Regional Transformation

「弱み」だと思ったその戦略が、実は「最強の武器」だった話 ―井上ほのか(北九州市立大学)―

はじめまして。北九州市立大学で地域創生について学んでいる、2年生の井上ほのかです。先日、みらいコンサルティングという会社の短期インターンシップに参加し、コンサルタントの方と一緒に企業訪問をさせていただく、という貴重な経験をしました。

その経験は、私が「企業を見る目」を、そして「働くということ」への考え方を、180度変えるものとなりました。

訪問前の私の「仮説」

インターンシップのプログラムで訪問することになったのは、福岡を中心に「質みなみ」を展開されている、株式会社みなみさま。担当のコンサルタントの方と、訪問前の事前検討会を行いました。

正直に言うと、私はそこで初めて「質屋さん」というお仕事の存在をはっきりと認識しました。もちろん、「しち、みなみ♪」というCMソングは、福岡で暮らす私にとって耳馴染みのあるものでしたが、具体的にどんなことをしている場所なのかは、よく分かっていませんでした。

私にとって身近なのは、古着や中古品を買い取ってくれるリユースショップです。私も時々利用しますし、その多くは全国に店舗を持つ大きな会社です。

そこで、私は素朴な疑問を持ちました。

「みなみさんは、どうして福岡中心の地域密着で展開しているんだろう?全国展開しているお店のほうが、知名度もあって強そうに見えるのに…」

これが、私の立てた仮説でした。「地域密着で展開していることは、全国展開していないという『弱み』なのではないか」。コンサルタントの方から、みなみさんが採用活動に課題を感じていると聞いていたので、「その『弱み』が原因で、学生に魅力が伝わりにくいのかもしれない」とまで考えていました。

社長の言葉で、世界がひっくり返った

宗社長は、緊張している私を、とても温かい笑顔で迎えてくださいました。そしてインタビューが始まると、私の浅はかな「仮説」は、良い意味で次々と覆されていきました。

まず、質屋さんとリユースショップは、根本から違うということ。質屋さんは、お客さまが持ってきた品物を担保にお金をお貸しする「金融業」であり、買い取るだけではない。そのため、専門の資格も必要になる、と。

そして、私が「弱み」ではないかと考えていた「地域密着」について、宗社長はこうお話ししてくださいました。

「私たちは、地域に根ざしているからこそ、お客さま一人ひとりの生活や人生に深く寄り添うことができるんです。急な出費でお困りの方を助けたり、大切な品物を一時的にお預かりしたり。お客さまとの信頼関係がすべての仕事です。もし全国に店舗を広げてしまうと、一つひとつのサービスやお客さまへの想いといった、私たちが一番大切にしている品質が保てなくなってしまうと考えています」

衝撃でした。

「弱み」だと思っていたことは、実は、お客さまへの想いを実現するための、こだわり抜かれた戦略であり、「最大の強み」だったのです。

モノとお金をやり取りするだけの場所ではない。人の人生に深く関わる、責任の重い仕事。だからこそ、簡単には譲れない信念がある。社長の言葉の端々から、その強い想いが伝わってきて、私は自分の視野の狭さが恥ずかしくなりました。

私たちが外側から見て「こうに違いない」と思い込んでいる企業の姿と、その内側にある「本当の姿」は、まったく違うのかもしれない。そのことに気づかされた瞬間でした。

「働く」とは、誰かの人生に関わること

大学の友達と話すのは、いつも「どこに就職するか」「どんな仕事が人気か」といった、自分のキャリアの話ばかりでした。でも今回、初めて「企業経営」という視点、つまり「人をどう採用し、育てていくか」という視点に触れることができました。

みなみさんが採用に課題を感じているのは、もしかしたら、この「地域密着という強み」や「お客さま一人ひとりへの深い想い」が、私たち学生にうまく伝わっていないからなのかもしれない。もし、今回の私の「気づき」が、その魅力を伝える何かのヒントに少しでもなっていたとしたら、こんなにうれしいことはありません。

企業の表面的な姿の奥には、地域や従業員への想いがあり、それを実現するための確固たる戦略がある。そして、程度の差はあれ、社会に出て仕事をするということは、必ず誰かの人生に関わるということ。

たった一度の企業訪問でしたが、私にとって、それは新しい世界への扉を開けてくれた、忘れられない経験となりました。今回、快くお話を聞かせてくださった株式会社みなみの宗社長に、この場を借りて心より御礼申し上げます。社長の熱い想いに触れたことで、私の企業を見る目は大きく変わりました。

【インターンコラム】
社長の“強い味方”! 学生インターンが見た「経営コンサルタント」の素顔~学生の視点が、組織の「あたりまえ」を揺さぶる~

大学の学びは無駄じゃなかった。コンサル会社で過ごした5日間で、社会の見え方が変わった話

地域創生一覧に戻る

ページトップへ