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2023.03.08
世界を駆ける経営

中国撤退は本当に困難か?

中国撤退は本当に困難か?…

既にコロナは忘れ去られた存在となっている現在の中国。昨年各都市でおこなわれた「ロックダウン」は果たして必要だったのか、大きな疑問が残ります。そんな中、コロナ禍で表面化しなかった、「中国事業の撤退」に関するご相談が増えています。

 

中国からの事業撤退はむずかしくない?!

中国から撤退するにはコストも時間もかかる上に、当局との交渉によっては引き延ばしされたり、場合によっては撤退できないケースさえあるというのが一般的な認識ではないでしょうか。今回は、これまでに数多くの企業の中国進出、再編、撤退を支援してきた経験を踏まえ、中国進出企業の撤退は日本でいわれるほど難しいものではない、ということをお伝えしたいと思います。

結論から申し上げると、中国事業について、最初から合法かつ適切な経営をしていれば、当然のごとく合法で適切な撤退が可能です。社員に対して、公平で厳しさの中にも人情味のある対応をしていればもめることもまずありません。合弁解消の場合も日頃から十分コミュニケーションをとり、相手と信頼関係を構築していれば特に問題になることはありません。もちろん、全ての債務はきちんと弁済することが前提ですが。

逆に考えると、撤退が難しくなる本質的な原因は、そのような経営をしてこなかった、または不十分であったため、と考えて差し支えない、ということです。たとえば、現地経営者に対する統制が不十分で、問題が起こるケースで、それを「中国だから(仕方ない)」と特殊要因にするのは、担当者の無知か責任逃れのどちらかといっても過言ではありません。もしくは、心ないコンサルタントがフィーを割り増しするために大げさにいっているだけかもしれません。

もちろん、中にはやむを得ないと思われるケースもあります。合法と思ってやってきたものの、中国の法律の解釈があまりにもグレーなため、いざ撤退という時に、当局から極めて恣意的と思われる対応をされる、というのはよくある話です。また、中国でも行政の管理レベルが年々高まっているので、昔であれば問題にならなかったケースでも最近になって運用強化された結果、問題視される、といった事例もあります。従業員ともうまくやってきたのに、わざわざ従業員を扇動し騒ぎを起こす、いわゆる争議屋にやられる事もあります。

 

「こじれる」要因は?

実は、こじれるケースの多くでは、事前の調査、準備をせずに撤退を始めてしまっています。仮に、上述のようなさまざまな要因で、潜在的なリスクを抱えてしまっている場合でも、撤退を最終決断、実行する前に経験豊富な専門家に相談すれば、潜在リスクを計算してリスクを最小化し、なるべく表面化しない方法を検討して事前に教えてくれます。

さらに、撤退に至った直前のプロセスも重要です。たとえば、合弁の解消にしても撤退を決断するまでに中国側と十分相談し、意思疎通ができていれば、そうこじれることはありません。撤退を決断する前段階で、業績が悪化するなど撤退を検討する契機となる事態があったはずです。その時に、業績改善に向けてお互いが虚心坦懐対応策を相談し、互いが納得のいく対応をとったかどうか、が肝心なのです。双方の努力の結果、業績が改善せず撤退となったとすれば、少なくとも双方の感情のもつれといったことで問題が大きくなることはありません。しかし、トラブルになるケースでは、お互いに疑心暗鬼、相手に対する不信感を募らせており、中国側も撤退時にそれまで積もり積もった鬱憤をここで晴らす、ということになっています。

もし、それを「一方的に中国側にしてやられた、だから中国人は・・・」というように問題を矮小化してしまうと、せっかくの失敗経験を貴重な経営ノウハウに昇華させる機会を自ら放棄している、といっても過言ではありません。従業員とのトラブルも同じことで、中国人従業員との感情のもつれからくる不信感が撤退を難しいと感じる最大の要因なのです。

一旦こじれてしまうと、その修復には多大な時間とコストが掛かってしまう、というのはどこでも同じです。日本のメディアで紹介される事例はそうしたものが多く、中国からの撤退は大変だ、というステレオタイプの結論になってしまうのかもしれませんが、撤退も人生やビジネス同様、やり方次第で簡単にも複雑にもなりうることを認識しておく必要があるのではないでしょうか。

 

大事なのは、健康チェック!

利害関係者間のもつれに、当局交渉や罰金、未納税金などの問題も加わって複雑骨折化している撤退事例に遭遇することもありますが、まだ撤退を決定していないもう少し前段階で相談してもらえれば、そもそも撤退しなくとも済んだのでは、と思えるケースもあります。

重要なのは、今すぐ撤退するつもりはなくとも、自社の現状が健全かどうかをチェックしておくこと。万が一撤退する場合のトラブルを未然に防ぐことができるかもしれませんし、それにより経営状態が改善し、そもそも撤退する必要がなくなるかもしれません。みらいコンサルティングでは、日本と中国の両方の立場で客観的な視点を提供しています。撤退するかどうかは別として、少しでもうまくいっていない心配事があればお気軽にご相談ください。

 

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