8tipsSDGsと経営
時代は「倫理資本主義」へ
2015年に国連にて採択されたSDGsもようやく浸透してきました。背景には、地球温暖化といった人類共通の課題を、頻発する自然災害などで身近に感じられるようになったこと、さらには、未知のウイルスに世界が揺さぶられる中、従来の価値観や考え方に疑問や不安を持つ方が増えていることがあるのではないでしょうか。また、「資本主義」についても、背景を同じくして、いろいろと「あり方」が議論されているのはご承知のことと思います。
ステークホルダー資本主義の提唱
ご記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、2020年1月のダボス会議で、これまでの株主資本主義をあらため、ステークホルダー資本主義という概念が提唱されました。わかりやすく単純化すると、短期的利益のみを追い求めるのではなく、サステナブルに長期的利益を実現していく経営を目指すべき、ということです。それがSDGsやESG経営と結びつき、上場会社などでは非財務情報の投資家への開示、といった仕組み化につながっていることはご承知のとおりと思います。
しかしながら、株主のためだけではなく、すべてのステークホルダー、社員や取引先の利益を追求すべきだ、と急に言われても、感覚的には共感するものの、本質的には利益が相反する部分もあり、なんとなく不明瞭さが残り、「何をしたらいいのだろう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
ホンネはジレンマ?
これまで多くの経営者と話してきましたが、明確に「うち(自社)だけ、自分だけがよければあとはどうでもいい」とか「給与を削ってでも株主に配当すべきだ」といった発言をする方に会ったことはありません。むしろ、ステークホルダー資本主義は、三方よしの精神がようやく世界でも認められてきた、と捉えている経営者の方が多いと感じます。
ただ、低成長時代、多様化・グローバル化の中で、ライバルとの厳しい競争が繰り広げられている足元の現状を鑑みると、理想と現実のギャップにジレンマがあるのは当然で、そんなことはいっても生き残るためには仕方ない、キレイゴトだけではすまない、というホンネがあるのも真実だと思います。
身近な例でみてましょう。
レジ袋有料化は概念的にはずいぶん前からあり、一部小売業では推進されてもいましたが、競争上不利になる、との考えから社会全体に浸透しませんでした。結局、法律で規制されたことで一気に推進されたのですが、当然のことながら、自分だけが不利になるようなことを企業はおこなわないものです。
また、ウイルス禍での営業自粛においても、行政の要請に応えて営業していない店と、明日を生きるために必死で営業を続けている店、どちらかが正しい、と言い切ることはできるでしょうか。
このように、複雑で多様な競争社会において、一律に同じ価値観を実現することは本質的に無理があり、それを押し付けようとすると摩擦が生じることは歴史が物語るとおりです。また、AかBか、正しいか正しくないかといった単純な二元論は、わかりやすさはあるものの分断を生みやすく危険です。
本質的に大事なのは「倫理観」〜 倫理資本主義
冒頭で「株主資本主義」に対する概念として「ステークホルダー資本主義」をご紹介しました。これは「誰に対して」という視点での表現です。それとは別に「利潤資本主義」から「倫理資本主義」へ、と提唱する方もいます。これは「何のために(価値基準)」という観点で「私たちは何をすべきか」がわかりやすく感じるのですが、いかがでしょうか。
社会価値と経済価値の両立が求められる持続可能な社会においては、利潤(経済的利益)だけではなく、倫理観(社会に生きる人としてどうすべきか)も判断基準とするべきで、経済活動に関わるすべての人と組織の倫理観のすり合わせが前提として大切になる、ということではないかと解釈しています。もちろん、そのための具体的な取り組みとして、倫理観という抽象的な概念を具体化、必要に応じて明文化し、さらに、それを周囲とすり合わせながら必要に応じてアップデートする、という継続的な仕組みの構築も欠かせないでしょう。
私たちみらいコンサルティンググループでは、パーパスや理念、ビジョンや行動規範などを、事例を交えて具体的に記述した、MC WAYがあり、迷ったときの判断基準や職業人としての価値観形成に努めています。また、体験事例を毎週共有したり、定期的な研修で振り返る、といった仕組みも10年以上にわたって続けています。
倫理資本主義の中でグローバル競争を生き抜く、そんな時代だからこそ、◯◯WAYといった各社の倫理観が問われる機会が増える気がします。もしご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひお知らせください。
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