- 生活への配慮: 賞与が減ることで不安を感じる人や、賞与を前提に家計を管理している人もいます。変更のスケジュールや告知の時期は慎重に検討し、必要であればお金を貸し付けるなどの代替措置も考えておくことをおすすめします。
- 就業規則などの見直し: 賞与の回数や時期は、就業規則や給与規程に必ず記載する項目です。また、育児休業中の賞与の取り扱いなども確認が必要です。労働条件通知書(雇用契約書)や求人票も見直しましょう。なお、就業規則・給与規程の変更により、従業員にとって不利な労働条件の変更を一方的におこなうことはできませんのでご注意ください。
- 雰囲気づくり: 賞与が減ることを単にマイナスと捉えるのではなく、業績に応じて給料が増える制度や、お金以外の報酬を取り入れるなど、人事制度全体を見直すことで組織を活性化させるきっかけにすることも考えられます。
賞与の回数を減らすことは、会社や従業員にとって大きな変化です。事前にしっかりと準備をし、みんなが納得できる形で進めることが大切です。
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