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海外不正相談室 第1回:不正は絶対なくならない ~Why海外不正は多いのか~
コンプライアンス経営、リモート経営が問われていく中で、海外子会社の不正が経営に与えるインパクトは増大しています。
シリーズで、海外での不正についてお伝えします。今回はなぜ不正が行われるのかを解説します。
1.不正は絶対になくならない
現金の横領、キック・バックの受領、架空売上の計上、機密情報の漏洩等、多くの不正が表面化し、報道されています。内部通報制度の整備やSNSの発達もそれを後押ししています。特に海外の現場では、日本以上に多くの不正を目にします。
理解しなければならないことは「不正は絶対になくならない」ということです。人間の本質的な部分に端を発しているからです。不正はいつか必ず発生するもの、そう認識しておくことが大事です。
2.不正は絶対に隠し切れない
一方で、「不正は絶対に隠し切れない」ものでもあります。必ず跡が残ります。必ず誰かが認識しています。さらに、完全にオリジナルな不正はほとんどありません。過去に生じたものと同様の手口によってなされるのが通常です。よって不正を早期に発見すること、再犯を防止すること、は可能と言えます。
3.新型コロナウイルス(COVID-19)が不正リスクに与えた影響
新型コロナウイルスは、世界中のビジネス環境に大きな影響を与えました。出張・移動制限、リモートワークの促進、証憑の電子化等といった変化が生じました。これらは、不正リスクにどのような影響を与えているのでしょうか?米国ACFE(Association of Certified Fraud Examiners:公認不正検査士協会)が2020年11月に実施した調査によると、回答者の79%が、現時点で不正が増加している、と答えています。また今後1年間については、90%が不正は増加するだろうと回答しています(うち44%が著しく増加すると回答)。
(ACFE:Fraud in the Wake of COVID-19: Benchmarking Report)
新型コロナウイルスは、不正発生のトライアングルと呼ばれる「動機」「機会」「正当化」の全てにマイナスの影響を与えたと考えられます。つまり不正の発生するリスクを急激に高め、不正の検出が困難になったという結果が出ていることにも注意が必要です。
4.なぜ海外不正は多いのか?
日本本社と比べ、海外子会社においてははるかに多くの不正が発生しています。理由は、圧倒的なモニタリングの不足であると考えられます。海外子会社の管理は駐在員に任せっぱなしになってませんか?現地で適切な牽制が効いていますか?内部監査はしっかり行われていますか?
経済産業省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(2019年)では、M&Aにより海外子会社が増加している中、現地の管理の重要性とその難しさについて述べられています。海外の事情を良く知るグローバル人材の不足も課題であると言えるでしょう。
また日本型経営の限界に差し掛かっている企業も海外現地では多く見受けられます。日系企業の特長である従業員の会社に対する「忠誠心」や経理部は忠実であるという「性善説」が、海外ではむしろ異質とされることが多くあります。忠誠心をもった駐在員による管理から、現地採用による経営(現地化)に移行していく中で、ガバナンス強化を図っていく必要があると言えます。
当社シンガポール拠点(MIRAI Singapore SG Pte. Ltd.)では、マネーロンダリング防止を強力に進めるシンガポール政府から指摘を受けた企業からの相談も増えています。
海外不正はなくならない、という前提で、ニューノーマル下における海外子会社の管理体制を構築し、内部監査についても再度見直す等、より適切な対応が求められるようになってきているのです。
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