Regional Transformation

大学の学びは無駄じゃなかった。コンサル会社で過ごした5日間で、社会の見え方が変わった話 ―井上ほのか(北九州市立大学)―

はじめまして。北九州市立大学・地域創生学群2年の井上ほのかです。 私の大学での学びは、教室のなかよりも「現場」にあることがほとんどです。たとえば、実習では小倉のカフェや飲食店を取材してSNSで発信したり、ゼミでは音楽と地域創生を結びつけたイベントを企画したり。常に地域に飛び込み、そこに住む人たちと関係を築きながら、活性化のために何ができるかを考えています。

座学で学ぶ「傾聴」、つまり相手の話に深く耳を傾ける姿勢も、すべては現場での実践のため。そんな日々のなかで、私にはひとつの問いが生まれていました。

「私たちが大学で学んでいることは、本当の意味で社会の役に立つんだろうか?」 

この、当時の私が抱いていた漠然とした問いへの答えを、5日間のインターンシップが見つけさせてくれました

想像をはるかに超えた、「責任の重み」と「仕事の広がり」

インターンシップが始まって、私がまず衝撃を受けたのは、社会人、そしてコンサルタントが背負う「責任の重さ」でした。
もちろん、私もアルバイトはしていますが、それは決められた範囲の業務をこなすことが中心です。しかし、社員の方に同行させていただいたお客さまとの面談で、私は息をのみました。コンサルタントのひとつの提案が、会社の未来を左右するような重要な意思決定に反映されていく。経営者からの想定外の質問にも、膨大な知識と経験を背景に、瞬時に的確な答えを返していく。
そこには、企業からの絶対的な信頼がありました。一個人のパフォーマンスが、会社の評価そのものに直結する。この緊張感と責任の重さは、アルバイトとは比べものになりません。この一週間、社会人としての働き方を間近で見て、自分の仕事に責任を持つことの本当の意味を考えさせられました。
そしてもうひとつ、大きな発見がありました。それは、コンサルティングという仕事の幅広さです。
参加する前の私は、「コンサルタント=お金の専門家」というイメージを強く持っていました。しかし、5日間のプログラムで各分野の担当者からお話を伺ううち、そのイメージはどんどん更新されていきました。人事制度の構築、労務管理のサポート、社員が働きがいを持てる組織づくり…。企業の成長には、お金だけでなく「人」や「組織」という内部の課題解決が不可欠であり、コンサルタントはそのすべてに寄り添っていることを知りました。

机上の学びが「実践」に変わった日 ~企業訪問での大転換~

インターンシップのハイライトは、コンサルタントの方と株式会社みなみさまを訪問し、宗社長に直接インタビューをさせていただいた経験です。

訪問前、私たちは大学の授業で使う「SWOT分析」という手法で、みなみさまの事業について分析しました。そのなかで私は、「地域密着で展開していること」を企業の「弱み」ではないか、と仮説を立てました。全国展開する競合他社と比べると、競争力が劣るのではないか、と考えたのです。

しかし、この仮説は、宗社長の言葉によって見事に覆されました。

「私たちの仕事は、お客さまの大切な品物をお預かりし、人生に寄り添う仕事です。だからこそ、自分の足で全ての支店を回り、サービスの品質をこの目で確かめられる範囲でなければならない。地域に密着しているからこそ、お客さまと間近に接し、深い信頼関係を築くことができるんです」

「弱み」だと思っていたことは、お客さまへの想いを実現するための、誰にも真似できない「最大の強み」だったのです。外側から見ただけの思い込みが、いかに浅いものだったかを痛感しました。

また、インタビューでは採用に関するお話も伺いました。学生の私は、就職活動とは「自分が会社に選ばれる」ことだと考えていました。しかし、企業が採用に多くの時間とコストをかけていること、そして「企業もまた、学生に選ばれる立場なのだ」という経営者の視点に触れ、ハッとさせられました。

身構えていた経営者へのインタビューでしたが、大学で学んだ「傾聴」の姿勢を意識することで、社長の想いを引き出し、場の雰囲気も和やかに進めることができました。机の上で学んだ知識が、現実のビジネスの現場で「使える武器」になった。その瞬間は、私にとって大きな自信になりました。

この経験を、未来の自分につなげるために

この5日間は、驚きと発見の連続でした。そして今、インターンシップを終えた私は、この経験をどう未来に活かしていくか、具体的な目標を描いています。

まずは、大学での活動です。カフェの取材では、今回のように事前に企業分析をしっかり行い、より深い話が聞けるように準備します。また、実習やゼミの活動では、行き詰まったときに「私たちの活動は何のためか」という原点に立ち返り、問題点を洗い出して仮説を立てる、というコンサル的な思考を取り入れていきたいです。

そして、来年から始まる就職活動、さらにその先の未来。コンサルタントの仕事には、私にはまだ足りない豊富な経験と知識が必要だと痛感しました。だからこそ、これからは今まで以上に視野を広げ、様々な業種や世界に触れて、自分の未来の解像度を上げていきたいと思います。

最後に、この場をお借りして、感謝を伝えさせてください。

インターン中、福岡支社の皆さまは本当に気さくに話しかけてくださり、温かい雰囲気のなかで、私は主体的に多くのことを学ぶことができました。普段は明るく優しい皆さまが、デスクで真剣にクライアントと向き合う姿は、私の目に「憧れのコンサルタント」として焼き付いています。

この度は、貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

大学生活のなかで生まれた私の問いへの答えは、今ならはっきりと出せます。学びは、実践して初めて「力」になる。このインターンシップは、そのことを教えてくれました。

【インターンコラム】
社長の“強い味方”! 学生インターンが見た「経営コンサルタント」の素顔~学生の視点が、組織の「あたりまえ」を揺さぶる~
「弱み」だと思ったその戦略が、実は「最強の武器」だった話

地域創生一覧に戻る

ページトップへ